ワシントン・タイムズ・ジャパン

“大ヒット”の中国映画「長津湖」に疑義-月刊朝鮮

「興南撤収」援けた米軍の勝利戦、逆の解釈で映画作成

中国映画「長津湖」ポスター(SNSキャプチャ、セゲイルボより)

中国映画「長津湖」ポスター(SNSキャプチャ、セゲイルボより)

 韓国動乱の激戦だった「長津湖(チャンジンホ)の戦い」を描いた中国映画「長津湖」が“大ヒット”しているという。中国での話だ。9月30日封切りから10月5日までに25億人民元(約442億円)の興行収入を上げている。建国記念日前後の連休(10月1~7日)では全国映画館の47%が同映画を上映した。

 長津湖戦闘とは北朝鮮咸鏡南道蓋馬(ケマ)高原の長津湖で、米軍約3万人が、中国軍12万人の待ち伏せを受け、死闘を展開。中国軍をくぎ付けにし、その後の民間人10万人の脱出、いわゆる「興南(フンナム)撤収」を可能にした戦闘をいう。

 制作では中国共産党中央宣伝部、中央軍事委員会政治工作宣伝局などが支援し、人民解放軍7万人も動員され、官営メディアなどを通じて大々的に推奨、同映画は大ヒット作に仕立て上げられた。批判的な論評や別の解釈をすると当局の圧力がかかるというから、どれほどの「推し」かが分かる。

 映画のエンディングで「(長津湖戦闘は)戦争最終勝利の土台を作った」として、これが韓国動乱“勝利”のきっかけだったと中国側は強調しているというのだ。

 だが、この映画に描かれている内容は中国内からも批判が出るように、だいぶ議論のあるもの。それなのに、韓国では中国解釈のまま紹介されているのが現状で、それに「待った」をかけたのが月刊朝鮮(10月号)である。

 中国では韓国動乱を「抗米援朝戦争」という。“米国に対抗し北朝鮮を援(たす)けた戦争”という意味だ。長津湖戦が「抗米援朝戦争勝利の根源」だという位置付けである。

 ところが、米軍側の解釈は違う。「最も偉大な後退作戦の一つ」であり、「興南撤収」で10万人を援けただけでなく、中国軍に打撃を与え、その後の進撃を阻止したことで、最終的には「大韓民国を救った戦闘」というものだ。

 実際、双方の被害を見ると、米軍側は死者700人、行方不明200人、負傷者3500人。一方の中国軍は2万5000人の死者と1万2000人の行方不明者を出した。同誌は「兵団の戦闘力を事実上、消耗したのだ」としている。

 実態は中国軍の敗退なのに、全く逆の解釈で映画を作った中国の意図は何か。同誌は「米中新冷戦の時代に米国に対する敵対感を鼓舞し、習近平を中心に内部固めをするために作った映画」と分析する。

 韓国左派政権がこの映画をどう扱うか、同誌が先にくぎを刺した格好だ。

編集委員 岩崎 哲

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