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韓国次官が日本の輸出「規制」批判、困っている証拠?

 以前、『鈴置論考が解く、韓国が「輸出規制撤回」を求める理由』で、日本政府が講じた輸出管理適正化措置を韓国政府が「不当な輸出『規制』だ」などと言いがかりをつけてその撤回を迫って来ている理由を、彼らの歪んだ先進国意識と関連付けて解説したのですが、これに加えてもうひとつ、興味深い話題がありました。韓国の輸出管理を担当している官庁である産業通商資源部の次官が、日本の措置を「輸出『規制』」と断じて批判する記事を、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に発見したのです。


●ステレオタイプの輸出「規制」論

 いつも申し上げているとおり、日本政府が昨年7月に発表した対韓輸出管理の厳格化・適正化措置を巡って、韓国メディアから出てくる議論は、だいたいいつも同じパターンです。というのも、たいていの記事には、次の①~④の要素が含まれているからです。

■韓国政府・メディアの輸出「規制」論


①日本の対韓輸出「規制」措置は強制徴用問題に対する報復である
②韓国は順調に「脱日本化」を進めているため、日本の輸出「規制」では困っていない
③日本の輸出「規制」はノージャパン運動を通じむしろ日本に打撃を与えている
④韓日両国はお互いを必要としているので、日本は速やかに輸出『規制』を撤回すべきだ

(※「強制徴用問題」とは自称元徴用工問題のこと。)

 正直、レベルが低すぎてお話になりません。

 当ウェブサイトの主観的意見を交えつつ、状況を説明するならば、『対日WTO提訴が韓国経済の終焉を意味するとしたら…』などで詳説したとおり、日本政府がこの措置を講じた理由は、韓国経由で一部物資が軍事転用される事例が発生したからです。

 また、『「韓国とは交渉するな、叩き潰せ」=慰安婦問題の教え』でも申し上げたとおり、対韓輸出管理適正化措置は自称元徴用工問題に対する報復措置ではありません(というよりも、日本政府としては自称元徴用工問題に対する報復措置をまだ一切発動していません)。

 それなのに、韓国政府や韓国メディア(あるいは一部の日本の極左メディア、あるいはごく一部の自称保守派論客)は、くどいほど、これらの措置が自称元徴用工問題に対する日本政府としての「意趣返し」のようなものだ、と述べ続けているのです。

●中央日報に「量産型記事」…?

 ここまでが議論の前提条件ですが、こうしたなか、本日紹介してみたいのは、次の記事です。

【コラム】日本の輸出規制と新型コロナ…答えは強い素材・部品・装備


新型コロナウイルス感染症で「コロナ」は王冠のように出たウイルスの突起の形のために付いた。コロナは放電現象をいう電気・電子用語でもある。コロナ放電と新型コロナは「流れが途切れる現象」という共通点がある。<<…続きを読む>>
―――2020.07.06 07:49付 中央日報日本語版より

 冒頭の文章が無駄に文学的であることを除けば、肝心の記事の中身はスッカスカで、だいたい先ほど示した①~④の要素がちりばめられているだけのものであり、正直、大したことは書かれていません。

 「昨年7月に日本が半導体・ディスプレーの核心素材3品目の輸出を規制した」、「しかし結果的に3品目のうち1品目も需給に支障がなかった」、「国内技術で生産を拡大するなど確実な変化が表れている」、といった、いつもの「量産型記事」です。

「フッ化水素はSKマテリアルズが5ナイン級(99.999%)の量産に成功した。」

 とありますが、以前の『【補遺】韓国で国産化したフッ化水素は5Nに過ぎない』などでも議論したとおり、韓国が量産体制を作ったとかいう「高純度フッ化水素」は、日本製の「12N」と比べて、不純物の濃度は実に1000万倍(!)です。

 論旨その他、お粗末というほかありません。

●なんと、産業通商資源部次官が執筆した記事だった!

 ただ、この記事に注目した理由は、その執筆者です。記事の末尾には「鄭升一(チョン・スンイル)/産業通商資源部次官」とあります。

 この鄭升一(てい・しょういち)氏なる人物、驚くべきことに、「産業通商資源部次官」というお立場でありながら、日本政府が昨年講じた輸出管理適正化措置のことを、堂々と「輸出『規制』」と捻じ曲げて発信しているのです。
 日本の経済産業省のカウンターパートであり、かつ、韓国側で輸出管理を管轄している官庁であるはずの産業通商資源部の関係者が、日本政府が昨年講じた措置が「輸出『規制』」ではないことなど、知らないはずがありません。

 というよりも、韓国政府が日本の対韓輸出管理適正化措置を「輸出『規制』」だと言い張っているのは、やはり何らかの意図があると感じざるを得ないのです。

 その「何らかの意図」とは、ずばり、先ほどの①~④のような考え方を繰り返すことで、「韓国はまったく困っていない」、「困っているのは日本の方」、「だから日本は輸出『規制』を撤回すべき」とする世論を韓国校内(や日本国内)に植え付け、日本の輸出管理適正化措置を「撤回」させることにあるのでしょう。

 対日WTO提訴も、昨年8月の『秘密軍事情報の保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定』(通称「日韓GSOMIA」)破棄騒動も、すべては同じ文脈に位置付けて良いと思います。

 ただ、もう一歩踏み込んで、ではなぜ、韓国が「輸出『規制』」の撤回を求めるのかと考えていくと、なかなか奥が深い韓国社会の「闇」が見えてくるような気がします。

 これについては以前、優れた韓国観察者である鈴置高史氏の論考などを手掛かりに、「韓国国内の先進国意識」が大きく影響している可能性がある、とする考察を掲載させていただきました。

鈴置論考が解く、韓国が「輸出規制撤回」を求める理由


当ウェブサイトでは日本政府が昨年7月1日に発表した対韓輸出管理適正化措置について、いくどとなく取り上げて来ました。というのも、韓国政府側がこの輸出管理適正化措置を「輸出『規制』だ」、「貿易報復だ」、などと事実と異なる批判を加えたうえで、この措置の白紙撤回をしつこく求めて来ているからです。ただ、冷静に考えてみたら、「なぜ韓国が(実害もないにもかかわらず)執拗にこの措置の撤回を求めて来るのか」については、これまで突っ込んだ考察をほとんど加えて来ませんでした。<<…続きを読む>>
―――2020/05/20 05:00付 当ウェブサイトより

 実際、鈴置氏が指摘する「先進国意識」という概念を使えば、輸出管理適正化のみならず、さまざまな現象をクリアに説明することが可能となります。

 たとえば、共同通信が「日本が韓国のG7参加に反対した。韓国の反発は必至だ」と報じたところ、共同通信のマッチポンプ報道に答えて韓国政府高官が「日本は破廉恥水準が全世界最上位圏」などと口汚く罵ってきたのも、明らかにこうした歪んだ先進国意識がもたらしたものでしょう。

 (どうでも良いですが、政府高官が「日本は破廉恥水準が世界最上位」などと北朝鮮政府のような暴言を吐くような国が「先進国」を騙るのも興味深い現象ですね。)

●理由は「本当に困っている」から?

 ただ、今回の輸出管理適正化措置に関しては、やはり理由はそれだけではないと思います。憶測を交えて申し上げるなら、ずばり、韓国が「日本の輸出管理強化」によって、「本当に困っている」からではないでしょうか。

 もちろん、ここで「本当に困っている」というのは、「日本産のフッ化水素などを第三国に横流しすることができなくなって困っている」、という意味です。

 もっとも、この点についてはきちんとした証拠がないため、「そうに違いない」と断定するのはやや踏み込み過ぎです。ただし、韓国政府の異常な反応の数々を見るにつけ、「可能性のひとつ」として疑っておく価値はありそうです。

 すなわち、この仮説が正しければ、韓国政府としては「本当のこと」、つまり「日本産の製品をイランなどに横流ししようと思っているのに、日本が輸出管理を強化してしまったからそれができなくなったから困っている」、という「ホンネ」が言えない、ということです。

 だからこそ、無関係な自称元徴用工問題を持ち出して、「不当な輸出『規制』だ」というストーリーを捏造し、それを政府、メディアが一体となって全世界に向けて喧伝している、というのが現在の韓国の姿なのだとしたら、じつにすっきりと現状を説明することができてしまうのです。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 もっとも、ここに挙げた仮説が正しいかどうかは、よくわかりませんし、もしそれが正しいとしても、私たち一般国民がそれを検証することは非常に困難です。というのも、北朝鮮やイランの核開発などと事案が関わっていて、今後、シャレにならないほどの大事件に発展する可能性もあるからです。

 輸出管理適正化措置発表から1年が経過するにも関わらず、日本政府が「不適切な事例」について明らかにしていないのは、高度な軍事機密と関連している可能性を強く示唆しているのです。

 もっとも、当ウェブサイトのこの仮説が正しいのかどうかについて、個人的には、もしかしたら今年11月の米大統領選までに明らかになるのではないか、とも期待しているのですが、はたしてどうでしょうか。気になるところです。


「新宿会計士の政治経済評論」より転載
https://shinjukuacc.com/20200706-03/

*アイキャッチ画像はWikipediaより引用

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