ワシントン・タイムズ・ジャパン

朴槿恵氏、慰安婦合意の内幕

「支援・補償」を望んだ元慰安婦、「告げ口外交」で日韓双方に傷

 朝鮮日報社が出す総合月刊誌月刊朝鮮(2月号)が2015年の日韓慰安婦合意に至る朴槿恵(パククネ)政権(当時)の対日戦略を記した資料を入手した。朴大統領は徹底的に安倍晋三首相(同)を責めることによって、交渉の場に引き出し、合意をつくろうとしたことが初めて明らかになった。

 この「対外秘文書」によれば、朴大統領は13年就任当初、「政府機関に元慰安婦らがどんな方式の問題解決を望むのかについて把握せよ」と指示を出したとしている。

 政府機関が直接、元慰安婦らにインタビューして分かったことは、彼女らが望んでいるのは日本政府の「真正性のある謝罪」ではなかった。直面していたのは「高齢に伴う個人別診療費負担増加」や「老後の生活の心配」で、望んでいたのは「政府支援・補償」だった。

 この結果を受けて朴大統領は決心した。「生きているうちに日本政府の謝罪と補償を受けられるようにする」と。「政府支援・補償」が「日本からの」にすり替わっている。ここに「韓国政府が」という発想は最初から1ミリもなかったようだ。

 元半島出身労働者問題(いわゆる徴用工)について1965年に締結された基本条約・請求権協定では、交渉過程で主に個別の「未払い賃金」問題を日本側から持ち掛けたが、韓国側は「一括処理」を希望して、韓国政府の責任で解決することになった。

 これに比して慰安婦問題は14年間にわたる交渉の間、双方からまったく触れられることはなかった。そもそも国家が関与した「未払い賃金」問題が存在しなかったからだ。戦争の終結で各地の慰安所は営業をやめ、女性たちも帰国船や連合軍などによって国に帰っていった。

 こうした基本条約、請求権協定のいずれもが朴大統領の父、朴正煕(パクチョンヒ)大統領の政府が日本との間で“解決”したものだ。とはいえ、国家間の約束とは別に、韓国側は「不満」を抱き続けていた。朴槿恵氏がそれに責任を感じ「どうしても解決する」と強く思ったとしても無理はない。

 それから朴槿恵氏の猛烈な「告げ口外交」が始まる。同誌は「世界の首脳に日本の性的奴隷問題の実情を知らせた。日本の真の姿を手加減なしで伝えたのだ」としている。容赦なく「性的奴隷」という言葉を世界中にまき散らし、日本を貶(おとし)めた。

 同誌は「これによって安倍首相は深刻なストレスを受けたという」と伝える。「裏では外交ラインを通じて朴大統領の性的奴隷発言の自制を迫った」ほどだったという。

 「告げ口」外交と併せて展開したのが徹底した「無視」である。「慰安婦問題が解決するまで会うつもりがなかった」とは大統領府関係者の証言だ。両者会談が初めて行われたのが大統領就任から2年9カ月後だったことを見ても、その“焦(じ)らし”方が徹底していたことが分かる。

 そしてついに「日本側から先に交渉を要請してきた」。朴大統領は李丙琪(イビョンギ)国家情報院長に「極秘で日本側と接触せよ」と指示。「2014年末から15年初め」の頃だ。日本側は「谷内正太郎国家安全保障局長」が交渉に当たった。「決裂、中断、再開を繰り返した」という。

 韓国側の思惑通りに進められた交渉はついに15年12月28日、日韓合意として結実し、ソウルで日韓外相によって発表され、「慰安婦問題の最終的で不可逆的解決」が確認された。

 ところが、こうした難産の末に産み落とした合意を韓国世論は歓迎しなかった。その後、朴槿恵大統領自身が弾劾され、次の文在寅(ムンジェイン)政権によって慰安婦合意は事実上、反故(ほご)にされる。慰安婦支援団体が「運動の消滅」を妨害して、慰安婦問題の引き延ばしを画策してきたことも明らかになった。「解決する気のない」勢力が政権中枢にいる限り、常に蒸し返されることになる。

 朴大統領は「困窮している高齢の元慰安婦たちを助けたい」と思い、「告げ口」と「無視」という通常の外交ではあり得ない手段を使って、安倍首相を追い詰めた。安倍首相も大きな譲歩をして応じた。双方共に刀傷を負った。その事情が「部外秘文書」で明らかにされた。相互理解に資することが期待される。

 編集委員 岩崎 哲

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