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韓国野党、「ワクチンのためにクアッドに入れ」と要求

 

まことに恥知らずな「用米」、これが韓国の「保守派」の実態だ

 昨日は韓国メディア『中央日報』(日本語版)に、なかなか強烈な記事が掲載されていました。それは、韓国の保守政党「国民の力」が、韓国政府に対し、「ワクチンスワップを積極的に推進せよ」、「ワクチンのためならクアッドに入れ」、などと主張した、というものです。端的にいえば、「本末転倒」「ご都合主義」など以外に、適切な表現が見当たらないと感じる次第です。

●ワクチンスワップという不可解な構想

 『肝心の提言が欠落したワクチンスワップ批判記事=韓国』などを含め、当ウェブサイトでは以前からしばしば取り上げているとおり、「ワクチンスワップ」という用語は奇妙です。

 韓国メディアのこれまでの報道から判断する限り、この「ワクチンスワップ」とやらは、「米国が今すぐ韓国にワクチンを提供し、後日、韓国でライセンス生産したワクチンを米国に提供する」というスキームを指すようですが、それにしても理解できません。

 自然に考えて、ワクチンを提供する側(この場合は米国)に、本当に何ひとつとしてメリットが存在しないからです。ワクチンはどの国でも欲しがる人が多いでしょうし、自国に優先的に提供しようとするのは、国として当然の行動でもあります。

 しかし、このワクチンスワップとやらについては、この春先、鄭義溶(てい・ぎよう)韓国外交部長官(※外相に相当)が「米国と真摯に協議中だ」と国会で述べた(『韓国外相が「ワクチンスワップを米国と真摯に協議中」』等参照)ところ、韓国国内で大きな政策課題に(※勝手に)浮上しました。

 しかし、4月21日、ネッド・プライス米国務長官がワクチンについて、まずは自国、次いで(隣国である)カナダ・メキシコ、さらには「クアッド諸国」と協議していると述べた(『ワクチンスワップ構想巡り米国務省「まずは米国優先」』等参照)ことで、「ワクチンスワップ」への期待が(※勝手に)頓挫しました。

 自然に考えて、「米国による中国への批判には同調しないよ」、「でもワクチンは寄越せ」、だと、ムシが良すぎます。逆に、よくこれで「真摯に協議」とか言えたものだと思ってしまいますね。

●FOIPをクアッドと呼び変える韓国

 ただ、この「ワクチンスワップ拒絶」が契機となったのでしょうか、韓国の、主に「保守系」とされるメディアを眺めていると、最近、やたらと「クアッド」、「クアッド」という表現が目につくようになりました。

 当ウェブサイトの例でいえば、ゴールデンウィーク開けだけでも、『「クアッドは対中牽制に非ず、参加して利用を」=韓国』『クアッド参加を巡り中国の顔色をうかがう韓国メディア』でこれについて議論しているのですが、要するに「クアッドは対中包囲網ではないし、ワクチンのために加わるべきだ」といった主張です。

 ただ、この考え方にはいくつかの問題があります。

 まず、「クアッド」、すなわち「日米豪印」という枠組みは、本来、あくまでも「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」という構想がその前提にあります。つまり、FOIPにコミットした国がたまたま4ヵ国だったというだけのことであり、極端な話、この「クアッド」=「4ヵ国」に意味があるのではありません。

 しかし、多くの場合、「韓国もクアッドに加われ」と主張する韓国メディアの記述を読んでいても、出てくる用語は「クアッド」「日米豪印」ばかりであり、肝心の「自由で開かれたインド太平洋」という用語も、「FOIP」という用語も、ほとんど出てきません。

●中央日報に強烈な記事

 こうしたなか、この「ワクチンスワップ」や「クアッド」を巡って、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に昨日、なかなか強烈な記事が掲載されていました。

 これによると、韓国の保守系の野党「国民の力」は11日、所属議員101人全員が「韓米ワクチンスワップ」「クアッド参加検討」などを政府に対して促す決議に署名をしたのだそうです。

 こんな記事が掲載されているという事実については、昨日、すぐに気付いていたのですが、最近は日中、どうしても外せない用事が多く、当ウェブサイトで取り上げずにスルーしていた、というわけです。

 ちなみにワクチンスワップ自体、昨年末、「国民の力」の朴振(ぼく・しん)議員が考案した構想だそうです(中央日報日本語版・2020年12月30日付『韓国野党議員「通貨スワップのように米国とワクチンスワップ結ぼう」』等参照)。

 だからこそ、これを「国民の力」が決議したのでしょう。

 しかし、全文が400文字にも満たない短い記事ですが、読めば読むほど強烈すぎます。

決議文ではこんな記述も確認できるからです。

・国会に「新型肺炎ワクチン確保特別委」を設置する
・韓米ワクチンパートナーシップを構築する
・韓国がアジアのワクチンハブとして発展できる基盤作りのために努力する

…。

 なんだか、「相手に何もメリットがない提案をする」という意味では、韓国は与野党ともにまったく同じだと感じざるを得ない記述です。

●クアッドへの参加は明らかに「用米」

 しかも、記事には、こんなくだりもあります。

「検証されて安全なワクチン確保のためにインド・太平洋地域の平和と繁栄のための非公式安保協議体であるクアッド(Quad、米国・日本・オーストラリア・インド)参加に対する前向きな検討が必要だ」。

 そもそも「インド・太平洋地域の平和と繁栄のための非公式協議体」とは、いったい何でしょうか?

 どうせ書くならきちんと「FOIP」と明記すべきですが、「保守政党」であるはずの「国民の力」が、頑なにこれを記述しないというのは、いったいどういう了見でしょうか。

 それとも、政党として中国を怒らせることを心の底から恐れているのでしょうか。

 また、その「クアッド」とやらに参加する理由も、「ワクチン確保のために」、とあります。

 これはおそらく、ネッド・プライス米国務長官が4月21日、ワクチンについて、「自国、隣国、クアッド諸国」と協議していると述べた(『ワクチンスワップ構想巡り米国務省「まずは米国優先」』等参照)ことを意識しているのではないでしょうか。

 そもそも米国が求めているのは「クアッド=4ヵ国」の協議体に韓国が入ることではありません。FOIPを韓国が理解し、コミットすることです。

それをせずに「ワクチンが欲しいからクアッドに入れてくれ」とは、発想自体、まことに本末転倒と言わざるを得ません。

 いや、どうせ韓国のことですから、ワクチンが得られたらFOIP入りは「なかったこと」にされるのではないか、とすら思えてなりません。

●保守政党でもこれですから…

 もっとも、個人的には今回の記事を読み、真っ先に思い出したのが、某「保守派」とされる論客の方の、こんな趣旨の発言です。

「文在寅(ぶん・ざいいん)政権の次には親日・親米政権が発足するよう、日本も努力すべきだろう」。

 個人的に文在寅氏は「真の親日派」だと思っていますが(『真の親日派とは、文在寅氏その人だ』等参照)、この点はとりあえず脇に置きましょう。

 この人物がいう「親日・親米政権」とは、いったい何のことでしょうか?

 まさかとは思うのですが、「国民の力」を出身母体とする政権のことを「親日・親米政権」とおっしゃっているのでしょうか?

 だとしたら、まことに噴飯物です。

 今回の記事でもわかるとおり、「国民の力」に代表される韓国の「保守派」は、その本質において、「親日」でも「親米」でもないからです。敢えて言えば、「恐中・用日・用米(中国を恐れつつ、日本や米国は使い倒してやれ)」、といった性向を持っているのではないでしょうか?

 そもそも論ですが、外交によって相手を変えることなど不可能です。

 あくまでも主観的分析ですが、米国が「外交で相手を変えることができる」と勘違いしている原因のひとつは、何といっても先の大戦で米国が日本に勝利し、日本を「民主主義国」に作り替えた、という自負があるからでしょう。

 (※余談ですが、そもそも日本は米国に敗戦して初めて民主主義国になったのではありません。事実、19世紀に成立した大日本帝国憲法では帝国議会が法律を作るという立て付けが出来上がっていましたし、大正時代には男子普通選挙まで実現していました。)

 いずれにせよ、米国が「外交を通じて相手国に合理的な行動を取らせることができる」と素直に信じているフシがある点は気にかかりますが、こうした考え方が完全な間違いであるということは、今回の「国民の力」の決議文を読むだけでも明らかではないかと思う次第です。


「新宿会計士の政治経済評論」より転載
https://shinjukuacc.com/20210512-01/

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