ワシントン・タイムズ・ジャパン

「独り相撲」で勝手に盛り上がる「朝鮮戦争終戦宣言」

 文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領の唯一にして最大の関心事は「北朝鮮」である、というのが、これまでの当ウェブサイトの見立てです。こうした見立てが正しい証拠が、またひとつ、出て来ました。なぜか韓国でしか議論されていない「朝鮮戦争終戦宣言」を巡って、勝手に盛り上がっているようなのです。もちろん、韓国が壊した日韓関係を復元しようとする努力は、韓国側からはまったく出てきていません。


●日韓関係を壊した文在寅政権

 韓国の文在寅(ぶん・ざいいん)大統領は、あと5ヶ月で任期を終えます。
 文在寅政権下の韓国は、日本に対し、これでもかというほどの不法行為を繰り返しました。パッと思いつくものだけを列挙しても、たとえば、こんな具合です。

自称元徴用工問題


①韓国大法院による2018年10月と11月の日本企業敗訴判決
②日本政府が日韓請求権協定に従い求めた解決手続を韓国政府が無視(2019年7月)
③自称元徴用工らの側による日本企業の資産差押と売却手続(売却スルスル詐欺)
④長崎県端島(いわゆる「軍艦島」)などでの「朝鮮人強制連行・強制労働」という歴史捏造
自称元慰安婦問題


⑤日韓両国が2015年12月に取り交わした「日韓慰安婦合意」を韓国政府が反故にしたこと
⑥自称元慰安婦が日本政府を訴え、主権免除原則に反する判決が下されたこと
⑦韓国政府が実質的に支援する慰安婦関連団体が世界中で慰安婦像を建てまくっていること
⑧日本大使館・領事館前の公道上に設置された慰安婦像を韓国政府が撤去しないこと
外交儀礼違反


⑨「慰安婦合意」に関する外交機密文書一方的に公表(2017年12月)
⑩いわゆる旭日旗騒動(2018年9~10月)
⑪当時の韓国国会議長が天皇陛下を侮辱(2019年2月)
⑫日本政府のアグレマンなしに次期駐日大使人事を一方的に発表(2020年11月)
安全保障・通商問題


⑬火器管制レーダー照射事件(2018年12月)と「日本が低空威嚇飛行」などのウソを全世界に喧伝
⑭日本が要求した輸出管理に関する政策対話に2016年6月以来3年間応じなかったこと
⑮日本政府の輸出管理適正化措置に対するWTO提訴(2020年6月)
⑯日韓GSOMIA破棄通告(2020年8月)とその撤回(2020年11月)
(【出所】著者作成)

 こうやって列挙していくと、本当に壮絶です。

●壊すだけ壊して去って行く

 誤解してはならないのですが、べつに韓国の日本に対する不法行為は、上記のものには限られません。

 なかには竹島不法占拠のように、李承晩(り・しょうばん)のころからの問題もありますし、また、李明博(り・めいはく)政権下、朴槿恵(ぼく・きんけい)政権下では、それぞれ日本大使館、日本領事館前に慰安婦像が設置された問題なども発生しています。

 ただし、これらの共通点があるとすれば、明確な国際法違反であったり、国際条約違反であったり、あるいは国際約束違反であったり、準戦闘行為であったり、外交欠礼であったり、と、いずれも大小さまざまな不法行為やそれに準じるである、という点でしょう。

 そして、文在寅政権下でここまでたくさんの対日不法行為が積み上がってしまった以上、もしも次の政権が「日本との約束などを守る方向に舵を切る」という意思を持っていたとしても、かなり厳しい道を歩まざるを得ない、という点については、間違いありません。

 ましてや、現在、次期大統領が有力視されている2人の候補者のうち、少なくとも片方が当選した場合は、著者自身は「文在寅路線をさらに純化させた道を歩むのではないか」と予想しています。

 いずれにせよ、私たち日本人にとってみれば、文在寅政権下の韓国は、結局、日本とのさまざまな関係を壊すだけ壊して、元に戻さずに去っていく人物、という意味合いがありそうですが、次期政権以降でも元に戻ることはない、というのが当ウェブサイトなりの現時点の予想でもあります。

●すべては北朝鮮のために

 もっとも、これまでの言動から判断する限り、文在寅氏自身は、どうやら日韓関係などに対してはほぼまったく関心がないように思えてなりません。

 というよりも、この人物の関心の中心を占めているのは、おそらく、「北朝鮮」です。

 あえてきつい表現を使うなら、文在寅氏の最大の政策目標は「大韓民国を北朝鮮に献上すること」にあるのであり、日韓関係がどうなろうが、正直、ほとんど関心もないのではないでしょうか。

 この点、安倍晋三総理大臣が退任し、菅義偉総理大臣が就任したあたりから、文在寅氏がやたらと日韓首脳会談を推進してきたことは、記憶に新しい点です。ただ、これも当ウェブサイトに言わせるならば、あくまでも日韓首脳会談も北朝鮮との関係で推進していたものに過ぎないと考えています。

 実際、東京五輪直前まで、文在寅氏は訪日を推進していたとされていますし、また、読売新聞は五輪開会式直前に、「文在寅氏が訪日し、迎賓館で日韓首脳会談が開かれる」という盛大な誤報をしでかしたほどです(『文在寅氏訪日失敗:なぜ読売新聞は「間違えた」のか?』等参照)。

 ただ、東京五輪が始まって以降は、文在寅氏の訪日、あるいは日韓首脳会談推進という話がパタリと話題に出なくなりました。

 菅総理が退任し、かわって岸田文雄首相が就任しましたが、その岸田首相が英国を訪れた際も、結局は日韓首脳会談どころか、すれ違いすらしませんでした(『岸田首相外交デビューも韓国の大統領とは遭遇すらせず
等参照)。

 こうした状況を見るにつれ、日韓首脳会談すら北朝鮮問題に活用しようとする文在寅氏の内情と、それを相手にしない日本政府、という構図が浮かんでくる次第です。

●目下の最大の関心事は「朝鮮戦争の終戦宣言」

 では、現在の文在寅氏の関心事はいったい何でしょうか。

 それを手っ取り早く知るうえで参考になりそうなのが、韓国メディア『ハンギョレ新聞』(日本語版)に週末に掲載された、こんな記事ではないでしょうか。

中国「終戦宣言支持」…4者会談実現なるか


―――2021-12-04 09:27付 ハンギョレ新聞日本語版より

 これは、徐薫(じょ・くん)韓国国家安保室長が2日、中国の天津で楊潔黠(よう・けつち)中国共産党中央政治局員(※外交担当)と会談したことに関連し、「文在寅政権が推進している朝鮮戦争の終戦宣言について、中国側が明確な支持の意向を表明した」とされる話題です。

 そのうえでハンギョレ新聞は、この「終戦宣言」の草案を巡っては、米韓間でも「協議中」などとしており、「北韓大学院大学」の教授はこれについて、次のように述べたのだそうです。

「終戦宣言の推進について、韓米間の調整がほとんど最終段階に入り、北朝鮮に提案する前に中国を訪問し、中国の支持と協調を求めたものだ。とくに12月下旬に行われる労働党全員会議が開会する前に、韓国”中国間で支持と協調の姿を示せたのは、北朝鮮に送るメッセージになるだろう」。

 このあたり、著者自身もホワイトハウスや国務省の報道官などの発言を注意深く眺めているつもりですが、米国側から「朝鮮戦争の終戦宣言を準備しており、調整が最終段階にある」という発言は、寡聞にして存じ上げません。

 いずれにせよ、米韓間で終戦宣言の「草案」の「調整」が「ほとんど最終段階」だというのは現時点では考え辛い話であり、おそらくはこの発言者の希望的観測(あるいは捏造)でしょう。

 というよりも、このハンギョレ新聞の記事自体、朝鮮戦争の終戦宣言を「中国が明確に支持した」という前提で執筆されているフシがありますが、「中国が支持した」ことの根拠が、韓国大統領府の3日の発表内容なのだそうです。

●韓国大統領府の発表は、たぶん虚偽

 これについて種明かしをすると、おそらくは韓国大統領府のでっち上げでしょう。

 韓国メディア『中央日報』(日本語版)に先週金曜日時点で掲載された次の記事によると、中国側は「終戦宣言」や「中韓首脳オンライン会談」などについてはまったく言及していなかった、とされているからです。

終戦宣言に言及しない中国外務省「北京五輪の成功を祈願」


―――2021.12.03 11:46付 中央日報日本語版より

 このように考えると、ハンギョレ新聞の記事の議論の前提条件である、「中国が終戦宣言を支持した」とする点自体が事実なのか、極めて疑わしいところではあります。

 ただ、「政権に近い」とされるハンギョレ新聞が「朝鮮戦争の終戦」に言及していること自体、文在寅政権が「最後の数ヵ月」で政権の仕上げとしてこれを強く推進しようとしている、間接的な証拠といえるかもしれません。

 もっとも、肝心の「北京五輪で南北首脳会談」という文在寅氏の構想も、その前提条件からして怪しいところがあります。

 『南北揃ってIOCを怒らせた:東京大会「意外な効果」』などでも触れましたが、そもそも北朝鮮の五輪委(PRK-NOK)が「東京五輪不参加」などを理由として、国際五輪委(IOC)から会員資格を停止されているからです。

新宿会計士の政治経済評論 2 Pockets

 これに加えて、最近だと北京五輪を巡って、米国をはじめとする西側諸国に「外交ボイコット」の動きも見られることは注視しておいてよいでしょう。

 ハンギョレ新聞が述べる「米中南北4ヵ国会合」が実現する可能性が現時点でどこまであるのかは疑問ですし、万が一、それが実現したとしても、「朝鮮戦争終戦宣言」で同意できるという可能性がどれだけあるのかはさらに謎です。

 いずれにせよ、現時点で読む限り、朝鮮戦争終戦宣言は「絵に描いた餅」、あるいは任期末を迎えた韓国・文在寅政権の「独り相撲」というのが、可能性としては最も高いのではないかと思う次第です。


「新宿会計士の政治経済評論」より転載
https://shinjukuacc.com/20211206-02/

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