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三菱重工資産に「初の」売却命令

商標権を競売したとして、誰がいくらで買ってどう使うんだろうか…

 またもや、「売却スルスル詐欺」です。何のことかといえば、三菱重工の知的財産権の売却命令が出た、という報道のことです。三菱重工側は即時抗告するようですが、ただ、正直、本件については「やれるものならやってみてほしい」という気がしてなりません。いずれにせよ、おそらく自称元徴用工側は越えてはならない一線の向こう側で「売却スルスル詐欺」という茶番を繰り広げるのだと思います。


●自称元徴用工問題:なぜ金銭債権を差し押さえないのか?

 自称元徴用工問題、すなわち「戦時中、強制徴用された」などと自称する者たちが日本企業を訴えている問題の中核をなしているのが、2018年10月と11月に韓国の最高裁に相当する「大法院」が下した一連の判決です。

 この判決自体、日韓請求権協定に違反するだけでなく、韓国による戦後秩序に対する挑戦である、という見方も成り立ちますが、それだけではありません。

 なにより驚くのは、韓国政府が「三権分立」を理由にこの問題を放置し続けて来たこと、日本政府が2019年1月以降、日韓請求権協定に従って協議や国際仲裁手続への付託を申し入れたにも関わらず、韓国政府がそれらのすべての手続を無視したことです。

 つまり、自称元徴用工問題は、大法院による判決が違法であるという点に加え、その後の韓国政府の対応も違法であるという意味で、韓国による「二重の違法状態」が発生しているのです。

 その意味では、自称元徴用工問題に関しては、もはや韓国が無法国家であると断言して良いでしょう。

 ただ、それと同時に非常に不思議なことがあるとしたら、韓国側で依然として損害賠償が強制執行されないことです。

 (国際法違反であるとはいえ)確定判決が出たわけですから、韓国の国内法的には、自称元徴用工ら原告側はいつでも被告企業の在韓資産を差押え、強制売却してしまえば良いはず。

 三菱重工にせよ、日本製鉄にせよ、韓国企業と取引はしているのですから、一番良いのはその売掛債権を差し押さえてしまうことです。あるいは、日本製鉄の場合は韓国国内に合弁会社を持っているわけですから、その合弁会社から日本製鉄に対する配当金の支払がなされる場合に、その配当金を差し押さえても良いでしょう。

 それなのに、判決からもうすぐ3年が経過するというのに、依然としてその強制執行が行われません。

 これについて、どう考えれば良いでしょうか。

●わざと売却できない資産を選んでいる

 じつのところ、以前から当ウェブサイトでは、自称元徴用工判決問題を巡っては、「どうせ資産の売却は行われないだろう」と「予言」し続けて来ました。

 というのも、韓国側で差し押さえられている資産は、非上場株式(※合弁会社株式)であったり、知的財産権(商標権や特許権)であったりと、ちょっと簡単には売却できないような代物ばかりだからです。

 以前の『個人的実体験に基づく「自称元徴用工訴訟の不自然さ」』でも指摘しましたが、もしも本気で、原告側が損害賠償を受けようと思うならば、もっと売却しやすい資産を差し押さえれば良いのに、どうも韓国側では「わざと」売却できない資産ばかりを選んで差し押さえているように見受けられるのです。

 こうしたなか、本日は韓国メディア『聯合ニュース』、『中央日報』(どちらも日本語版)に、こんな報道が出ていました。

三菱重工資産 初の売却命令=韓国地裁


―――2021.09.27 22:52付 聯合ニュース日本語版より
韓国裁判所、差し押さえた三菱の韓国内商標と特許権に初の売却命令


―――2021.09.28 06:41付 中央日報日本語版より

 これらの報道によると、韓国の大田(だいでん)地裁が三菱重工の商標権と特許権の売却命令を出したことを、27日に「法曹関係者が明らかにした」のだそうです(ちなみに中央日報の記事では、三菱重工のことを「戦犯企業」という極めて不適切な用語で侮辱しています)。

 中央日報によれば、今回の手続は「裁判所が三菱重工の資産に対する売却を許可したもの」であり、「債権者(=自称元徴用工側)が要請すれば売却手続を踏むことができるようになった」としていますが、それと同時に、三菱重工側は即時抗告する方針なのだとか。

●「さまざまな方法があるだろう」?それを教えて下さいよ!

 さて。

 商標権と特許権、いったいどうやって、誰に対して売却するつもりなのでしょうか。

 いちおう、中央日報の記事を見ると、自称元徴用工側の弁護人は、こんなことを述べているそうです。

「商標権と特許権に対する鑑定評価を基に価格を算定した後、競売にかけるなどさまざま方法があるだろう」。

 「さまざまな方法がある」。

 その具体的な「さまざまな方法」とやらを、是非とも教えていただきたいものです。

 今回の売却命令の対象資産、金銭債権でも上場株式でも不動産でもありません。そもそも市場自体が存在しない「知的財産権」です。

 特許使用料という形でキャッシュ・フローを生む可能性のある特許権なら、まだわからないではありません。しかし、商標権に関しては、いったいどうやって換金するつもりなのでしょうか。はたして、誰がいくらで買うのでしょうか、そして、買った人は、そんなものを買ってどうするのでしょうか。

 商標権が売却されてしまうと、三菱重工にとってはその商標を韓国国内で使えなくなりますが、べつに韓国国外で使えなくなるわけではありませんので(著者私見)、三菱重工にとっては何も実害がありません。

 それよりも、日本政府としては韓国に対する何らかの制裁を発動する理由が生じる、ということでもあるのです。

 おそらく自称元徴用工側は、「越えてはならない一線」の向こうで日本を挑発するために延々踊り続けるのでしょう。

 とりあえずは、勝手に躍らせておけば良いのではないでしょうか。

●韓国への「間接的制裁」は徐々に進む

 さて、韓国を見ていて痛感するのは、政府、社会を挙げた無責任さです。

 「自分で勝手に問題を作り出しておいて放置する」、「日本の問題解決の呼びかけに誠実に対応しない」…。

 日本がそのような国と、果たして良好な関係を築き上げていくことができるのかどうかは大変に疑問でもあります。

 ただ、それと同時に、現在の日本にとって、「腹が立つから韓国と断交だ」、というわけにはいきません。

 産業面ではサプライチェーンで日韓両国は深く結びついていますし、安保面では(実態はともかくとして)日米韓3ヵ国連携は依然として日米両国にとって重要です。

 おそらく日本政府としては、韓国が国際法を守る方向に舵を切るか(あるいは舵を切らないか)については見守っているのだと思いますが、それと同時に、こうした違法状態が放置されている限りにおいては、日韓の新たな協力が進むこともありません。

 その意味で、自称元徴用工問題の「売却スルスル詐欺」という茶番劇が繰り広げられるのを放置し、その間に日本が「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」実現やTPP拡大に向けて着々と布石を打つこと自体、間接的には韓国に対する制裁にもなり得るのかもしれませんね。


「新宿会計士の政治経済評論」より転載
https://shinjukuacc.com/20210928-03/

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