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張成沢氏処刑の延長戦

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 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏が毒殺された事件をめぐって「なぜ、今の時期に殺されたのか」という疑問が膨らんでいる。

 金正恩委員長は2011年末、最高指導者に就任以来、労働党と軍部の高官130人以上を処刑した。金委員長の父(故金正日総書記)と祖父(故金日成主席)は粛清といえば左遷、教化所(服役)や政治犯収容所送りが大部分だった。しかし、金委員長の粛清は公開処刑がほとんどである。

 金正男氏も過去5回にわたって暗殺未遂があり、12年には家族の命を助けて欲しいと金委員長に手紙を出したと言われている。

 金委員長は現在、米国と中国という2大強大国から深刻な心理的プレッシャーを受けている。今回の毒殺事件は金委員長が体制維持の危機を感じ焦っている証しではないだろうか。

 米国のトランプ大統領は強硬なタカ派を外交・安保関連の要職に起用し、北朝鮮の核・弾道ミサイルの脅威に厳しく対応すると明言している。先の日米首脳会談をにらんだ弾道ミサイルの発射に対し、米国は今後、強硬姿勢を強めると見られる。米韓特殊部隊による金正恩「斬首作戦」が現実味を帯びつつあるともいえるのだ。

 トランプ大統領を支えるタカ派グループは、北朝鮮の核・弾道ミサイルがアメリカ本土までとどく技術を整備する前にこれを排除しなければならないと深刻に受け止めている。核・ミサイル排除のタイミングを見逃してはならないというタカ派の政策提言が説得力を得ているわけだ。

 中国もこれまで金正男氏が親中国の次期指導者として推戴される可能性を視野に入れて、金氏を保護してきた。ところが金正恩委員長は13年12月、叔父の張成沢・元国防副委員長が中国とパイプを持つ人物であるにも関わらず、中国の手先扱いして処刑した。張氏は金正男氏の面倒をみるなど開放改革路線を共にしていたので、今回の事件は張成沢氏処刑の権力闘争の延長戦だといえる。

 金正男氏を保護してきた中国としては、今回の事件によって面子をつぶされたと受け止め、北朝鮮に対して厳しい対応を取るものと考えられる。国際社会は米中両国が北朝鮮の核・弾道ミサイル問題を前向きに解決する手腕を発揮してくれることを期待している。

(拓殖大学客員研究員・韓国統一振興院専任教授)

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