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日韓貿易額の増大を「韓日関係改善」と勘違いする韓経

「危機の日韓関係」、無理に危機打開を図る必要はない

 日韓関係がギクシャクしているという点については、おそらく論者が日本人であろうが韓国人であろうが、保守派であろうが左派であろうが、あまり認識は変わらないと思います。ただ、その関係を「改善」しなければならないと考えるか、「このまま疎遠であっても良い」と考えるかについては、議論が分かれるところでしょう。こうしたなか、韓国メディア『韓国経済新聞』は昨日、「最悪の韓日関係の突破口」と題する記事を2つほど配信したようです。

人間関係と外交関係

●言葉を尽くしても伝わらない相手

 人生、「どんなに言葉を尽くしても、絶対に伝わらない相手」に出会うことがあります。

 本当にもどかしいものです。

 たとえば、私たちの多くは何らかの社会生活を営んでいますが、会社勤めをしていたら、「物わかりの悪い上司」との関係に悩むこともあるでしょうし、昇格して部下ができたらできたで、今度は「物わかりの悪い部下」との関係に悩むかもしれません。

 また、客商売をしていたら、最近話題の「クレーマー」と称される人たちと付き合わなければならないケースもあるでしょうし、ご近所に「大声を出す」、「他人の家に向かってゴミを投げ捨てる」、「歩きながらタバコを吸う」などの迷惑行為ばかりする人が住んでいたら、本当に困ってしまうでしょう。

 私たちは社会生活を営むに際し、そういった「物わかりの悪い人たち」にも、最低限の「伝える努力」はしなければなりませんが、やはり限界はあります。

 どうしても迷惑行為をやめない者に対しては、その迷惑行為が受忍限度を超えるのであれば、第三者(町内会、役所、弁護士など)を介在させて法的措置を講じべきでしょう。

 また、最近だと、自社の従業員の健康を守ることを重視する企業が増えているとも聞きます。上司・部下の関係についてはいかんともしがたい部分がありますが、少なくとも客商売においては、あまりに悪質なクレーマーに対してはクレーム対応を打ち切って法的措置を講じる場合もあるようです。

●外交も人間関係の延長

 さて、普段から当ウェブサイトでは、「外交も人間関係の延長で議論すべきだ」と申し上げているつもりです。国自体が人間の集合体である以上、国同士の関係も、人同士の関係と同じような原理が成り立つと考えられるからです。

 その「原理」とは、「相手のことが好きかどうか」という感情の議論と、「相手との関係が自分にとって必要かどうか」という利害の議論です。

 人間関係には「好き嫌い」「必要性の有無」という軸から、少なくとも次の4つのパターンが存在するはずです。

■人間関係の4パターン


①その人のことが好き、利害関係上付き合う必要がある
②その人のことが嫌い、利害関係上付き合う必要がある
③その人のことが好き、利害関係上付き合う必要はない
④その人のことが嫌い、利害関係上付き合う必要はない

(【出所】著者作成)

 そして、外交関係も同様に、相手国に対する国民感情の良し悪しと、国益に照らして付き合う必要があるかどうかという2つの軸で、次の4つのパターンに分類できる、というのが、以前からの党ウェブサイトでの持論なのです。

■外交関係の4パターン


⑤その国に対する国民感情が良く、国益上付き合う必要がある
⑥その国に対する国民感情が悪く、国益上付き合う必要がある
⑦その国に対する国民感情が良く、国益上付き合う必要はない
⑧その国に対する国民感情が悪く、国益上付き合う必要はない

(【出所】著者作成)

●中国との付き合いと「対中感情」

 ちなみに「国益」とは、難しいことばを使えば「軍事的安全保障と経済的利益」という2つの目的のことです。もっとわかりやすく言い換えれば、「国民みんなが平和で豊かに暮らせること」、です。

 たとえば、日本にとって中国は、基本的な価値の部分からして一致していませんし、かつては中国で、理不尽な反日暴動を通じ、現地に住む日本人、現地に進出している日本企業に不当な損害が発生したこともあります。

 現在、日本国内で「中国は好きですか?」とアンケート調査を実施して、「はい」と答える割合が高いとは思えません。そう判断する根拠のひとつが、内閣府がほぼ毎年秋ごろに実施している『外交に関する世論調査』です。

 この調査では、米国、ロシア、韓国と並んで、中国に対してもほぼ毎年、「親しみを感じるかどうか」について質問が行われているのですが、「親しみを感じる」と「どちらかというと親しみを感じる」を合算した数値が、「親しみを感じない」と答えた割合と比べ、明らかに低いのです(図表)

■図表 中国に対して親しみを感じるかどうか


20210219gaikou-03-2
(【出所】内閣府『外交に関する世論調査』を参考に著者作成。「親しみを感じる」、「親しみを感じない」は、それぞれ「どちらかというと~」を含めた数値。なお、2020年10月分の調査については、新型コロナウィルス感染症蔓延の影響で調査方式が変更されているため、「単純比較はできない」との注記が付されている)

 しかし、『深まる日台関係:5月の合計貿易高も「台湾>韓国」に』などでも触れたとおり、そんな中国も、(とても残念ながら)現時点においては日本にとって、「切っても切れない関係」にあります。貿易額が日本にとって最大だからです。

 ただし、ここで重要なのは、「中国との関係は、切っても切れませんね」、で終わりにしないことです。

 そもそも論ですが、「基本的な価値」を共有していない国とは、経済的な関係を深めるべきではありませんし、そんな相手国と経済関係が存在するならば、日本が国を挙げ、中国との経済相互依存関係を少なくする方向に舵を切るべきだ、というのが個人的な主張なのです。

関係が「断絶」するとしたら…?

●先行事例はすでにある

 そして、基本的な価値を共有していない相手との関係を整理するうえで、じつに参考になる「先行事例」があるとしたら、それは韓国ではないでしょうか。

 何度も申し上げてきたとおり、韓国は日本に対し、国際法違反、条約破り、約束破り、ウソツキ、外交的侮辱などの不法行為を何度も何度も繰り返してきました。

 文在寅(ぶん・ざいいん)政権下の自称元徴用工判決、自称元慰安婦「主権免除」違反判決がその2本柱ですが、これら以外にも、2018年12月の火器管制レーダー照射等、本当にさまざまな不法行為をしてくれたものです。

 ひと昔前だと、「そうは言っても韓国は日本にとって大事な国だ」、「安全保障上も経済・金融上のつながりも深い」、といった主張が提起されたものです。

 こうした主張はたいていの場合、「日韓関係は切っても切れない」、「だからこそ日韓問題を巡っても、日本は韓国に対し、原理原則をある程度譲歩して、外交的な解決を図らねばならない」、などの結論につながります。

 個人的に、そもそも韓国が日本にとって「軍事的にも経済的に重要な国」だったのかどうかを巡っては、若干の疑問点もあるのですが、いずれにせよ、ある時点まではこの認識が、日本の政府、財界のコンセンサスだったことは間違いないでしょう。

 (そして、おそらくそのコンセンサスが破られる契機を作ったのが、2015年12月の「日韓慰安婦合意」だったのだと思いますが、この点についてはどこか別の機会に触れたいと思います。)

●なぜ韓国はウソをつき、約束を破るのか

 こうしたなかで出て来るのが、次のような疑問です。

「ではなぜ、韓国が日本に対し、ウソをついたり、約束を破ったりするのか」――。

 これについて、当ウェブサイトとして深く立ち入るつもりはありません。ブロガーのシンシアリーさんを筆頭に、すでに優れた研究事例がたくさんあるからであり、また、ウェブ主「新宿会計士」自身はあくまでも金融評論家であって「韓国専門家」ではないからです。

 ただ、これについて少しだけ触れておくならば、自分たちが「被害者」、すなわち「道徳的上位者」である一方、日本は「加害者」、すなわち「道徳的下位者」だ、という勝手な思い込みが彼らの行動を貫いている原理なのかもしれません。

 あるいは、米国の政治学者で米戦略国際問題研究所(CSIS)のシニアアドバイザーでもあるエドワード・ルトワック氏が著書『中国4.0』で述べた、韓国人の心理に関する次の記述なども、非常に参考になります。

「日本は韓国に対してすでに十分すぎるほど謝罪したし、これからも謝罪しつづけなければならないだろうが、それらは結局、無駄である。なぜなら韓国がそもそも憎んでいるのは、日本人ではなく、日本の統治に抵抗せずに従った、自分たちの祖父たちだからだ」(同P129)。

 つまり、自分たちに「日本に勝った」という歴史がなく、また、例の「道徳的優位」理論を持ち出して日本に対し精神的優位を感じるためには、ときとして歴史を捏造してでも、日本に対し謝罪を要求し続けなければならない、というわけです。

 これこそ先ほど申し上げた、「どんなに言葉を尽くしても絶対に伝わらない相手」の典型例ではないでしょうか。

●韓経「韓日関係改善」論

 さて、韓国を巡って、もうひとつ不可解なのが、自分たちで関係を破壊するようなことをしておきながら、ここにきてやたらと「和解」を演じる動きが出ていることでしょう。

 これに関し、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に昨日、『韓国経済新聞』(韓経)が配信した2つの記事が掲載されていました。

 1つ目の記事が、これです。

<最悪の韓日関係 突破口は>両国間で経済・文化は解氷


―――2021.07.03 11:00付 中央日報日本語版より【韓国経済新聞配信】

 記事タイトルに「両国間で経済・文化は解氷」とありますが、残念ながら、記事は事実誤認だらけであり、解釈も穴だらけ、というわけです。

 たとえば「2018年10月に韓国大法院の強制徴用被害者に対する賠償判決で始まり、2019年7月に日本政府の韓国輸出規制とこれに対抗する『ノージャパン』運動、2020年の両国間短期ビザ免除措置の中止につながる『氷河期』」、とありますが、この短い記述、事実誤認だらけです。

 そもそも2018年の判決における原告は、「強制徴用被害者」ではありません。「自称元徴用工」です。また、2019年7月に日本政府が発表した措置は「輸出『規制』」ではなく「対韓輸出管理適正化措置」です。

 ただ、韓経の主張は、こうした「韓日氷河期にあっても、お金は動き、文化は流れ、人は交わっている」とするもので、日韓間の文化コンテンツの交流事例などがひたすら列挙されている、というものです。

 これなどむしろ、「日韓関係が悪化しても、文化交流はいきなり断絶したりしない」という典型例に過ぎないように思えてなりません。

 また、韓経は日韓の経済交流についても、「今年1-5月の両国間の貿易量は輸出規制前の水準に戻った」、などとしていますが、これについては『深まる日台関係:5月の合計貿易高も「台湾>韓国」に』などでも触れたとおり、むしろ「そもそもノージャパンの影響などなかった」と述べた方が正確でしょう。

 こうした矛盾が凝縮されているのが、次のような記述でしょう。

「大学生のチェさんは『一時は不買運動に積極的に参加したが、日本の製品だから無条件に買ってはいけないと考える私自身が非理性的に感じられた』とし『対話で問題を解決してこそ未来があり、それが本当の克日の道』と述べた」。

 「対話を通じて克日」というのも、なかなか支離滅裂でメチャクチャな主張ですね。

●統計的事実を勘違いしていませんか?

 そして、韓経が配信した記事の2つ目が、これです。

<最悪の韓日関係 突破口は>「NOジャパン」不買運動は弱まり…韓日貿易が回復傾向


―――2021.07.03 12:25付 中央日報日本語版より【韓国経済新聞配信】

 1つ目の記事と同じく、こちらの記事にもタイトルの冒頭に「最悪の韓日関係の突破口」とありますが、長さ自体は1つ目の記事の倍ほどです。

 これによると、最近、韓国では「ノージャパン」などの「日本不買運動の雰囲気が弱まっている」、などとしているのですが、これが事実だとすれば、なかなか意味がわかりません。

 日本政府が2年前に対韓輸出管理適正化措置を発表して以来、日本政府が求めた日韓政策対話は2回開かれただけで終わってしまいましたし、それどころか、韓国は日本を世界貿易機関(WTO)に提訴しています。

 また、自称元徴用工判決問題については何ら解決していませんし、それどころか今年1月には、自称元慰安婦問題に関する「主権免除違反判決」という、新たな対日不法行為が仕掛けられました。

 どうしてこういう状況で、韓国側で一方的に「雰囲気が変わっている」のでしょうか。

 韓経の記事には、こんな記述もあります。

「韓国と日本の政治・外交関係の中で停滞していた両国間の経済交流は、徐々に正常化の道に向かっている。今年に入ってからは両国間の貿易規模が増加傾向を見せている」。

 日韓貿易高(というよりも、日本から韓国への輸出高)が延びていることは事実ですが、これについては当ウェブサイトで何度も指摘しているとおり、べつに日韓関係が「好転」したからではありません。

 単純に日本の貿易構造に照らせば、韓国の全世界に対する輸出高が増えれば、日本の韓国に対する輸出高が増えるという相関関係が存在しているだけの話です。

 しかも、「不買運動が弱まり、日本産の自動車・ビールをはじめとする一部の品目は販売量が回復に向かっているという分析も出ている」、などとしていますが、もともと日本産の自動車やビールの対韓輸出高に占めるシェアは微々たるものでもあります。

 いずれにせよ、表面的な数字だけを見て、「韓日関係が改善する兆候が生じている」と決めつけるのは、分析としてはあまりにお粗末でしょう。

実際の日本の動き

 さて、冒頭でも触れた、「言葉を尽くしても通じない人」に対しては、結局のところどうすればよいのでしょうか。

 これも結論からいえば、「どんなに努力をしても言葉が通じない」ならば、そんな相手とは、「対話しなくても良い状況」と作らざるを得ないのではないかと思います。

 この点、実際の日本政府の動きは、興味深いものがあります。

 日本政府が現在、全面に出しているのは、「価値外交」と呼ばれるものです。

 これは、「自由主義、民主主義、法の支配、人権尊重」といった「基本的価値」(あるいは「普遍的価値」)をもとに、これらの価値を共有する国との関係を強化しましょう、という考え方で、そのひとつのあらわれが、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」です。

 このFOIPに強くコミットしている4ヵ国が「クアッド」、つまり日米豪印ですが、日本政府はこのFOIPを巡って、「理念に共感する国の参加」を歓迎する意向を示しています。つまり、「FOIP構想」自体が「オープン」だ、というわけです。

 そして、現在のところ、FOIPは単なる協議体に過ぎず、何らかの条約機構などが発足したというものではありませんが、個人的にはこのFOIP、将来的には「インド太平洋版NATO」を目指すのではないかと勘繰っています。

 もしそうなれば、日本が韓国と仲良くしなければならない理由のひとつである「軍事上・安全保障上の必要性」は、間違いなく弱まります。

 さらに、『日本の金融機関、香港と韓国への与信額が減少傾向に』『深まる日台関係:5月の合計貿易高も「台湾>韓国」に』などでも触れたとおり、日本企業は貿易という経済・産業面、国際与信という金融面で、ちょっとずつ韓国のウェイトを落としています。

 自然に考えたら、国際法をないがしろにする国でビジネスを営むこと自体が大きなリスクです。

 日本企業、日本の金融機関の判断ないし動きはまだまだ鈍いですが、それでも日韓断交時に日本に生じる損害は、最盛期と比べれば、確実に少なくなってきているのです。

 以上より、大変申し上げ辛いのですが、韓経が昨日配信した「韓日関係打開」論は、いずれも韓国側からの一方的な思い込み、あるいはデータやロジックを無視した机上の空論であると考えて良いのではないかと思う次第です。


「新宿会計士の政治経済評論」より転載
https://shinjukuacc.com/20210704-01/

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