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処理水を頑なに「汚染水」と言い張る韓国政府

 トリチウムの海洋放出を巡り、隣国で「日本非難」の声が続いているようです。ただ、ここでふと疑問に感じるのですが、1年後に発足する次期政権が「保守派」だった場合、その政権が日本に対し、水面下での関係改善を持ち掛ける、という可能性はないのでしょうか。これについては、結論的にいえば、文在寅政権下の反日があまりに常軌を逸していたためか、「最終的かつ不可逆的に」壊れたのが日韓の信頼関係である、という可能性が強まったと思います。


ALPS処理水海洋放出は国際社会の支持を得た

 昨日の『処理水は「汚染水」に非ず:海洋放出は合理的な決定だ』では、菅義偉総理大臣が2年後をめどに、福島第一原発でたまり続けている多核種除去設備(ALPS)で処理した「ALPS処理水」を海洋放出する方針を決定した、という話題を取り上げました。

 これについては米国務省のネッド・プライス報道官が即時、「日本政府の決定は透明で国際基準に従ったものだ」とするコメントを出したほか、国際原子力機関(IAEA)からも「国際基準に従っている」などの声明が出ています。

 これについては世の中のごく一部で誤解があるようですが、そもそも菅政権が海洋放出を決めたのは「汚染水」ではありません。あくまでも原発で生じる汚染水をALPSで処理したものであり、一般に「ALPS処理水」あるいは「処理水」と呼ばれます。

 ただし、処理水(H2O)の中には放射線を発する水素同位体である「三重水素」(いわゆるトリチウム)でできた水(T2O)が含まれており、これについては物理的に、完全に除去することができません。

 「国際的な基準」とは、このトリチウム水の濃度についてある程度の基準を設け、その基準値以下になるよう、十分に薄めれば、海洋放出しても問題ない、とする考え方のことであり、菅総理はトリチウムの濃度を国内の規制基準の40分の1以下にする方針を示しています。

世界もトリチウムを放出している!

 実際、2018年2月2日に開催された『多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(第7回)』という会合で配布された『資料5-2 トリチウムの性質等について(案)』という資料の7ページ目には、こんな図表が掲載されています。

■図表 世界の原子力発電所等からのトリチウム年間排出量
20210414tritium
(【出所】経産省HP『資料5-2 トリチウムの性質等について(案)』P7)

 これによると、トリチウムは海洋ないし大気中に排出されるのが世界のスタンダードであり、例えばお隣の韓国にある「月城原発」からは、2016年において、液体で17兆ベクレル、気体で119兆ベクレル、合計136兆ベクレルというトリチウムが排出されていることが示されています。

 いずれにせよ、トリチウムに関しては、「原発から排出されたトリチウムの影響で健康被害が生じた」とされる事例は、今のところは報告されておらず、理論上もトリチウムから放出される放射線量の少なさ、体内に蓄積されずに水とともに排出されるという性質などから、健康被害は考え辛いとされています。
 (※もっとも、将来において「トリチウムが絶対的に安全だ」と保障されているわけではありませんので、この点については注意する必要はありますが…。)

 こうしたなか、米国政府が述べるとおり、日本政府が選んだ「海洋放出」とは、さまざまな選択肢を並べ、それらについて透明性が確保されたプロセスを通じて比較検討した結果のものであり、かつ、国際的なルールに従い実施されるという前提において、国際社会から支持されているものです。

付き合ってられない「韓国の反発」

 当然、日本国民および近隣国に対する説明は、丁寧になされなければならないことは間違いないのですが、では、「どこまで丁寧にやるべきか」については、議論がわかれるところでしょう。

こうしたなか、昨日の『ALPS処理水を意図的に「核汚染水」と呼ぶ韓国首相』でも紹介したとおり、韓国の丁世均(てい・せきん)首相が自身のフェイスブックアカウントに、4月13日付で次のような書き込み(※原文は韓国語)をしました。

・日本政府の核汚染水海洋排出の決定を受け入れることはできない
・周囲への理解と共有なしの一方的な決断に、政府はきっぱりと反対する
・日本の汚染排出決定は無責任な決断であり、周囲の人々の権利を侵害している
・日本政府はもうひとつ、歴史的過失を犯すことになるだろう

 正直、一国の首相の発言とは思いたくないほど、感情的で非科学的、かつ日本に対する恨みが込められたものです。しかも、多核種除去設備で処理されたあとのALPS処理水のことを、わざわざ「核汚染水」とウソの呼称を用いているあたり、明らかに悪意があります。

それだけではありません。

 『今度は「日本を国際裁判で訴える」と表明した文在寅氏』でも紹介したとおり、文在寅(ぶん・ざいいん)大統領自身までもが本件を巡って、国際海洋法裁判所への提訴を検討するよう、政府に指示を出したのだとか。

 韓国が日本を訴えるのは自由ですが、もし訴えるにしても、「日本のトリチウム水の海洋放出によって韓国が不利益を被る」という点については、原告である韓国が立証しなければなりません。そんな立証など不可能ですし、だからこそ、日本は「どうぞ、どうぞ」という反応で良いのです。

文在寅政権が交代すれば良くなるのか?

 ただし、これについては、文在寅政権が任期を1年少々残し、ソウル市長選などで与党候補が敗北するなど、先日の補選・再選挙で大敗を喫したことが原因であろうと指摘する人もいるのですが、ものごとはそこまで単純ではありません。

 ことに、わが国でもよく、一部の保守系論客ないし外務省出身者などを中心に、「韓国がここまで反日国となり、日韓関係がここまでギクシャクしたのは文在寅(氏)のせいだ」、「だから文在寅(氏)の後任に親日的な政権を発足させ、日韓関係を元通りにすべきだ」、といった主張を耳にします。

 あえてきついことばで申し上げるなら、それらはすべて「与太話」に過ぎません。その証拠のひとつでしょうか、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に昨日、こんな記事が掲載されました。

 中央日報によると、韓国の政界は、与党「ともに民主党」から最大野党「国民の力」に至るまで、「日本批判」で声が一致したのだとか(※なお、具体的にどの議員がどう発言したかについては逐一取り上げませんので、ご興味があればリンク先記事で直接確認してください)。

 ここでポイントは、「与野党が一致して」、という部分でしょう。もし現在の韓国が文在寅政権ではなく保守派の政権だったとしても、程度の差こそあれ、やはり日本に対してギャーギャーと大騒ぎしていたのではないか、という疑問が湧いてくるゆえんでもあります。

 あるいは、この状況で「保守派」とやらが政権を獲得し、文在寅政権の後釜に座ったとしても、その「保守派」大統領は文在寅政権が表明した国際裁判手続を取り下げるわけにはいかない、という可能性が高くなったのです。

説明100回でも理解しない韓国

 ちなみに昨日も紹介しましたが、中央日報に昨日掲載された次の記事によると、駐韓日本大使館側が公表した参考資料には、「東京駐在の外交団を対象にこれまで100回以上の説明会を行った」などと記載されていたのだそうです。

 日本政府がこれまで誠心誠意、韓国側に説明して来たにも関わらず、説明は韓国側にまったく理解されず、それどころか相手は日本を国際裁判に訴えるぞ、と叫んでいるわけです。

 もう十分でしょう。

 どんな国同士であっても、仲が悪いよりは仲が良い方が望ましいに決まっています。しかし、こちらがどれほど一生懸命、平和的・紳士的・友好的な話し合いを持ち掛けても、彼らの方にそれに応じる意思がないことは明らかであり、これ以上の関係改善努力は無駄です。

最終的かつ不可逆的な変化:古き悪しき時代には戻らない

 もっとも、個人的にもうひとつ懸念していることといえば、次の政権を「保守派」が担うことになったとして、例の「古き悪しき時代」、すなわち「水面下の対韓配慮論」が復活しないか、という点です。

 従来の日韓関係といえば、韓国が水面下、つまり両国民や国際社会から見えないところで、日本に対して譲歩を懇願し、日本が韓国に譲歩したところ、韓国側がハシゴを外す、というパターンが大変に多かったのです。

 自称元慰安婦問題を巡る1993年の「河野談話」など、その悪い例の典型でしょう。

 ただ、文在寅政権の4年間で、日韓の信頼(?)関係が踏みにじられ、粉々に砕かれたこともまた事実です。日本の側に「今回ばかりは韓国に譲歩してあげよう」という空気が芽生え辛い状況が生まれたことは間違いありません。

 というよりも、日本政府が韓国に対し、またしてもくだらない譲歩をするようであれば、一般国民の間から自然発生的に怒りが湧いてくるでしょうし、その怒りの感情は2015年12月の日韓慰安婦合意のときのそれと比較にならないほど強いのではないでしょうか。

 その意味では、文在寅政権の4年間における最大の功績(?)とは、日韓関係を最終的かつ不可逆的に破壊したことだったのだとしたら、これはこれで皮肉な話なのかもしれないと思う次第です。


「新宿会計士の政治経済評論」
https://shinjukuacc.com/20210415-01/

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