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姜昌一氏へのアグレマンは昨年末に出ていた=韓国政府

 「公開された情報」だけをもとに議論するという当ウェブサイトの特徴上、仕方がない話がひとつあるとすれば、「公開されている事実がほとんどない」という話題に関しては、どうしても予測を外す可能性が高い、という点にあるのかもしれません。こうした話題のひとつが、韓国の文在寅(ぶん・ざいいん)政権が昨年11月、日本政府の了解もなく、姜昌一(きょう・しょういち)氏を駐日大使に「内定した」、とするものでしょう。


ずいぶんと議論した「姜昌一問題」

 昨年の『政府は姜昌一氏に「ペルソナ・ノングラータ」発動せよ』と『ペルソナ・ノングラータではなくアグレマン拒否でした』以来、当ウェブサイトでしばらくの間、精力的に取り上げ続けた話題が、日本政府のアグレマンを得ることなく、韓国政府が勝手に姜昌一(きょう・しょういち)氏を次期駐日大使に任命した問題です。

*アグレマン
アグレマンとは新任の大使など外交使節を派遣する際、相手国から任命同意を得る手続きのことを言う。

 これについてはとくに、昨年末ごろから韓国メディアを中心に「姜昌一氏へのアグレマンが得られた」とする報道が相次いだものの、日本の側は左派(?)の朝日、毎日、東京から、右派(?)の読売、産経に至るまで、主要メディアがこの話題をいっさい報じなかったというのも不自然な点でした。

 ちなみに『補足論点:結局「姜昌一へのアグレマン」の続報はない』などを含め、「なぜか日本のメディアは姜昌一氏にアグレマンが出たかどうかをほとんど報じていない」という点を当ウェブサイトで指摘したところ、外国のサーバ経由で、不自然な日本語による怪コメントがいくつか付きました。

 そのようなコメントを書き込んだ者が韓国政府関係者なのかどうかはわかりませんが、当ウェブサイトへの韓国所在のサーバーからのアクセスは継続的に観察されています。

 さらには、読者の皆様には報告できませんが、少なくとも当ウェブサイトが何者かから、「とある妨害工作」を継続的に受けていることは事実です(※もっとも、「妨害工作」といっても大した活動ではありませんが…)。

 また、本件については「外務省内部者」と称する方から、当ウェブサイトに対するコメントやコンタクト先メールアドレスを通じ、「実際にはアグレマンは年内に下された」とする情報も寄せられましたが、残念ながらこれらに関しては、「本当に外務省内部者なのか」という点についての確証は得られていません。

 あくまでも根拠はありませんが、直感的には、「日本政府・外務省関係者」と称したの書き込みや「リークメール」については、おそらくは単なる「愉快犯」だと思いますが、韓国政府側の書き込みないし「とある妨害活動」は「ホンモノ」なのかもしれません。

当ウェブサイトの予想は外れたが…

 さて、この「姜昌一アグレマン問題」を巡っては、結局は今年5月に姜昌一氏自身が天皇陛下に信任状を捧呈し、日本政府が正式に同氏を駐日大使として取り扱い始めたことで、決着を見ました。

 当ウェブサイトは「もしかしたら姜昌一氏に対するアグレマンはそもそも出ておらず、いつまで経っても姜昌一氏の信任状捧呈式が実施されず、どこかの段階で姜昌一氏が帰国する」という可能性もあると見ていたのですが、こうした当ウェブサイトの予測自体は、残念ながら外れた格好です。

 ただ、それと同時に、当ウェブサイトで当初から予想していた論点、とりわけ「姜昌一氏自身が日本政府のアグレマンを得ずに大使に内定された」とする指摘については、その後、外務省の報道官が正式に認めています(『そもそも姜昌一氏に対し「アグレマン」は出ているのか』等参照)。

 さらには、4月には「信任状捧呈式が行われる直前になって、姜昌一氏の『足の怪我』を理由に信任状捧呈式が延期された」とする話題もありました(『姜昌一問題の論点補足:信任状捧呈式延期の狙いとは?』等参照)。

 それも、韓国大使館の説明と日本政府の動きにさまざまな矛盾があるなど、大変に不自然な動きでしたが、いずれにせよ、「姜昌一アグレマン問題」は、韓国政府にとって何らかの「不都合な点」だったという可能性はあるのですが、何がどう不都合だったのかについては、後年にならないと正確なところはわからないでしょう。

アグレマンから見る文在寅外交

 こうしたなか、本稿で紹介したいのは、韓国メディア『朝鮮日報』(日本語版)に昨日夕方掲載された、こんな記事です(※なお、朝鮮日報の記事は公表されてから数日経過すると読めなくなるようですのでご注意ください)。

 記事冒頭には、「文在寅(ムン・ジェイン)政権発足後、伝統的な友好国である米国と日本に駐在する韓国大使のアグレマンに要する期間が長くなった」、などと記載されています。

 のっけから、「日本が韓国の『伝統的な友好国』だ」、などと言われても、正直、戸惑ってしまいます。韓国が日本に対し、侮辱的・敵対的な姿勢を取り始めたのは、べつに文在寅(ぶん・ざいいん)政権になってからのことではないからです。

 ただ、この点は脇に置くとして、朝鮮日報が取り上げているのは、韓国政府・外交部が保守系野党「国民の力」の太永浩(たい・えいこう)議員に提出した「ここ10年間のアグレマン対象者に要した期間」と題された資料に関する話題です。

 具体的には、日本政府からのアグレマンが得られるまでに必要だった日数は、朴槿恵(ぼく・きんけい)前大統領が任命した李丙琪(り・へいき)、柳興洙(りゅう・こうしゅ)、李俊揆(り・しゅんき)の各元駐日大使は、それぞれ、22日、25日、32日であり、平均すると26.3日だったそうです。

 これに対し、文在寅政権下では李洙勲(り・しゅくん)元大使、南官杓(なん・かんひょう)前大使はそれぞれ41日、30日、そして現在の姜昌一大使が37日で、平均すると36日だった、というのが日本に関する記述です。

ちょうど12月30日という計算

 ただ、この記述に関しては、「ちょっと待ってほしい」と思います。

 少なくとも昨年11月23日時点においては、姜昌一氏にはアグレマンは出ていなかったことは確実です。『「極めて遺憾」は聞き飽きた…抗議ではなく実効措置を』でも取り上げたとおり、外務省の吉田朋之報道官が2月3日の記者会見で、次のような趣旨の発言をしています。

「国際慣習法上、派遣国である韓国は接受国である日本のアグレマンを得たうえで、初めて大使内定の事実を公表するというのが一般原則であるが、11月23日の韓国政府による『姜昌一氏を次期大使に内定した』とする発表は、日本政府によるアグレマン付与の前に行われたものである」。

 仮に、記事にある「姜昌一(カン・チャンイル)大使は37日」とする記述については、韓国政府が姜昌一氏を次期駐日大使に「内定した」と発表した日(=2020年11月23日)から起算したのだとすれば、日本政府が姜昌一氏にアグレマンを出したのは2020年12月30日です。

 当ウェブサイトの12月31日付『姜昌一氏に「アグレマン」報じたのは韓国メディアだけ』ともうまく整合している、というわけです。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 もっとも、冷静に考えてみれば、「姜昌一氏に年末、アグレマンが出た」と報じたのは韓国メディアばかりでしたし、ということは、情報源はおそらく韓国政府だったと考えるのが妥当なのでしょう。

 このように考えていくと、今回の朝鮮日報の記事をもって、「やはり日本政府が年末に姜昌一氏に対するアグレマンを出していた」とする説の、「確たる証拠」に採用するには力不足ではあります。

 ただ、信任状捧呈式が姜昌一氏の入国からちょうど4ヵ月も経過したという事実は、単に「新型コロナウィルス感染症拡大局面における遅延」というだけでなく、日韓関係におけるさまざまな「ギクシャク」が信任状捧呈という儀礼面にも影響を与えている可能性は濃厚だ、ということでもあります。

 そういえば、先月日本に帰国したはずの相馬弘尚・前駐韓日本大使館総括公使の動静については続報がありませんが、このあたりについても気になるところでしょう。


「新宿会計士の政治経済評論」より転載
https://shinjukuacc.com/20210912-01/

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