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両市長選後に「真の親日派」・文在寅氏に危機が到来へ

ソウル・釜山両市長選を契機に文在寅政権は暴走するのか?

報道では、明日行われる韓国のソウル市長選挙、釜山市長選挙で、文在寅(ぶん・ざいいん)大統領の出身母体でもある与党「ともに民主党」の候補者が苦戦していると伝えられています。こうしたなか、当ウェブサイトとしての関心事のひとつは、与党がこれらの選挙でどれほどの大差で敗北するか、という点もさることながら、「レームダック化する文在寅政権が反日武装路線」を取り始めた場合、日韓関係にどんな影響が生じるか、という点にもあるのです。


用日派と対韓譲歩論者の結託

●今から2年前の「文在寅氏礼賛記事」

 ちょうど2年ほど前、当ウェブサイトでこんな議論を展開したことがあります。

■真の親日派とは、文在寅氏その人だ


(…)韓国の韓日議連会長の姜昌一(きょう・しょういち)氏が提案したとされる「2+2基金」案に関する話題と、それを妨げているのが韓国大統領である文在寅(ぶん・ざいいん)氏その人である、という、非常に興味深い構造です。つまり、文在寅氏こそが、結果的に日本の国益に資する存在なのではないでしょうか?<<…続きを読む>>
―――2019/05/22 11:00付 新宿会計士の政治経済評論より

 今になって読み返すと、却って新鮮な気持ちがします。

 冒頭から余談で申し訳ないのですが、リード文に「韓日議連会長の姜昌一(きょう・しょういち)氏」という記述が出てきます。

 姜昌一氏といえば、2011年5月、韓国の現職国会議員として、史上初めてロシア政府の許可を得て国後島に上陸した経歴の持ち主であるとともに、国会議員時代には天皇陛下のことを「日王」と積極的に蔑んで発言していた人物でもあります。

 そのような人物が「韓日議連」の会長を務めていたという時点で、当時から韓国は日本との関係を舐めてかかっていたことは間違いないでしょう。

 (※余談ですが、外務省のウェブサイト上、姜昌一氏は4月1日時点においても正式な「駐日大使」ではなく、「次期大使」というステータスのままです。ただ、早ければ本日の閣議あたりで姜昌一氏の信任状捧呈式が決定される可能性もある点については、個人的には密かに注目している論点でもあります。)

●文在寅政権が継続すればどうなるのか?

 さて、余談はどうでも良いとして、まずはこの議論を振り返るうえでの大前提を説明しておきたいと思います。

 当ウェブサイトでこれまで「持論」として展開し、2月に刊行した拙著『韓国がなくても日本経済はまったく心配ない』にも転載した論点が、「日本における日韓友好論」と、「韓国における韓日友好論」です。

 結論からいえば、現在の日韓関係は、次の両者が結託して出来上がっているものです。

■日本側:「対韓譲歩論」


日本が歴史問題など、韓国に譲れるところは譲ることで韓国の歓心を買い、「名より身を取る」という考え方。「大人の対応」ともいう。
■韓国側:「用日論」


日本に対し、「歴史問題」で道徳的優位を獲得し、有利な条件で経済・技術協力などを引き出すとする考え方。「ツートラック」ともいう。

 この2つの考え方が見事に対応している、との考えに至ったのは、じつは、文在寅氏のおかげでもあります。

 従来であれば、日韓間で何らかの歴史問題が浮上したとしても、日本側では「日韓議連」だの、経団連企業の高学歴経営者だの、外務省の「コリア・スクール」関係者だのといった勢力が、「日本が謝っておけば丸く収まる」式の解決法をひねり出してきたものです。

 日本が一方的に相手に譲歩するだけですから、日本国内さえ満足させられるのならば、頭も労力も一切使う必要はありません。敢えて言葉を選ばずに申し上げれば、「売国奴」の所業そのものです。そして、韓国側でもそれを当然のごとく、期待していたフシがあります。

 ところが、このメカニズム、この4年間の文在寅政権下で、まったく機能しなくなったのです。

 先ほど紹介した、「2019年の時点で文在寅氏が自称元徴用工判決問題の解決にストップをかけていた」とする話題はその典型例ですが、文在寅氏自身が日韓関係に対し、あまりにも認識が乏しすぎることが、結果的に日本国内の「対韓譲歩論者」を根絶やしにしつつある、というわけです。

 これが、冒頭の「真の親日派は、文在寅氏その人だ」、という認識の真相です。

●自称元徴用工判決問題の「姜昌一式解決法」

 以上を踏まえたうえで、2年前の当ウェブサイトの議論を振り返っておきます。

 2018年10月と11月、韓国大法院(※最高裁に相当)が日本企業に対し、自称元徴用工らへの損害賠償を相次いで命じた問題に関連し、当時の日本政府は韓国政府に国際仲裁手続への付託を通告した直後でした。

 ちょうど安倍晋三総理が6月に大阪G20会合を主催する直前のことでもあり、来日する予定の文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領との日韓首脳会談が実現するかどうかが焦点となっていた時期でもあります。

 こうしたなか、韓国メディア『中央日報』(日本語版)の2019年5月22日付『文大統領の一言でオールストップした韓日関係、与党が出口探る(1)』という記事によれば、当時は韓日議連の会長だった姜昌一氏は2019年5月中旬、次のような趣旨の発言をしたのだそうです。

「韓日関係が本当に深刻だ。来月、大阪で韓日首脳会談が失敗に終わればわれわれは本当に『仲間はずれ』になる。経済的にも互いに大きな被害を受ける。日本も焦っている。駐韓日本大使や日本議員が私に『韓国がジェスチャーを見せれば日本企業の被害者賠償を妨害しない』という。それでも政府が少しも動かない。時間がない。6月初めまでには徴用問題が解決してこそ首脳会談が可能になる」。

 では、具体的に姜昌一氏が述べたとされる「姜昌一式解決法」とはいったい何だったのか。

 長年、韓国メディアを眺めていると、だいたい想像がつくのですが、これが実に噴飯物で、次のとおり、まったく「解決」にもなっていない代物です。

「▼裁判で被害事実が認められた強制徴用者に対する日本企業の賠償を前提に▼韓国政府が財団を設立してその他の徴用被害者を慰労する」。

●当時、「騙される人」は、まだ多かった

 当時、当ウェブサイトでは、「2015年12月28日の『日韓慰安婦合意』を自分たちで反故にしておきながら、再びこの手の基金構想に騙されるほど、日本は愚かな国ではないはずだ。少なくともそう信じたい」、とする趣旨のことを申し上げた記憶があります。

 この点、現在、この「解決法」を見れば、「噴飯物だ」とする主張に、多くの人が賛同していただけると思います。しかし、この記事が掲載された当時の日本社会では、「韓国に対し、日本が譲歩すれば、すべてが丸く収まる」式の主張が現在と比べてまだ力を持っていたことも事実です。

 実際、当ウェブサイトも「額賀福志郎・日韓議連会長あたりがこの『姜昌一式解決法』に飛びつくのではないか」、と警戒しましたし、ほかにも「対韓譲歩論」を持論とする有象無象が日本側でもうごめいていたことも確かでしょう。

 ちなみに額賀福志郎氏といえば、自称元徴用工判決問題が発生した直後の2018年12月、韓国が竹島で軍事演習を実施するなかであるにもかかわらず、ノコノコと韓国を訪問し、文在寅氏と能天気にニヤニヤ握手して帰ってきた張本人でもあります。

能天気過ぎる日韓議連の共同宣言と自民党内の韓国への怒り

 いずれにせよ、1965年以降の日韓関係史とは、韓国の「用日派」と日本の「対韓譲歩論者」が結託してきた歴史でもありますので、当時、個人的にもこうした「日本が譲歩すればうまくいく」式の解決に対し、かなりの警戒を抱いていた、ということでもあるのです。

文在寅氏こそ真の親日派

●日本にとって都合が悪い解決策を、「文在寅氏が」止めた!

 ただ、当ウェブサイトでなぜ、「文在寅氏が『親日派』だ」と申し上げたのかといえば、この「姜昌一式解決法」とやらに続きがあるからです。

 じつは、自称元徴用工問題を巡っては、2018年から19年前半にかけて、この「姜昌一式解決法」に似た、「財団設立」方式による解決がチラホラと提唱されていたのですが、これを止めていたのが文在寅氏その人だった、というわけです。

 先ほども紹介した中央日報の記事、タイトルに「(文在寅氏の)ヒトコトでオールストップ」、とあるとおり、鄭義溶(てい・ぎよう)国家安保室長や李洛淵(り・らくえん)首相(※肩書はいずれも当時)らが考えた、自称元慰安婦問題などに対する解決策に対し、文在寅氏がこう発言したというのです。

「徴用問題はまだ裁判(大法院判決以降の後続裁判)中の事案ではないですか。終わったものではないのに、どうしますか」。

 日本語に訳すとちょっとわかり辛いのですが、要するに、自称元徴用工判決問題を巡って、「まだ下級審で裁判自体が進行しているのだから、それらが終わるのを待ってからでも良い」、といった認識です。

 あるいは、「その問題の優先順位は低いだろう」、という、文在寅氏なりの感想でもあります。

●文在寅氏の頭の中は「北朝鮮が最優先」

 この発言自体は2019年1月になされたものですが、これが意味するところは、文在寅氏自身がこのころ、自称元徴用工判決が日韓関係を破壊しかねないほどのインパクトを持っているという点に対し、ほぼ認識がなかった、という点にあります。

 文在寅氏のこうした能天気な発想は、当時、南北和平プロセスが韓国主導で進んでいた(と文在寅氏が勘違いしていた)という事情もあるのでしょう(このあたりについては、韓国メディア『ハンギョレ新聞』のキル・ユンヒョン氏が先月執筆した、次の記事なども大いに参考になると思います)。

[キル・ユンヒョンの新冷戦韓日戦18]「構造的不和」の韓日、対話で解決は可能か


―――2021-03-13 12:44付 ハンギョレ新聞日本語版より

 キル・ユンヒョン氏の論考にもありますが、当時の文在寅氏の日本に対する行動は、ちょうど朝鮮半島問題における「運転席理論」と密接な関係があります。要するに、当時の文在寅氏にとっては、最優先課題は北朝鮮との関係改善であり、日本との関係改善は二の次、三の次だった、というわけです。

 ちなみにキル・ユンヒョン氏といえば、「安保協力をしようとする日本と歴史問題での対立を脇に置けない韓国との対立はずっと続く」、「現在の韓日対立はこれからやってくる『巨大な不和』の序幕に過ぎない」、などと指摘する、数少ない韓国人論客のひとりです。

 このキル・ユンヒョン氏の指摘が正しければ、多少の波はあれど、文在寅氏以降の韓国大統領も、日韓関係を破壊しようとするのではないか、と思えてなりません。

 いずれにせよ、日本にとって都合の悪い解決策を文在寅氏自身が結果的に止めてしまっていたというわけであり、その限りにおいて、文在寅氏の行動は、結果的に「日本が韓国に譲歩すれば丸く収まる」式の解決策が発動される余地を消し去った、というわけです。
 だからこそ、文在寅氏こそが「真の親日派」ではないか、というのが、当ウェブサイトにおけるこの2年間の基本認識でもあるのです。

●鈴置氏の指摘は「米中二股外交」

 さて、この文在寅政権、日本にいるとどうしても「日韓関係」というフィルタで眺めてしまいがちですが、もっと大きな視点で眺めると、「北朝鮮や中国との関係をどうするか」という点に最も腐心していて、その次に米韓同盟の維持が来ている、という点が浮かび上がってきます。

 この点を気付かせてくれた論客といえば、日本を代表する優れた韓国観察者である鈴置高史氏であり、最近の鈴置氏の一連の論考については、ウェブ評論サイト『デイリー新潮』の『鈴置高史 半島を読む』というページにまとめられています。

 当ウェブサイトなりに鈴置氏の仕事を振り返っておくと、最大の功績は、日韓関係に集中しがちな朝鮮半島問題に、「米国」、「中国」という極めて重要な視点を加えたことにあります。早い話、日本がいくら韓国と前向きな友好関係を構築しようと思ったとしても、韓国の側にそのインセンティブはない、ということです。

 もっといえば、鈴置氏が指摘するとおり、韓国のここ数年の外交基調は「米中二股外交」にあります。

 韓国は米国の同盟国という立場にありながら、米中対立局面において旗幟を鮮明にすることなく、ことに「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を巡っても、米中間で戦略的な曖昧性を維持したままです。

 しかも『中華属国化に邁進する韓国とつなぎとめようとする米国』などでも報告したとおり、先月の「米韓2+2会合」の直後から、「これ見よがし」に、FOIPに公然と反発するロシアや中国との間で、相次いで外相会談を実施する始末です。

●ついに中韓2+2まで

ついでにいえば、昨日はこんな報道もありました。

韓中2プラス2を機に意思疎通・協力強化へ 韓国国防部


―――2021.04.05 13:35付 聯合ニュース日本語版より

 「2+2」とは、両国の外相・防衛相が一堂に会して対話をするという形態の会議であり、おりしも当ウェブサイトでは昨日の『読売が「日独2+2」開催を報道』でも話題として取り上げたばかりです。

 韓国が、同盟国であるはずの米国にとっての「仮想敵国」である中国との間で、わざわざ「2+2」を今年上半期中に実施すると公言すること自体、米国を最大限いら立たせる行為でもあります。

 もっとも、韓国が旗幟を鮮明にせず、米中間で戦略的な曖昧さを保つのは、韓国自身が「そうすることが自国にとって最も都合が良い」と考えているからであり、このこと自体を批判することはできません。

 この点、冷静に考えたら、当たり前の事でもあります。「日本は日本の都合で動くべきである」と主張するのであれば、「韓国が韓国の都合で動く」ことを批判する資格などないからです。

 余談ですが、鈴置氏の一連の論考を読むと、「韓国がどこにいくか」を議論しているように見えて、じつは、本質的には「日本がどこに行くべきか」を述べている、というケースが多いように見受けられます。

 だからこそ、当ウェブサイトでは勝手に、鈴置氏のことを「優れた韓国観察者であるばかりでなく、優れた日本観察者だ」と申し上げている、というわけです。

文在寅氏の存在感がなくなると…?

 さて、「米中二股外交」が基調の韓国外交のなかでも、文在寅政権はかつてないほどに日韓関係を軽視した政権だったことは間違いありません。

 ただ、どうもこの文在寅政権、明日(7日)に投開票が予定されている、ソウル、釜山という韓国の「2大都市」における市長選の結果次第では、レームダック状態に陥る可能性が出てきました。

 すでに複数のメディアが報じているとおり、保守政党である「国民の力」の候補者が、文在寅氏の出身母体である与党「ともに民主党」の候補者に対し、支持率調査で大差をつけている状況にあります。

与党候補「文在寅」離れ 政権批判やまず苦戦―ソウル・釜山市長選


―――2021年04月03日14時29分付 時事通信より

 「ともに民主党」が圧勝した昨年の国会議員総選挙とは異なり、もしも「ともに民主党」の候補者が大敗しようものなら、その勢いで、来年の大統領選でも「ともに民主党」系の候補者が勝てない、という可能性が出てきます。

 そういえば、『韓国外相「99%発言」の真意は「米中二股外交宣言」』などでも議論したとおり、現在、次期大統領選に向けて、李在明(り・ざいめい)京畿道知事の支持率が伸び悩み、尹錫悦(いん・しゃくえつ)前検事総長に大きな差を付けられてしまっている状況にあります。

 個人的には、文在寅氏こそが「真の親日派」であると考えている次第ですが、もしもこの「文在寅路線」が大きく変わるようなことがあれば、日韓関係が再び元通り、という展開も懸念されます。

 もっとも、今週のソウル・釜山市長選の結果次第では、国民の支持が離れたことに対し危機感を抱く文在寅政権が、「レームダック期の反日」に手を染めるのであれば、それはそれでどうなるか見てみたい気がしてならないのですが、いかがでしょうか。


「新宿会計士の政治経済評論」より転載
https://shinjukuacc.com/20210406-01/

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