ワシントン・タイムズ・ジャパン

軽くない種一粒

韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

 ミスキムライラックは米国で最も人気があるライラックの品種だ。名前が示している通り、わが国が原産地だ。米軍政時代の1947年に米軍所属の植物採集家が道峰山で種を採集して米国に持って行って改良したものだ。植物資料の整理を手伝った韓国人のタイピスト「ミス・キム」の名前を取って付けたという。米国とヨーロッパでクリスマスツリーとして広く使われるチョウセンシラベ(朝鮮白檜)も日本統治時代に植物学者が無断で種を持っていって普及させたものだ。国全体が混乱していた時代なので、我々の種を守る余力がどこにあっただろうか。

 この世で最も高価な種は何だろうか。ダイエット食品として人気がある黒色系トマトの種が1㌘で65万ウォン程度なので、金の値段よりも高い。ジャコウネコに食べさせ、排泄物から採った未消化のコーヒー豆も1杯で5万ウォンもするルアックコーヒーの原料なので、名前を挙げるべきだろう。志のある種苗業者たちはタダの種こそ最も高い種だという。種の主権の重要性を逆説的に強調するもので、タダの種に味を占めている間に在来種の種が消えて、タダでくれていた種の値段はいつの間にか高価になってしまうという話だ。

 世界では種をめぐる戦争が起こっている。地球温暖化で耕地面積が日増しに減少し、異常気象で農産物の生産量が減っている。各国は優良な種を確保するために死活をかけている。世界最大の種子関連企業、米国のモンサントが中国への種子供給を中断するとどうなるか。中国14億の人々の食が脅威にさらされる。世界的な食用穀物と農産物品種の10分の4以上の種子の特許をモンサントが所有している。中国が今年2月、化工集団公司を通して世界3位のスイスのシンジェンタを買収したことも、こんな背景と無関係ではない。

 3日前、ドイツの製薬・化学会社バイエルがモンサントを約660億㌦(約6兆8000億円)の現金で買収したと発表した。米国の農民団体からは、モンサントがドイツの手に渡れば、ただでさえ負担の種子の価格がいっそう引き上げられないかと心配する声が出ている。我々が青陽(チョンヤン)トウガラシを食べる時、モンサントにロイヤルティーを支払っているので、杞憂とばかり言ってはおれない。青陽トウガラシは1983年、わが国の中央種苗が開発したが、IMF金融為替危機の余波で同社がモンサントに買収され特許も持っていかれた。種一粒といっても軽く見ることはできないのだ。

 (9月19日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

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