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    細川 珠生
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    伊勢 雅臣
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    河添 恵子
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    宮本 惇夫
    企業・経営
    中村 仁
    中村 仁
    元全国紙経済記者
    石平
    石平
    評論家

    北朝鮮は“フェイク”と人質で溢れている

     マレーシアのクアラルンプール国際空港内で発生した「金正男氏暗殺事件」(2月13日)で北朝鮮が劇薬の神経剤「VX」を使用したことが判明したが、北側が「正男氏暗殺事件」を否定し、VXの使用についてもジュネーブでの軍縮会議で先月28日、在ジュネーブ北朝鮮政府代表部のチュ・ヨンチョル参事官は、「わが国には化学兵器はない」と述べ、予想されたことだが、国際社会に向かって堂々とフェイク情報(嘘)を発している。

     暗殺事件で実行犯が逮捕され、重要容疑者が拘束され、事件に関与した関係者の名前と写真が明らかなうえ、神経剤の痕跡も検証されたにもかかわらず、北側は「知らない」と言い張る。北が事実にまったく関心がなく、もっぱら自国の主張を繰り返し、フェイク情報を繰り返している国であることを実証している。その意味で、北はフェイクの確信犯といえる。

     大韓航空機爆発テロ事件(1987年11月29日)でも実行犯の1人が拘束され、犯行を自白した後も「韓国側の自作自演」と言い張った北側だ。そういう国とは正常なコミュニケーションはもともと期待できない。

     北側が過去、不法な犯行を認めたのは、故金正日労働党総書記が日本人拉致事件問題で「わが国の一部の工作員が勝手にした行為」と弁明した時だけだ。これが唯一のケースであり、今のところ、最後の北側の自白だ。ただし、犯行の実質的最高責任者(金正日総書記)には追及が及ばないように、あくまでも「一部の不法な関係者の行為」というだけに止めた。これが北の限界だ。

     話は飛ぶ。最近、駐オーストリアの北朝鮮大使館で10年以上駐在していた李キルスン3等書記官が突然、帰国した。同書記官の夫人はウィーンに本部を置く国連工業開発機関(UNIDO)に勤務している。だから、書記官夫妻はウィーンと平壌に分かれて生活することになったわけだ。もう少し、厳密に表現すれば、家族の一人を人質とする北側の脱北対策の典型的な対応だ。

     駐オーストリアで今月18日、24年間の駐在となる金光燮大使の場合、夫人と2人の息子はそれぞれバラバラに生活している。夫人(故金日成主席の娘)が平壌に留まり、大使はウィ―ンで勤務し、夏季休暇の時、帰国するというパターンだ。金大使には夫人と子供が平壌に留まっている限り、脱北といったシナリオは考えられない。駐チェコの金平一大使(故金日成主席の息子)の場合、娘が結婚し、北朝鮮で生活しているというから、人質は取られているわけだ。

     昨年、駐ロンドンの北大使館のテ・ヨンホ公使夫妻が韓国に亡命し、平壌を震撼させたばかりだ。同公使の場合、平壌にいる夫人と子供たちをロンドンに呼び寄せるために、巨額のわいろを関係者に払っていたという。わいろを受け取った公安部門のトップが処分されている。駐英公使の場合、わいろで家族を呼び出すという段階で北に通達されていたら、公使夫婦も終わりだったろう。

     北では外交官だけではない。ビジネスマンや労働者も海外で勤務する場合、家族の最低一人は通常、平壌に留まらざるを得ない。夫婦が共に海外に留まるといったケースは非常にまれだ。海外駐在の外交官やビジネスマンだけではない。国内で生活苦にあえぐ大多数の北の国民も人質のような立場だ。

     北朝鮮ではフェイク情報が真実を凌駕し、人質が溢れている。にもかかわらず、真実を聞きだし、脱北する北国民は後を絶たない。3世代に渡る金ファミリーの独裁政権は終わりを迎えなければならない時だ。北は、国連加盟国資格だけではなく、主権国家としての形をも備えていない。

     ちなみに、自国民の保護という国家の基本的な義務を果たす能力のない、あるいは果たす意思のない国家に対し、国際社会が当該国家の保護を受けるはずの人々について『保護する責任』(Responsibility to Protect)を有する。北朝鮮の現状に該当する内容だ。安保理は時には国連憲章第42条に基づく軍事的対応を容認する例もある。国際社会の『保護する責任』は2005年の国連総会で全会一致で採択された。

    (ウィーン在住)

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