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韓国・文大統領 金正恩氏との会談模索か

来年2月の北京五輪で
北の関心は米の譲歩

 韓国の文在寅政権が来年2月に中国・北京で開催される冬季五輪を舞台に北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記との会談を模索しているとの見方が広がっている。会談実現の鍵は制裁緩和に向け米国の譲歩を引き出したい北朝鮮側の出方だが、任期末の文氏との会談にはメリットを感じにくいのも事実。実現するかは不透明だ。
(ソウル・上田勇実)

「融和ショー」懸念の声も

 先月27日、韓国と北朝鮮を結ぶ通信線が約1年ぶりに復旧した。北朝鮮が昨年6月、韓国脱北者団体が体制批判のビラなどを大量にくくり付け北朝鮮に向けて飛ばす大型風船に猛反発し、一方的に通信線を遮断して以来のことだ。

北朝鮮の金正恩総書記(写真左)と韓国の文在寅大統領(AFP時事)

北朝鮮の金正恩総書記(写真左)と韓国の文在寅大統領(AFP時事)

 韓国政府によると、復旧したのは南北軍事境界線上にある板門店など2カ所の直通電話と韓国・北朝鮮両軍の電話・ファクス。今年4月から文大統領と金総書記が複数回、親書を交換した末に合意に至ったという。

 いやしくもこの日は朝鮮戦争(1950~53年)で休戦協定が締結されてからちょうど68年を迎えた日。対話再開や融和ムードを効果的にアピールしようとしたようだ。韓国はテレビ会議を想定し、オンライン形式による対話システムの構築も北朝鮮に提案したという。

 だが、通信線遮断だけでなく、その直後に北朝鮮が南北共同連絡事務所を爆破したことに対し、北朝鮮側から謝罪や原状回復への言及があったのかがはっきりしないままだ。一方の韓国側は、北朝鮮に恫喝(どうかつ)同然に要求されるまま国会で対北ビラ禁止の法律を成立させた。

 対話や融和が始まっても、また「北のご機嫌伺い」の上に成り立つ見せ掛けに終わるのではないかとの疑問が早くも投げ掛けられている。

 それでも南北関係改善を外交の最優先課題と位置付ける文政権にとって、この通信線復旧は南北首脳会談に向けた足掛かり。特に2018年韓国・平昌冬季五輪で正恩氏の妹、与正氏の訪韓が実現したことが、その後計3回の南北首脳会談の開催につながり、東京五輪でも南北首脳会談の実現を模索しようとした経緯がある。「3月9日の大統領選を目前に控えた2月の北京五輪で首脳会談を実現させようとするのは極めて当然」(元韓国外務省幹部)とみられている。

 ただ、会談実現の鍵を握るのはあくまで北朝鮮。国連をはじめ国際社会の対北制裁が長期化し、コロナ防疫で中国との国境封鎖も解除されず、国内経済の逼迫(ひっぱく)は続いている。

 このほど韓国銀行が発表した北朝鮮の昨年度GDP(国内総生産)伸び率は、ここ20年余りで最悪のマイナス4・5%まで落ち込んだ。

 「経済回復」を国民に宣言した正恩氏にとって文氏との会談をめぐる最大の関心の的は、対北制裁緩和などバイデン米政権の譲歩にどこまでつながるかだ。

 また正恩氏が北京五輪の開会式などに合わせて訪中するにしても、「自分が主役でない場所にのこのこ出掛けて行くのは考えにくい」(元韓国政府高官)ため、最終的には「開催されても五輪前の年内などに板門店などで行うのが現実的」(北朝鮮問題専門家)とみられている。

 韓国大統領が任期末に南北首脳会談を開催すれば、07年に盧武鉉大統領が訪朝し金正日総書記と会談した時以来だ。ただ、この時は金大中大統領が金総書記と初めて行った南北首脳会談での合意事項を履行させるため、「後続会談」として北朝鮮側が応じたという意味合いが強かった。

 今回の場合は、文氏が米朝対話の橋渡し役として正恩氏の信頼を失ったと言われる状態での開催模索となり、再び首脳会談までこぎ着けるのは容易ではなさそうだ。

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