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今こそ“偽の平和”と決別する時だ

韓国紙セゲイルボ

以前と同じではない北の民心

 20年前、南北首脳会談取材のために北朝鮮平壌の地を踏んだ時は、変わるものと思った。金大中大統領と金正日総書記が署名した6・15南北共同宣言が発表された時、“統一へ行く道”が開かれるものと思った。

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の特使として訪韓し、文在寅大統領(左)と会談する金与正党第1副部長(右)=2018年2月、ソウル(AFP時事)

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の特使として訪韓し、文在寅大統領(左)と会談する金与正党第1副部長(右)=2018年2月、ソウル(AFP時事)

 その後、金剛山観光、開城工業団地のような新しい事業が始まったが、北朝鮮の核・ミサイル開発もまた続いた。「核一粒持つ理由がない」という金正日の言葉は虚言だった。

 初めての南北首脳会談が金正日の招請で実現したように、当時の状況を主導したのは彼らだ。交渉に関与した与党関係者らは語る。「やはり北朝鮮は最高指導者の一言ですべてのことが解決される」と。金正日のご機嫌をうかがおうと努めた彼らは、今度は金正恩の立場を理解しようと心を砕く。今は金与正だ。

 丁世鉉民主平統(民主平和統一諮問会議)首席副議長は南北共同宣言20周年記念行事で、「金与正が一種のリーダーシップを確保していく過程で、南側叩(たた)きを始めた」と述べた。だからそれに拍子を合わせるべきだというのか。

 与党単独で国会法制司法委を掌握し、対北非難ビラ禁止を1号法案として推進すると公言したのに、北から返ってきたのは南北共同連絡事務所の爆破であった。大統領府と政府・与党が韓半島平和時代を開いたと自画自賛した板門店宣言の象徴だ。平和が片方の善意のように見なされる時、どれほど脆弱(ぜいじゃく)になるかはっきり見せつけた。

 追加の軍事行動まで予告している北朝鮮が、韓半島の緊張をどの程度まで高めるか分からない。大統領府は16日、国家安全保障会議(NSC)を開いて北に強力な対応を警告した。金正恩兄弟姉妹の誤った判断を防ぐためにも挑発には直ちに応戦しなければならない。

 われわれが平和を通じて守ろうとするものは明らかだ。自由民主主義体制だ。憲法上、言論・出版・集会・結社の自由が保障された大韓民国で対北誹謗(ひぼう)を防ぐのは不可能だ。

 それでも金与正談話後、政府与党は対北ビラ散布を法で禁止する方向へ一瀉千里に走った。法で規制するという発想も、推進する方式も非憲法的・非民主的だ。今になってビラ禁止法を作っても平和は来ないし“金正恩の尊厳”も守られない。国民の基本権を傷つけて大韓民国の品格を落とすだけだ。

 4代世襲まで狙う北朝鮮権力が願うのは体制保障だ。米トランプ政府が何もなく保障することは絶対ない。今までは北朝鮮の体制は住民の犠牲によって維持されてきた。数十年間容認されてきた対北ビラに金与正まで乗り出して暴言を浴びせ、武力行動をしでかすのを見れば、北の民心も以前と同じではないだろう。

 経済状況を良くしようとするなら、まず核を放棄すべきだ。そのつもりがない金正恩兄妹はくみしやすい文政府だけ揺さぶる。核を抱えている限り“本当の平和”は来ない。

(黄政美編集人、6月17日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

ポイント解説

袖にされてもついて行く

 南北共同宣言20周年を機に、膠着(こうちゃく)状態に陥っている南北関係を動かそうと、文在寅韓国大統領は「南北で道を見いだそう」と呼び掛けた。これに対する答えが連絡事務所の爆破である。だが、韓国政府は別段驚いている様子はない。「予告していたし」(金錬鉄統一部長官)という始末だ。

 南北協力のもう一つの象徴、金剛山にも北は軍を配備するという。“平和の象徴”を北はことごとく拒否と対決に変えようとしている。これにも韓国政府は「強力な対応を確認した」だけで、むしろ南から飛ばす批判ビラを、金与正氏の一言で法規制して「北に迷惑をかけまい」と腐心している。

 黄政美編集人はそろそろ「偽の平和」と決別しようと提案した。だが文政府には無理な注文であることは黄編集人もよく分かっていることだろう。何度北に袖にされ、足蹴にされても、ついて行きます、というのが文政府だからだ。

 むしろ文政府の落ち着きぶりを見ていると、この騒動の裏には北の権力変化、南のスキャンダル逸らしがあるのではないかと思えてくる。心臓手術の話があった金正恩氏に代わって与正氏が表に出てきたとも解釈されるのと、南では慰安婦問題で批判の矢面に立っている尹美香氏の援護射撃だ。爆破という派手なパフォーマンスで関心を引き付け、スキャンダルから目を逸らさせ、忘れさせる。いわゆる爆風消火だ。

 ともあれ「何が何でも北朝鮮」の文政府がいる限り、北に対して「強力な対応」が発動されることはないだろう。

(岩崎 哲)

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