«
»

中朝“同盟”3度目の更新

北経済難で中国に存在感
核武装・半島統一では隔たりも

 北朝鮮が1961年に米韓による軍事攻撃を危惧して中国と締結した「中朝友好協力相互援助条約」が今月60周年を迎え、今回で3回目となる20年ごとの自動更新がなされた。更新で北朝鮮の後ろ盾となる中国の存在感が改めて示された形だが、両国には相反する利害も多く、相互不信の溝は深い。
(ソウル・上田勇実)

国境封鎖は解除されず

 「敵対勢力の挑戦と妨害策動が悪辣になっている今日、両国の社会主義偉業を守護・促進する」(金正恩朝鮮労働党総書記)

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(当時、左)と中国の習近平国家主席=2019年6月、平壌(AFP時事)

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(当時、左)と中国の習近平国家主席=2019年6月、平壌(AFP時事)

 「中国は朝鮮(北朝鮮)が経済と人民生活を発展させ、社会主義建設の偉業を力強く推進していることを強く支持する」(習近平国家主席)

 これは今月11日に同条約が60周年を迎えたことを受け、両国首脳が交わした親書の中身だ。正恩氏が言う「敵対勢力」とは主に米国を、また両氏とも言及した「社会主義」とは独裁体制をそれぞれ指している。

 要するに中朝は事実上の同盟関係の根拠とされてきた同条約の意義を再確認し、今後20年先まで見通して現体制を維持しながら北東アジアの安全保障に脅威となり続ける考えに変わりがないことを明らかにしたものと言える。

 だが、今回の更新は正恩氏にとって厳しい国政運営の真っただ中で迎えるものとなった。正恩氏は6月の党中央委員会第8期第3回総会で「特別命令書」に署名した。これは戦時用の備蓄米などを食糧難に喘(あえ)ぐ一般住民に供給するための指示書とみられている。「人民大衆第一主義」をアピールする狙いもあるが、国内経済の逼迫度を物語っている。今、北朝鮮にとって中国の後ろ盾はいつになく不可欠だ。

 中国人民解放軍による朝鮮戦争(1950~53年)参戦などの歴史から中朝の絆は深いという印象があり、同条約更新を当然視する向きは少なくない。しかし、実際は同じ問題をめぐり利害対立も多い。

 例えば、北朝鮮の核問題。正恩氏は米国の敵対視政策に対抗する自衛の策だと主張するが、習氏にとって北朝鮮の核武装は「中国の夢」に立ち塞がる厄介なものだという。「米国による高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備や中距離ミサイルの東アジア配備に名分を与え、その結果、韓国を米国との同盟体制から切り離し、自国の衛星国にしようという戦略を狂わせる」(元韓国政府高官)からだ。

 南北統一をめぐっても武力による韓国吸収の野望を捨てていない北朝鮮に対し、中国は朝鮮半島が再び戦禍に見舞われることを最悪のシナリオと考えているとされる。更新した条約の第2条には「相手国が他国から武力侵攻された場合、軍事的援助を提供する」という自動参戦条項があるが、中国の本音は「人民解放軍に大量犠牲者を出すことに相当抵抗がある」(同高官)という。

 ただ、こうしたリスクを回避するため、実は条約6条があるともいわれる。6条は「朝鮮の統一は必ず平和的、民主主義的な基礎の上に実現されなければならない」とあり、間接的に「北朝鮮の侵略による朝鮮半島統一を反対する中国の立場が反映されたもの」(鄭成長・世宗研究所北朝鮮研究センター長)だという。

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、中朝国境が封鎖されて1年半以上が経過した。貿易の約9割が国境を通じてなされていたため、北朝鮮の外貨獲得は大打撃を被っているといわれる。条約締結60年という節目がきても、国境封鎖が解除されたという話は伝わってこない。

 韓国情報機関傘下の国家安保戦略研究院は「国境付近に建設中の防疫施設が完成され次第、解除される」との見通しを示している。

2

コメント

コメントの書き込み・表示するにはログインが必要です(承認制)。