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北の多面的な意図に翻弄される韓国

韓国紙セゲイルボ

現政府を選んだ国民は「哀れ」

 北朝鮮が大韓民国を弄んでいる。連日、超強硬対南誹謗(ひぼう)と挑発を行ってきたが、結局、開城の南北共同連絡事務所を爆破した。口実は脱北者団体の対北ビラ散布だが、これは言い訳にすぎない。

 北の対南脅迫は70年余りの間、別段変わっていない。言葉だけの平和の戯(ざ)れ言がどれくらい空(むな)しいか悟っただろう。

韓国の脱北者団体「自由北韓運動連合」が22日夜に飛ばしたビラ散布用の大型風船に取り付けられた金正恩朝鮮労働党委員長らを批判する写真(同団体提供・時事)

韓国の脱北者団体「自由北韓運動連合」が22日夜に飛ばしたビラ散布用の大型風船に取り付けられた金正恩朝鮮労働党委員長らを批判する写真(同団体提供・時事)

 北朝鮮が強硬に出てくる理由は明白だ。それだけ切羽詰まっているという話だ。体制矛盾に国際社会の経済制裁、中国発の新型コロナ事態で第2の“苦難の行軍”の危機が迫っているのだ。春の端境期に国境閉鎖まで重なり、体制維持の根幹である「平壌の民心」までが動揺している。

 脱北者2人が国会議員に当選したことは北には大きな衝撃だ。どう隠しても伝わってしまう。北朝鮮は全力で脱北ルートと対北ビラを防ごうとしているが無理だ。だからそれなりに礼儀を守るべき“最高指導者の接見者”である南側大統領(文在寅)に向かって品のない卑劣な言葉を浴びせるのだ。

 大統領選挙を控えたトランプ米大統領が朝米交渉を後回しにしているのも北朝鮮としては不服だろう。文大統領がいくら歓心を買おうとしても、北は関心の外だ。米国が動かなければ南北関係は一歩も前に進まないことを知っているためだ。それで今回、何の罪もない建物を爆破した。

 3月初めミサイル試験発射現場で倒れた後、死亡説が出回った金正恩の健康異常と後継者特訓中の金与正を浮上させることも、無謀な挑発をした一原因だ。

 女性で軍隊経験がなく、まだ階級も与えられていない金与正に人民軍統帥権を与えようとすれば実績が必要だ。どんな形であれ軍事挑発が起こるだろう。

 しかし盲目的に北に追従する勢力は「ウリ民族同士」という嘘(うそ)に惑わされて相変わらず北をかばっている。北の挑発を“新北風”と解釈する向きもある。与党が大勝した総選挙直後に明るみに出た不正選挙疑惑と死亡事件まで起こった尹美香スキャンダルが新北風に埋没している。

 守勢に追い込まれた与党の援護以外にも、勢いが弱まった慰安婦問題を煽(あお)って韓日離間策を持続させることは、反日フレームで利益を得た北・南政権としては利害関係が一致する。

 このように北側の意図は多面的だ。加えて、すでに北朝鮮が望む通りに行動する韓国政府を手なずけて、連邦制改憲による韓国吸収という至上課題を実現しようとする悪だくみもうかがえる。

 脱北者はパンと自由を求め命懸けでこの地にやってきた国民だ。今も独裁に苦しむ家族と北の同胞に自由と解放の味を伝えるために闘争する人権戦士だ。彼らを現行犯で逮捕すると脅した彼らは、どこの惑星の人だろうか。

 暗鬱(あんうつ)だった70、80年代に、海外で韓国の民主化・人権運動を闘った在外韓国人や外国人の行動をどう評価するのか。遠い歴史どころか当代に自分が体験したことすら忘却して、北の訓戒に躍って自国民を脅かす彼らを善良と信じて選んだ国民が哀れだ。

(趙貞鎭論説委員兼統一研究委員、6月18日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

ポイント解説

「目覚めよ」という檄を聞きたい

 まともな論説を目にした。一連の北朝鮮の挑発で南北融和が連絡事務所とともに吹き飛び、「偽りの平和」が幻想だったことが明らかになりながらも、韓国政府は自国民の自由への戦い(北批判ビラ)を規制している。こんなおかしなことがあるか、と当然の叫びを上げる韓国メディアが意外にも少ないのだ。

 かつて軍事政権の時、海外に逃走しながら民主化闘争をしてきた人やその同世代が“闘争の甲斐(かい)あって”今は自分らが政権を握った。ところが今度は“弾圧”する側に回っているが、これをどう思うのだという糾弾はしごくもっともである。

 文政権の従北姿勢を見ると、「どこまでもついて行きます下駄の雪」の都々逸の節を想起する。しかしことは色恋ではなく「イデオロギー」の話だ。国の命運と将来が左右されるにもかかわらず、まったく批判には耳を傾けず、自国民よりも「北ファースト」姿勢を貫く。

 こんな政権を選んだ国民が「哀れだ」と趙論説委員はいうが、ここまで露骨で明白な北贔屓(ひいき)を許しているのは韓国民であり、それがもたらす結果は「自業自得」としか言いようがない。

 ところが結果の影響はひとり韓国のみが受けるのではなく、わが国はじめ東アジア全体に及ぶから厄介だ。哀れに思うのではなく「韓国よ、目覚めよ」という檄こそ聞きたい。

(岩崎 哲)

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