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韓国大統領にとって起死回生策は「日本の政権交代」?

菅総理が降板し「脇が甘い首相」が誕生するのは大きなリスク

 ここ2~3日、文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領の「訪日スルスル詐欺」に多くのニューズサイトなどが振り回された格好ですが、落ち着いてくると、少しずつ「次」も見えてくるように思えます。こうしたなか、本稿では昨日行われた日韓外務次官協議の概要を(いちおう)簡単に紹介するとともに、現在、個人的に強く懸念していることを、簡単に紹介しておきたいと思います。


文在寅氏は訪日を諦めていない

 ここ1ヵ月ほど、日韓メディアはやたらと文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領の訪日と日韓首脳会談に関する話題を報じ、挙句の果てには『文在寅氏訪日失敗:なぜ読売新聞は「間違えた」のか?』などでも報告したとおり、結局、文在寅氏は日韓首脳会談どころか、訪日自体を断念してしまう、というオチが付きました。

 ただ、個人的には、文在寅氏は首脳会談の開催を諦めていないと思います。

 実際、文在寅氏は昨年末、「日中韓サミット」開催を目論んだのを皮切りに、5月の訪米時には菅義偉総理を招いた「日米韓3ヵ国会談」のうわさもあり、6月の英国・コーンウォールG7サミットでも文在寅氏が菅総理に話しかけて首脳会談を試みました(※菅総理は挨拶に応じたのみでしたが…)。

 今回の東京五輪開会式という機会を活かすことはできませんでしたが、次回は五輪閉会式、パラリンピック開会式、APEC、イタリアG20など、文在寅氏にとっての「チャンス」(?)は、まだまだいくらでもあるのです。

 そして、それと同時に注意しなければならないのは(そしてメディアであまり語られないのは)、「なぜ、文在寅氏が日韓首脳会談を実施したいと思っているのか」、という点ではないかと思います。

 これについては一部メディアないし一部ジャーナリストらが、「文在寅氏は日韓関係の改善を目指して日本を訪れようとしている」、などと能天気に述べることもあるのですが(『噴飯物:「文在寅氏歓迎しクアッド・プラスに入れよ」』等参照)、個人的にはこうした見解には賛同しません。

 大抵の場合、文在寅氏の本質である「北朝鮮愛」を読み飛ばしているからです。

 文在寅氏の韓国大統領としての残り任期はあと9ヵ月あまりですが、2017年5月に就任して以来の事績を要約すれば、「北朝鮮に始まり北朝鮮に終わる」、といったところではないかと思います。

 その証拠のひとつが、『文在寅氏、米誌インタビューで日本への言及は実質ゼロ』でも触れた、米『タイム』誌へのインタビュー記事でしょう。

South Korean President Moon Jae-in Makes One Last Attempt to Heal His Homeland 


―――2021/06/23 19:00 EDT付 TIMEより

 文在寅氏は任期満了直前を迎え、同氏へのインタビューで、北朝鮮やその独裁者である金正恩(きん・しょうおん)には、かなりの時間を割いて誉めそやしているのですが、自身の政権下で関係を損ねた日本に関しては、実質的に言及はゼロでした。

鈴置論考で見る「文在寅=北朝鮮触媒説」

 また、日本を代表する優れた韓国観察者である鈴置高史氏は、ウェブ評論サイト『デイリー新潮』に7月16日付で寄稿した『文在寅が菅首相をストーカーするのはなぜか 「北京五輪説」「米国圧力説」……やはり「監獄回避説」が有力』で、北朝鮮の存在感を強く示唆しています。

 (※ちなみに『鈴置論考、「日韓の」ではなく「韓国の」特殊性に言及』でも指摘したとおり、この論考自体、「特殊なのは日韓関係ではなく韓国だ」と指摘したという意味においても、極めて価値が高いものです。まだ読まれていない方は、ぜひ、一読されることをお勧めします)。

 この鈴置説では、文在寅氏が日韓首脳会談を強く求める理由について、「北朝鮮」を触媒にすれば見えてくる、と説きます。たとえば、日本が北朝鮮と単独で何らかの交渉を始めるときに、韓国自身が「蚊帳の外」に置かれるリスクを意識する、といった具合です。
 ただ、たとえ文在寅氏がそれを欲していたとしても、日本(や米国)がそれを許すかどうかは別問題でしょう。

 というよりも、あくまでも個人的な見方に基づけば、日米両国とも、すでに文在寅政権を相手にしていないというフシもあります。

 ことに、日本にとっては文在寅政権の4年少々で、韓国が自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題など、多数の懸案を作るだけ作っておいて逃げるという姿勢に、不信感を抱かないはずがありません。
 
さらには『駐韓公使「暴言」問題で期待する日本政府の「塩対応」』でも紹介した、相馬弘尚総括公使の「問題発言」(発言内容自体は当ウェブサイトで引用することはしません)に関しても、もしかすると、駐韓日本大使館の現場では、韓国に対してかなりの不満が溜まっていた可能性があります。

まったく進展のない外務次官協議

 こうしたなか、昨日は森健良外務事務次官は、韓国の崔鍾建(さい・しょうけん)外交部第1次官と東京で協議を開催しました。

■森健良外務事務次官と崔鍾建(チェ・ジョンゴン)韓国外交部第1次官との協議


7月20日、森健良外務事務次官は、日米韓次官協議に出席するために来日した崔鍾建(チェ・ジョンゴン)韓国外交部第1次官との間で協議を行いました。

1.我が方からは、現在の日韓関係は、慰安婦問題や旧朝鮮半島出身労働者問題に関する韓国側の動きにより非常に厳しい状況にある旨述べました。その上で、我が方から、これらを含む両国間の懸案に関する原理原則に基づく日本の一貫した立場をしっかりと伝達しつつ、両国間の懸案の解決のためには、韓国側が責任を持って対応する必要があるとして、韓国側に適切な対応を強く求めました。

2.先方からは、これらに関し、韓国側の立場に基づく説明がありました。

3.この他、日韓双方の関心の高い事項についても率直な意見交換が行われ、両次官は、日韓関係の現状をこのまま放置してはならない点を確認した上で、今後とも、日韓関係を健全な関係に戻すべく、外交当局間の意思疎通を継続していくことで一致しました。

4.両次官は、北朝鮮への対応を始め、地域の安定にとって日韓・日米韓協力が重要であることで一致し、引き続き、日韓、日米韓三か国で緊密に連携していくことを確認しました。また、森次官から、崔次官に対し、拉致問題について、引き続きの理解と協力を求め、支持を得ました。
―――2021/07/20付 外務省HPより

 相変わらず、壊れたレコードのように、「日韓関係を健全な関係に戻すべく」、「日米韓3ヵ国連携が」云々の記述が続きます。

 ついでに、これに関する韓国メディアの報道に関しても紹介しておきましょう。紹介するのは『聯合ニュース』(日本語版)の記事です。

韓日外務次官が東京で協議 歩み寄りなし


―――2021.07.20 20:59付 聯合ニュース日本語版より

 記事タイトルに「歩み寄りなし」とありますが、逆にこの状況で、いったい何の歩み寄りを期待しているというのでしょうか。

 一般的に、どんなに関係がギクシャクしていたとしても、両国の対話のチャネルは維持すべきではありますし、それは事務方同士であっても同じことが言えます。

 ただ、さすがに文在寅政権が続く限りは、何回やっても結論は変わらないように思えますし、記事タイトルに「歩み寄りなし」とありますが、逆に、この状況で「歩み寄り」があり得るとも思えません。

 ことに、日本も法の支配を大切にするならば、自称元徴用工問題や自称元慰安婦問題を巡っては、日本がただの一歩でも譲歩することは考え辛いですし、それがあってはなりません。また、老婆心ながら、韓国自身も現在のふるまいを続けていれば、国際的な信用を自ら落としていくことは避けられないでしょう。

 これに関し、先ほども紹介した鈴置論考の一節を再掲しておきましょう。

「平気で約束を破り、堂々と他人を裏切る韓国と首脳会談を開こうとする国はまず出てこない。何を取りきめようが、すぐに反故にされるからです。日本と韓国がうまくいかない原因は『日韓関係の特殊性』ではなく『韓国の特殊性』にあるのです」。

 まさに、至言ですね。

韓国の希望は「政権交代」?

 もっとも、先ほども述べたとおり、文在寅氏が日韓首脳会談をすごすご諦めるとも思えません。

 とくに、この9月の自民党総裁選で菅総理が再選されなかった場合、あるいは10月までに行われる衆院選で、万が一、自民党が政権を失った場合には、韓国にとって展開が変わって来るかもしれません。

 むしろ、文在寅氏が起死回生策を練っているとしたら、「政権の再交代」ではないでしょうか。

 実際、先ほど紹介した鈴置論考でも、こんな記述がありました。

「――来年5月、韓国に新しい大統領が誕生したら、菅首相は首脳会談を開くのでしょうか。

鈴置:日本政府は国際法違反状態の是正を強く求めているので、誰がなろうが『是正』なしで首脳会談に応じるのは難しい。菅首相が降板して脇の甘い人が首相になれば、変わるかもしれませんが。」

 「脇が甘い人間が次期首相に就任」、何とも恐ろしい話ですね。

 その意味では、自民党総裁選と衆院選は、下手をすると日韓関係を含めた日本の将来を決める、大変に重要な選挙となるかもしれないと思う次第です。


「新宿会計士の政治経済評論」より転載
https://shinjukuacc.com/20210721-01/

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