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中国の“自尊心”と韓国民の自尊感

韓国紙セゲイルボ

「限韓令」に対抗、強まる「限中令」

 中国官営媒体の環球時報に今年韓国で封切される中国映画8編に関する記事が載った。中国の映画専門家たちはこの中で『刺殺小説家』が優れた視覚効果などが反映され韓国チケット売上1位となり、大ヒット映画に対する新しい基準を提示するはずだと自信を示した。自国映画に対する愛情を表現したものなので、問題になることはない。われわれも韓国映画が外国でうまくいくように願うのは同じだ。

2019年12月23日、北京で、会談を前に握手する中国の習近平国家主席(右)と韓国の文在寅大統領(EPA時事)

2019年12月23日、北京で、会談を前に握手する中国の習近平国家主席(右)と韓国の文在寅大統領(EPA時事)

 ただ、『刺殺小説家』は韓国で4月15日封切りされる予定だったが、18日現在、国内主要館の上映リストに見当たらない。

 問題は記事で中国映画封切りについて「中国と韓国の間の文化的疎通が増加したという信号と見ることができる」とした点だ。「疎通」の意味が分かっているのか疑問である。また「5年前のように自国の文化市場が“韓流”に支配されることはないだろう」とし、「韓中文化交流の年は、より平等な協力を土台に、より深いコンテンツ協力ができる良い機会」と指摘している。

 5年前というのは2016年7月、韓国のサード(終末高高度防衛)ミサイル配備が確定した後、中国が“限韓令”を施行する前をいう。中国政府はこの5年間「限韓令はない」と強弁してきたが、中国で韓国映画やドラマなどは公式に見ることはできない。

 中国の限韓令に対抗して韓国でも「限中令」が強まっている。その差は、中国は共産党が指示し、韓国は国民が自発的に行うという点だ。最近のドラマ『朝鮮駆魔師』の放映中止などは反中感情が噴出した事例だ。“中国”が関連していれば無条件に反対するほど感情が悪化している。

 中国には巨大市場と資本がある。映画などは“中当たり”でも、韓国の“大当たり”ぐらいには興業収入を収めることができる市場だ。韓国企業には明らかにより良い機会になる。しかし、中国でなくてはならない、という程に切迫したものではない。インターネット時代の文化は伝播(でんぱ)を強要したり防止できない存在になった。

 微博(ウェイボー=中国版ツイッター)には韓国ドラマと芸能などの視聴率が毎日アップされる。韓国の映画、ドラマ、歌謡などはほとんどリアルタイムで不法サイト等を通して中国語に翻訳され広がっている。こうした状況でも中国があえて“限韓令”を固守するのはつまらない“自尊心”の問題なのかと思う。

 文在寅政府が“限韓令”解除だけが正解であるように習近平中国国家主席の訪韓に拘る姿も感心できない。習訪韓と限韓令解除をあたかも中国の“施恩(施し)”のように感じさせる外交政策は、韓流などで一層高まった韓国民の自尊感に触れる恐れがある。

 映画『パラサイト』と『ミナリ』は中国人が見なくても世界で認められた。今は惜しくても韓流など文化水準がさらに盛り上がれば、中国が限韓令の言葉さえ口にすることができない時がくるだろう。

(イ・クィジョン前北京特派員、4月18日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

ポイント解説

川挟んで対岸から石投げる

 韓国と中国の“文化摩擦”が起こっている。サード(終末高高度防衛)ミサイル配備を機に中国がいわゆる「限韓令」を出し、いま韓国が日本に対して行っているような「反日不買運動」の文化版を中国から食らっているのだ。韓国も「限中令」で対抗しているという。

 これほど“中国嫌い”なのにもかかわらず、最近韓国で2回放映して中止に追い込まれた『朝鮮駆魔師』のように、時代考証、文化考証がめちゃくちゃなドラマをどうして韓国人自身が作るのだろうか不思議だ。随所に中国色がちりばめられ、歴史的に見て「そりゃないだろう」という場面が多かったという。ドラマ制作者がよほど不勉強なのか、そもそも“歴史教育”が間違っているのか。

 韓中両国も経済発展し文化に向ける余力ができ、韓流に見られるように世界的に評価されるコンテンツを量産しはじめた。世界市場で両者の角逐が起こってもおかしくはないが、しかし、もともと文化とは受け取る側の嗜好(しこう)に依る。そこで張り合うのなら、優れたものを作り出せばいいだけの話で、愛国心や自尊心を持ち出す場ではない。

 だから、前北京特派員氏が言うように、「中国と韓国間の文化的疎通が増加した」といいながら、中国は制限したまま「平等な協力を土台に」とか「深いコンテンツ協力」を一方的に言われるのは承服できないという主張には賛同する。どこが平等なのか、どこが疎通なのか、ことは官営メディアの公式論評である。適当なコラムなどではないのだ。

 論は善しとして、これは北京駐在中には書けなかったのだろう。帰国して“安全圏”に立って本音を吐き出したように見える。「国家安全法」のある国だから理解はできるが。

(岩崎 哲)

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