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「徴用工は韓国政府が補償すべき」の真意をどう読むか

 `なにやら嫌な予感がします。自称元徴用工判決問題を巡って、当ウェブサイトではこれまで、①韓国が国際法を守る、②日本が原理原則を捻じ曲げる、③双方ともに譲らず日韓関係が破綻する、という3つの落としどころがあると申し上げて来たのですが、本日、韓国側から①の主張が出てきました。個人的な記憶では韓国人がこんな主張をするのは本当に珍しいことだと思いますが、もし韓国が本当に①の道を選択したのだとすれば、それはそれで厄介です。


●中央日報「強制徴用事態、韓国政府が決断を」

 いったいどういう風の吹き回しでしょうか。

 自称元徴用工判決を巡る日本企業の資産売却を巡り、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に、こんな主張が掲載されていました。

【時論】韓国大法院強制徴用判決の現金化事態、政府が決断を


韓国大法院(最高裁)は2018年10月、日帝強制徴用被害者勝訴の判決を下した。<<…続きを読む>>
―――2020.07.14 08:16付 中央日報日本語版より

 末尾に「イム・ハンテク/韓国外国語大招へい教授・元外交部条約局長」とあります(漢字はわかりません)が、この人物は、「韓国政府が勇断を下し、『強制徴用被害者』(※自称元徴用工のこと)に対する救済をわれわれ自らが履行」するという選択肢を検討しなければならない、と述べているのです。

 正直、自称元徴用工問題を2年近く追いかけている身としては、この文章を読んで、驚きました。まさか韓国側でこういう正論が出て来るとは、あまり思っていなかったからです。

 もちろん、この人物の主張はまどろっこしくて、肝心の本題をなかなか切り出しません。前半では、「▼自称元徴用工問題の経緯、▼日本企業に対する在韓資産の差押申請が約10件に達すること、▼早ければ8月4日にも現金化が断行されれば日本が報復するかもしれないこと」…などに言及。

 そのうえで日本企業などが基金に資金を出す、韓国政府などが立て替えて賠償を払い、あとで日本企業に請求する方案など、さまざまな選択肢が検討されている、などとしているのですが、本論と無関係な内容をつらつら述べるのは、韓国国内で正論を述べるのがいかに難しいかという証拠でしょう。

●自称元徴用工問題の落としどころ

 この点、いつも申し上げているとおり、自称元徴用工問題「だけ」を見ていると、基本的に落としどころは3つしかあり得ません。

■自称元徴用工問題の3つの落としどころ


①韓国が国際法や約束をきちんと守る方向に舵を切ることで、日韓関係の破綻を避ける
②日本が原理原則を捻じ曲げ、韓国に対して譲歩することで、日韓関係の破綻を避ける
③韓国が国際法を破り続け、日本が原理原則を貫き続けることで、日韓関係が破綻する

 そして、韓国が自称元徴用工問題に関連し、日本に対して一貫して熱望しているのは、あきらかに②の選択肢でしょう。

 韓国側で検討されている、「日本企業が自発的に賠償に応じる」、「日本企業が基金に資金を出す」、「韓国政府が自称元徴用工に賠償して日本企業にあらためて損害賠償請求する」、といった方策は、すべて韓国が日本側に②の行動を期待している証拠です。

 実際、いわゆる(従軍)慰安婦問題を筆頭とする、韓国が捏造して来たさまざまな「歴史問題」は、いずれも②の落としどころで解決が図られました。つまり、日本政府が非を認めて自称元慰安婦らに謝罪したのです。

 韓国側が、これに味を占めるのは当たり前のことです。

●韓国を責めるべきではない

 誤解しないでいただきたいのですが、当ウェブサイトとしては、韓国の行動を日本的な価値観に照らして「悪いことだ」と責めるのは間違っている、と考えています。

 以前の『「韓国とは交渉するな、叩き潰せ」=慰安婦問題の教え』で報告しましたが、人間の血を吸おうとする蚊と「血を吸わないで」と交渉する人はいません。なぜなら、蚊というものは、人間の血を吸おうとするものだからです。

 それだけではありません。日本政府がやったことは、「さぁ、血を吸ってください」とばかりに、わざわざ蚊に腕を差し出すような行為だったのです。蚊は血を吸って満足するはずがありません。腕を差し出したままだと、新たな蚊が血を吸いに来るのは当然の話です。

 その意味で、当ウェブサイトとしては、自称元徴用工問題自体、日本がみずから招いた問題でもあると考えています。

 当然、最大の責任があるのは慰安婦問題を巡るハンドリングを間違えた宮澤喜一、河野洋平らの政治家、一部の反日野党、反日捏造新聞、反日政党、反日団体らですが、そうした政治家に票を入れ、そうした新聞にカネを払ってきた私たち一般の有権者・消費者にも間接的な責任はあります。

 だからこそ、自称元徴用工問題で②の解決策を図ってはならないのは当然過ぎる話なのです。

 つまり、自称元徴用工問題は、いままでどおり日本が韓国という「蚊」に血を吸われるのに甘んじるか、それとも血を吸われないようにするか、という戦いなのであり、純粋な日本国内の問題でもあります。

というよりも、通常であれば、蚊に血を吸われたならば、何も言わずにその蚊を叩き潰すでしょう。

 一方、これを「蚊」である韓国の側から見るならば、「日本が腕を差し出している」ならばそれを吸いに行けば良いという話であり、日本が腕をしまったうえで自国を叩き潰そうというそぶりを見せるのであれば、諦めて他人の腕を吸いに行くのでしょう(そんな都合がよい国があるのかどうかはしりませんが…)。

したがって、自称元徴用工問題を巡って、韓国を責めてはなりません。私たちが今すぐやるべきは、韓国に無用な譲歩をすることでもなければ、韓国を「悪い国だ」と責めるのでもありません。私たち日本自身が、「今すぐ蚊を叩き潰せるような国」になることです。

●恥も外聞もなくひっこめる国

 さて、今回の中央日報の記事、自称元徴用工問題を巡って韓国側で出てきた「自力救済」の非常に珍しい事例だと思います。あくまでも個人的な記憶ベースですが、おそらくこの手の主張が韓国側から出て来たのは初めてではないでしょうか。さすが元外交官だけあります。

 ただし、個人的に深く危惧しているのは、先ほどの「3つの落としどころ」でいう①、つまり「韓国が国際法や約束をきちんと守る方向に舵を切ることで、日韓関係の破綻を避ける」という道を韓国が選択した場合、現在のような日韓関係がさらに続く、という点です。

 この点、『韓国の「GSOMIA瀬戸際外交」は日本の勝利だが…』でも述べましたが、韓国や北朝鮮が大好きな瀬戸際外交、本当に恐ろしいのは、彼らが本当に「越えてはならない一線」の直前で引き返せる、という点にあります。

 私たち日本人からすれば、「自分からGSOMIA破棄を言い出し、振り上げた拳を下ろせなくなっているに違いない」と思っていましたが、それは私たちの勘違いです。韓国という国は、「本当にそれをやったら自分たちの身が滅びる」とわかっているときには、恥も外聞もなく、ギリギリでそれを引っ込めるのです。

 このあたり、北朝鮮とそっくりですね。

 だからこそ、もし韓国が①の選択を取った場合には、私たちの国・日本にとっては、まだまだ厄介なもめごとが隣国と当面続く、ということでもあります。自称元徴用工問題ではなく、おそらく歴史問題などに関連し、なにか別の問題を捏造してくるはずだからです。

●日本が実直すぎるという問題

 このように考えていくならば、やはり「そもそもの問題」にぶち当たります。日本は実直すぎるのです。

 当ウェブサイトとしては、これまで自称元徴用工判決には大きく(1)国際法違反、(2)そもそも問題自体がウソ、捏造のたぐいである、という2つの問題点があると考えており、また、日本政府もこのうち(1)の部分を巡って、当初から一貫して韓国に国際法違反状態の解消を求めています。

■自称元徴用工判決の何が問題なのか


(1)日韓間の過去のすべての問題は1965年の日韓請求権協定において法的に完全に決着が付いており、自称元徴用工判決自体、国際法に違反している。
(2)そもそも自称元徴用工問題や慰安婦問題を含めた「歴史問題」自体、その多くが韓国(や悪意を持った日本人)によるウソ、捏造のたぐいである。

 ただし、日本政府が(1)の問題点について韓国に抗議していることは事実ですが、そもそもの(2)の部分については、これまで毅然と反論して来ませんでした。だからこそ、韓国も「据え膳喰わぬは国の恥」とばかりに、次から次へと歴史問題を捏造して来るのです。

 そういえば、日本は1941年、「ハルノート」を米国からの最後通牒とみなし、真珠湾攻撃・対米開戦に踏み切ったとされますが(※このあたりは諸説あるようです)、これも個人的には「実直すぎるがために生じた悲劇」ではないかと感じる次第です。

 だからこそ、今後の日本が「とりあえず蚊に血を吸われなくなる」ことはとても大事ではありますが、それだけでは足りないのです。それこそ中国に倣って、「何も言わずに叩いて躾ける」という、一見野蛮な行動についても、日本はもう少し学習した方が良いのかもしれません。

 いずれにせよ、当ウェブサイトとしてはこの自称元徴用工問題を巡り、「韓国が国際法を守る方向に舵を切る」、ということが、裏の最大のリスクだと考えているのです。


「新宿会計士の政治経済評論」より転載
https://shinjukuacc.com/20200714-03/

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