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製造業の脱中国が加速しても日韓関係は深まらないのか

 以前の『「コロナ後」の重要なテーマは製造拠点の中国脱出支援』で紹介した、日本政府が製造拠点の中国からの脱出(とくに国内回帰とASEANへの分散)を支援する計画について、その具体的なものが始動したようです。また、あわせて台湾の半導体メーカーの工場建設を誘致するなど、心強い話題も出て来ています。もちろん、それらの試みがうまく行くかどうかは別問題なのですが、ただ、ふと気になったのが、「日本企業が中国を脱出して、韓国に拠点を移す」という話を、あまり耳にしないという点です。


●ポストコロナ時代は「脱・中韓」

 中国は公船を尖閣諸島周辺海域などに毎日のように出現させたり、香港に国家安全法制を施行したり、ウイグル・チベットなどで人権を弾圧したり、南シナ海侵略を強行したりするような国であり、そんな国を「世界の工場」と持ち上げている日本の経営者にも呆れます。

 また、韓国は過去の歴史を捏造したうえでデタラメな判決を下し、日本企業や日本国民に不当な損害を発生させようとするような国であり、そんな国に日本の科学技術の粋を集めたフッ化水素などの重要な戦略物資を輸出するとは、とんでもない話でもあります。

 ただ、国民感情として、あるいは国家の安全保障戦略として、中韓に深入りしすぎるのが良くないという点は納得できるにしても、今すぐ「日中断交」、「日韓断交」といった選択肢を取ることができないのもまた事実です。

 例の『数字でみる「強い」日本経済』の第3章『中国と韓国がなくても日本は大丈夫』などでも報告しましたが、日本の貿易構造を品目別に分解していくと、日本企業が中国や韓国を製造拠点として使用しているという状況がくっきりと浮かび上がって来ます。

 日本から韓国への輸出品目は半導体製造装置などの資本財、フッ化水素などの中間素材に代表される、「モノを作るためのモノ」が非常に多く、また、サプライチェーン面では日韓のつながりは年々強まっている状況にあります。

 また、日中の貿易高については、日本から中国への資本財、中間素材の輸出が多いのもさることながら、最終的に組み立てた製品(スマートフォンやPCなど)の中国からの輸入高が異常に多いというのも大きな問題でしょう。

 要するに、日本は産業のサプライチェーン面で中韓と非常に密接な関係があり、日中関係や日韓関係が破綻すれば、日本にもそれなりのダメージが生じることは間違いないからです。

●補助金などを活用したサプライチェーン再構築

 こうしたなか、当ウェブサイトでは今年4月、「コロナ後」を視野に入れた際に、国を挙げた重要なテーマが「サプライチェーンの再構築」であるとして、次のような議論を提示しました。

「コロナ後」の重要なテーマは製造拠点の中国脱出支援


コロナウィルスの蔓延は、相変わらず予断を許さない状況が続いています。ただ、その一方で、私たちの国・日本は、「コロナ後」を視野に入れ、国を挙げて「サプライチェーンの再構築」について考える必要があります。こうしたなか、政府がまとめている緊急経済対策のなかに、「製造拠点の国内回帰とASEANなどへの分散」が盛り込まれていました。<<…続きを読む>>
―――2020/04/15 08:00付 当ウェブサイトより

 このなかで、当時、政府がまとめていた緊急経済対策に、「製造拠点の国内回帰ないしはASEANなどへの分散」が盛り込まれていた、という話題を紹介しました。もちろん、日本政府は「中韓からの脱出」、と表現したわけではありませんが、「製造拠点の多角化」は明らかにそのような意味合いを持ちます。

 こうしたなか、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に本日、こんな記事が掲載されていました。

中国にある工場、日本・東南アジアに移せ」574億円掲げた安倍政権


日本政府が中国にある自国企業の製造業生産拠点を日本や東南アジアに移す作業にスピードを出している。<<…続きを読む>>
―――2020.07.20 08:12付 中央日報日本語版より

 これは、当ウェブサイトでも以前紹介した、「サプライチェーン再構築にかかる支援・補助」という話題の続報で、まずその第一弾として、マスクやアルコール消毒液などの医療用品製造業者に対して総額574億円の補助金を決定した、というものです。

 また、中央日報記事では、この医療用品以外にも、たとえばハードディスク用部品を製造する電子部品企業などに対してもあわせて100億円以上を支給するなど、「脱中国」に向けた日本政府の支援が続々と決まっていることなどを紹介しています。

●脱中したところで韓国に行くわけではない

 ただし、中央日報の記事などを読んでいて、ふと思ったのは、日本の製造業が「脱中国」を果たしたとしても、その移転先に韓国が含まれている様子はなさそうだ、という論点でしょう。

 もちろん、当ウェブサイトで見逃している論点がある可能性もありますので、「せっかく製造拠点の脱中を果たしたのに、その拠点を韓国に移してしまう」という企業が、もしかしたら今後、出て来ることもあるのかもしれません。

 しかし、現在見えている流れは、基本的に「中国を脱出」→「国内回帰」または「ASEANなどへの移転」というものが中心です。

 やはり、いきなり事実無根の戦時犯罪を捏造され、合弁会社株式を差し押さえられてしまったりするような国に、好き好んで製造拠点を移すというのは正気の沙汰とは思えません(たんに韓国の人件費が高いという事情もあるのかもしれませんが…)。

 それどころか、かつての「半導体王国」だった日本が、半導体の製造拠点を日本に再び設けようと努力している、という話題もあります。

半導体産業で遅れ取った日本…世界最大手台湾TSMC工場の誘致狙う


日本が世界最大のファウンドリー(半導体委託生産業者)である台湾TSMCの工場を誘致する動きを見せている。<<…続きを読む>>
―――2020.07.20 07:37付 中央日報日本語版より

 これは、同じく中央日報に掲載された記事で、読売新聞の19日付の報道を引用する形で、台湾のTSMCが日本に工場を作る場合に政府資金を支援するなど、半導体の国際連帯に今後数年で1000億円規模を投じる、とした話題です。

 この点、TSMCが日本に工場を作ってくれるかどうかの見通しは不透明ですし、日本から半導体産業が消滅したのは過去の日本企業や日本政府の失策、つまり自業自得という側面もありますが、それだけではありません。

 このあたり、当ウェブサイトでは以前から、韓国が日本との通貨スワップなどを後ろ盾に通貨安誘導を行い、通貨安のもとで輸出主導による産業振興を実施した、などと考えており、こうした問題点については『日韓通貨スワップこそ、日本の半導体産業を潰した犯人』などでも議論しています。

 そういえば、つい先日も『日本産フッ化水素、韓国が全世界にばら撒いていた?』のなかで、「韓国が輸出管理上の『(旧)ホワイト国』などの優遇措置を悪用し、日本産のフッ化水素を大量に輸入し、第三国に横流ししていたのではないか」とする仮説を提示しました。

 しかし、そもそも韓国の半導体産業を潰してしまえば、フッ化水素などの戦略物資を韓国に輸出する必要自体がなくなりますので、こうしたニュースが出て来ること自体は歓迎したいと思います。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

なお、韓国に対する輸出管理について、もうひとつ紹介した論点が出てきましたので、それについてものちほどショートメモ形式で紹介したいと思う次第です。


「新宿会計士の政治経済評論」より転載
https://shinjukuacc.com/20200720-03/

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