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慰安婦「韓日外交で解決を」=予想どおりの韓国紙主張

勘違いしないでいただきたい、慰安婦問題は韓国の国内問題だ

 昨日、自称元慰安婦らが日本政府を相手取った訴訟が却下されたことを巡り、案の定、韓国メディアからは、「とりあえず韓国の司法が日本に対して配慮を示したものだ」とでも言いたいかの社説や論説が出て来ました。酷いケースになると、「日本の謝罪の真正性が問われる」だの、「韓日外交での解決」だのとする噴飯物の主張も見られます。


判決却下は「日本に対する譲歩」?

 自称元慰安婦らが日本政府を相手取って損害賠償を求めた訴訟を巡り、韓国のソウル中央地裁は昨日、原告の請求を「却下」しました。

 ちなみに昨日は当ウェブサイトのコメント欄で「却下と棄却の違い」について盛り上がっていたようですが、『韓国憲法裁の慰安婦合意訴訟棄却は「譲歩」にあらず(追記:タイトルと本文に誤りあり)』で述べたとおり、ウェブ主自身も混同したことがあります。

 棄却とは、裁判できちんと審理をした結果、原告側の請求に理由がないとして退ける行為であり、却下とは訴訟自体が不適法であると判断するものです。いわば、棄却は「審理の結果アウト」、却下は「門前払い」と理解すればわかりやすいでしょう。

 それはともかくとして、昨日の韓国地裁の判決は、一見すると、日本政府が以前から要求していた内容と整合しています。というのも、日本政府は主権免除の原則に照らし、そもそも裁判自体が却下されるべき、と述べていたからです。

 たとえば、今年1月8日に別の自称元慰安婦による訴訟で日本政府が敗訴した際、菅義偉内閣総理大臣は即日、次のように反応しました。

「国際法上、主権国家は他国の裁判権には服さない。よって、この訴訟は却下されるべきと考える。日韓の慰安婦問題についても1965年の日韓請求権協定において、完全かつ最終的に解決済みである。よって、韓国政府として国際法上違反を是正する措置をとることを強く求めたい」。

 つまり、慰安婦問題自体がすでに解決済みであるという点もさることながら、そもそも「主権国家が他国の裁判権に服するという事自体が違法である」というのが日本政府の一貫した立場であり、「請求棄却」ではなく「却下」判決が出たこと自体は、こうした日本政府の要求に沿ったものです。

しょせんは「ゼロ対100」理論

 ただ、昨日、当ウェブサイトで懸念を示したのが、「今回、韓国が日本に対して配慮したのだから、日本も韓国に対して配慮すべきだ」とする「お互い理論」が出て来ることです。

 ことに、韓国や北朝鮮が大好きな「ゼロ対100」理論、つまり「自国の方が明らかに一方的に悪いのに、相手にも『反省すべき点がある』などと言い募る屁理屈」に従えば、日本が韓国に1ミリでも譲歩したら、彼らにとってはしめたものです。

 くどいようですが、そもそも国際法を守るのは国家として当たり前の行動であり、昨日の韓国国内の判決も「近代主権国家として当たり前の行動」に過ぎません。それを、取り立ててほめる必要などありませんし、ましてや韓国が日本に「譲歩した」と考えるのは大きな勘違いです。

 韓国はすでに、自称元徴用工問題で2018年10月と11月、最高裁にあたる「大法院」が日韓請求権協定と国際法に違反する判決を下しており、また、いくつかの日本企業は在韓資産の差押えを喰らっている状況にあります。

 さらに、自称元慰安婦問題に関連する今年1月8日の主権免除違反判決についても、韓国政府はこれを無効化する措置を一切講じていません。

 昨日の『韓国地裁、日本政府からの訴訟費用取立を否定する決定』https://shinjukuacc.com/20210421-02/では、韓国の地裁が日本政府からの訴訟費用の取り立てを否定する決定を下した、とする話題を紹介していますが、判決自体を無効化したわけではない点には注意が必要でしょう。

韓国の反応:「わが国が日本に譲歩した」

 さて、ある程度予想していたことではありますが、韓国国内では左派、右派を問わず、この判決を巡っては「日本に対する譲歩だ」と見るメディアが非常に多いようです。

 たとえば、『中央日報』(日本語版)には、こんな記事が掲載されていました。

覆った慰安婦判決めぐる韓国各紙の社説


―――2021.04.22 11:09付 中央日報日本語版より

 これによると、主要メディアの社説は、次のとおりだったそうです(内容については適宜要約しています)。

・3ヵ月前の判決を却下したものであり、主権免除の認定可否が部により異なれば、裁判所をどう信頼すれば良いのか。日本との外交的衝突に配慮したというのなら、どの国の裁判所かと問いたい(ソウル新聞)

・韓国の裁判所は1次裁判で国民感情に、2次裁判では世界の法廷の普遍的論理に基づいた判決を下した。反日なら国際法を無視した判決でよいという話ではない(朝鮮日報)

・今回の判決は1月のものと正反対で紛らわしい。政府は慰安婦被害者を積極的に救済し、韓日葛藤を解く方法の準備に万全を期すべきだ(世界日報)
反人権犯罪国家責任免罪慰安婦判決(京郷新聞)

…。

 すなわちこれで見ると、韓国の各メディアには、右派、左派などのスタンスの違いはあるにせよ、朝鮮日報などを除けば、ほぼどのメディアにも「日本に対して一定の配慮をした」という認識が見られるのが興味深い点です。違いがあるとしたら、それを肯定的に評価しているか、批判しているか、という程度のものでしょう。

 恐ろしいことに、左派メディアの多くは、国際的な常識に反する判決が、韓国の国際的な信頼をどれほど深く傷つけるものであるかについて、ほとんど理解していないようなのです(※もっとも、この点については今に始まったことではなく、2018年の自称元徴用工判決問題の頃から見られた傾向ですが…)。

中央日報「日本の謝罪の真正性がカギ」、「韓日外交で解決を」

 また、その中央日報自身は、次のような主張を掲げています。

疎外される慰安婦合意、糸口になるか…「日本の謝罪の真正性がカギ」


―――2021.04.22 08:47付 中央日報日本語版より
韓国裁判所の慰安婦解決法、韓日外交で解決を


―――2021.04.22 08:12付 中央日報日本語版より

 どちらも驚くべき主張です。

 「日本の謝罪」云々の方の記事では、昨日の判決を「慰安婦問題が司法の領域から外交の領域に戻ってきた」と評価する意見を取り上げつつも、ソウル大学国際大学院の朴喆熙(ぼく・てつき)教授による、こんな発言が紹介されています。

「きょうの判決により韓国政府が慰安婦合意を再び水面上に引き上げて日本との対話に活用できる条件と環境が作られた。慰安婦合意当時に日本が支給した金額のうち56億ウォンが残っており、韓国政府で編成した103億ウォンも有効なだけに、これを裁判所が言及した『代替的権利救済手段』とみて活用する方法がある」。

 こんな認識をする人物が、韓国の「最高学府」なる大学で教授を務めているというのも驚きです。

 くどいようですが、2015年12月の日韓慰安婦合意では、慰安婦問題が「最終的かつ不可逆的に解決した」ことが両国政府間で確認されており、日本と韓国が「対話」する話ではありません。すべては韓国の国内問題だからです。

 しかも、申マs秀(しん・かくしゅう)元駐日大使は次のようにも述べています。

「2015年の慰安婦合意で重要なのはお金ではなく日本政府の謝罪で、謝罪の精神を実現する方法が必要だ。慰安婦合意当時日本が支給したお金のうち被害者に支給して残った財源を活用して慰安婦被害者に向けた追慕記念館を作ったり、さらには戦時性暴行など女性人権問題を取り扱う研究センターに昇華させるなど、慰安婦合意を基本枠組みにするもののこれをアップグレードする案が導出されるとみる」。

 駐日大使を務めておきながら、慰安婦合意の内容をまったく理解していないというのも驚きです。

 安倍晋三総理大臣は謝罪し、日本政府は10億円を出しました。これで日本政府がなすべきことは終了です。慰安婦合意を韓国の側から動かすのは約束破りです。

もしかして、慰安婦合意の再交渉を狙っている?

 また、「韓日外交で解決を」の記事の方は、やたらと長文であるわりに、なんだか何が言いたいのかよくわからない代物です。

 中央日報は、昨日の判決自体、「慰安婦問題の解決の主体が司法府ではなく行政府であるという点を自ら明確にした」という意義があるとしつつも、裁判所が「(自称元)慰安婦被害者問題の解決は日本との外交的交渉を含めて実現すべき」とした点に注目。

「任期末に日本との関係改善に舵を切った韓国政府の立場には肯定的に作用するものとみられる」としたうえで、日韓慰安婦合意に「注目が集まる」などとしているのですが、もしかして「慰安婦合意を再交渉すべき」、などと言いたいのでしょうか。

 念のために、申し上げておきます。

 昨日までに、韓国の裁判所で、国際法違反の判決を通じて日本に譲歩を迫るという韓国のやり方が部分的に軌道修正された、とする見方ができる点については、当ウェブサイトとして否定するつもりはありません。

 しかし、それは相手を「もう1発殴るぞ」と宣言してファイティングポーズを取っていた暴漢が拳を下げただけのようなものであり、この暴漢がこれまでに相手を殴ったことがチャラになるはずもありません。然るべき償いをしていただく必要があります。

 いずれにせよ、昨日までの判決ないしは決定により、韓国が日本に「歩み寄った」と見るのは大きな間違いであり、日本は引き続き、韓国に対しては「ウソをつくな」「国際法を守れ」「約束を履行しろ」と言い続ける必要があります。

 そして、くれぐれも「交渉」には応じてはならない、と申し上げておきたいと思う次第です。


「新宿会計士の政治経済評論」より転載
https://shinjukuacc.com/20191031post/

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