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朴槿恵の義理

韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

 その時はまだ本当の意味をくみ取ることができなかった。孔子が強調した「無信不立」(信なくば立たず)という故事のことだ。

 国家を立てるのに必要な要素は何かという弟子の問いに対し、孔子は「兵、食、信」だと答えた。国防と経済、信頼だという意味だ。弟子が「やむを得ず三つのうちの一つを捨てなければならないとすれば、何を捨てるべきでしょうか」と再度問うと、「兵をまず捨て、その次は食を捨てよ」と言った。孔子は最後まで保たなければならないものとして「信」を挙げた。信頼なくしては国家自体が存立できないというのが孔子の持論だった。

 近時の(崔順実氏による)国政壟断事件に接し、2500年前の孔子の慧眼に思わず膝を打った。朴槿恵大統領を支える国民の支持率は既に5%に落ち込んだ状態だ。大統領への信頼が史上最低値に沈んだのだ。揚げ句の果てに国民は大統領の下野を要求してロウソクを手にした。権力は千尋の崖っぷちに追い込まれた。大統領が在任中に意欲的に推進した兵(安保)と食(経済)の措置も終局的には防御壁にはなり得なかった。

 誰よりも信頼を重視してきた朴大統領が信頼に関して最悪の成績表を受け取ったのはアイロニーだ。彼女は大統領候補の時に「義理がなければ人間じゃない」と語った。側近の裏切りによって父親を失った過去のトラウマが作用したというのが恐らく大きいのだろう。

 それほど義理を渇望していた大統領だったが、実際の場面では義理の真の意味を悟れなかった。義理の辞典的な意味は「人として当然守るべき道理」を指す。いまだにその道理の指すところを知らない人がいるなら、映画『鳴梁(ミョンリャン)』で李舜臣(イスンシン)将軍が語った獅子吼(ししく)のような訴えに耳を傾けるべきだ。「おおよそ将となった者の義理は忠を追い求めなければならず、忠は民に向かわなければならない」。

 朴大統領はかつて「国家がよくなり国民が幸福になることが私の目的であり、それ以外はすべて煩悩」だと言った。そんな衷情をもった一国の大統領であるなら、その義理は当然、五千万の国民に向かっているべきだった。しかし、大統領の義理はひたすら一人の人間に向けられていた。彼女の義理は40年来の友である崔順実(に対して)だけだった。そんな三流の義理によって大韓民国は今、煩悩にさいなまれている。

 (11月17日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

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