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敵視する国と通貨スワップが必要だと言われましても…

 先ほどの『2008年の金融危機時、韓国はわざと通貨安誘導か?』を執筆するためにさまざまな報道を調べていたところ、偶然、いくつかの記事を発見しました。結論からいえば、主要政党が日本を敵視しつつ、経済界からは「日本とのスワップが必要だ」、などとする主張が出てくる状況は、どうも理解に苦しみます。ただ、私たち日本としては、厄介な相手とは必要以上に深く関わらず、参考にすべきは淡々と参考にし、あとは国際社会でお付き合いする、というくらいでちょうど良いのではないかと思います。

●理解に苦しむ朝鮮日報の記事

 あくまでも一般論ですが、人間関係でも外交関係でも、厄介な相手がいたとしたら、
 

①必要以上に関わらない
②協力しなければならないときには必ず国際社会(第三者)を巻き込む
③失敗事例を研究対象にする

といったお付き合いが基本形ではないかと思う次第です。

 こうしたなか、隣国からはいろいろと理解に苦しむ記事が出て来ていますが、そのなかでもとくに気になった記事が2本あります。1本目は、韓国メディア『朝鮮日報』(日本語版)に掲載された、次の記事です。

4・15韓国総選挙、とにもかくにも韓日戦(2020/04/06 11:20付 朝鮮日報日本語版より)


 末尾には「ウォン・ソヌ記者」という署名がありますが、これは今月15日に実施される予定の総選挙に向けて、韓国国内で「日韓戦」になぞらえる動きが相次いでいる、とする話題です。

 今回の選挙では、文在寅(ぶん・ざいいん)大統領の出身母体でもある左派の与党「ともに民主党」と、保守系の最大野党「未来統合党」が激突する格好ですが、朝鮮日報によると、この両党がお互いを日本になぞらえて批判しているのだとか。すなわち、

・「ともに民主党」側は「未来統合党」を「土着倭寇」「親日勢力」と批判している
・「未来統合党」側は「ともに民主党」を文禄・慶長の役における無能な朝鮮国王になぞらえている

という状況なのだそうです。なんだか頭が痛くなりますね。

 朝鮮日報によると、「ともに民主党」側は各候補の選挙陣営に配布した遊説マニュアルのなかで、

「国民たちは今回の選挙を『韓日戦』と呼んでいる。日本政府には屈従的だが、韓国政府を非難することにばかりきゅうきゅうとしている未来統合党に審判を下してほしい」

との内容を盛り込む一方、「未来統合党」側も候補者のひとりが今回の「新型コロナウィルス」(※武漢コロナウイルスSARS-CoV-2のこと)の蔓延局面を巡り、豊臣秀吉の朝鮮侵攻時の無能だった朝鮮国王・「宣祖」(せんそ)に例えて

「今回の新型コロナウイルス問題はいろいろな点で壬辰倭乱を連想させる/宣祖は事前に戦争を防ぐことができのたにもかかわらず、無能で全国民を戦争の惨禍に陥れた」

と批判しているのだそうです。自国の選挙戦で、どうして有力陣営が、まったく関係のない外国を競うように敵視するのか。呆れて物も言えません。

 ただ、日本国内には「文在寅氏のような極端な親北派・左派が政治力を失い、保守系の政党が力を持てば、日本との関係が改善するに違いない」、といった妙な期待感を抱いている人が一定する存在するフシがありますが、こうした考え方は甘いと言わざるを得ないでしょう。

 保守派であろうが左派であろうが、追い込まれた際にはいずれも日本を敵視するというのが、現在の韓国社会の「お約束」のようなものなのでしょう。したがって、どちらの勢力が勝っても、韓国社会が反日であるという事実は変わりません。

 皮肉な話ですが、下手に「親日」の皮を被った(しかし現実には反日的な)勢力が勝って「韓日関係改善」に踏み出すよりも、露骨な反日・反米・親北勢力である文在寅氏の勢力が勝利を収めてくれた方が、むしろ日本にとっては都合が良いのかもしれません。

●韓日スワップ?そんな邪悪なものはいけません!

 本日紹介したい記事の2本目は、これです。

韓国全経連「日本など基軸・準基軸通貨国と4月中にスワップ締結すべき」(2020.04.06 10:04付 中央日報日本語版より)


 この記事については、当ウェブサイトではすでに先ほどの『2008年の金融危機時、韓国はわざと通貨安誘導か?』でも取り上げたのですが、もう一度触れておきます。

 この記事は、「韓国全国経済人連合会」が5日、武漢ウィルスの蔓延に伴う世界的な経済危機打開に向け、防疫・通商分野10件の課題を取りまとめ、政府に緊急建議すると述べた、という話題です。

 ただ、この「10件の課題」のなかには、「通貨スワップ契約締結国と地域を日本、欧州連合、英国などに拡大する」といった、きわめてご都合主義的なものが含まれているのです。これについて中央日報は次のように述べます。

 「特に通貨スワップ分野では韓国は米国と6カ月、600億ドル規模の通貨スワップを締結したが、ドル需要急増に対応するため基軸通貨国と通貨スワップを締結し長期的に日本水準に通貨スワップを拡大すべきと強調した。欧州連合(EU)、日本、英国など基軸通貨・準基軸通貨国と4月中に通貨スワップ契約を締結すべきだと主張した。」

 中央日報は、米韓為替スワップのことを「通貨スワップ」と述べるなど、さらりとウソを書いていますが、この点は韓国銀行自身が虚偽の発表をしているからであり(『韓銀、為替スワップを通貨スワップと意図的に誤記か?』等参照)、一概に中央日報の責任とまではいえません。

 しかし、「準基軸通貨国と4月中に通貨スワップを締結せよ」とは、相手国の都合を考えない、じつに思い上がった発想ですね。

 個人的には、韓国がイングランド銀行や欧州中央銀行(ECB)に通貨スワップを依頼する分には勝手にやれば良いと思います(スイスが通貨スワップを結んでくれたくらいですから、もしかしたら英・欧は韓国銀行と通貨スワップや為替スワップを結んでくれるかもしれませんね)。

 しかし、日本が韓国と通貨スワップを結ぶことには、日本側には「メリット」はいっさいありませんし、むしろ日本経済はコロナショックで他国を新たに支援する余裕などないはずでしょう。

●協力するなら淡々と

 こうしたなか、気になる記事が、日本側にもありました。それは、朝日新聞社の牧野愛博編集委員が先日、『現代ビジネス』に投稿した、「なぜ韓国・文在寅政権は『コロナ抑え込み』に健闘できているのか」と題する論考です。

なぜ韓国・文在寅政権は「コロナ抑え込み」に健闘できているのか/日本も参考にできるところがある(2020.04.04付 現代ビジネスより)


 牧野氏は韓国が「コロナ抑え込み」に健闘しているとしたうえで、その要因としては、現在の韓国が北朝鮮と準戦時態勢にあることに加え、ほとんどの男性に軍隊経験があるなど、「有事には慣れている」、という事情があると指摘しています。

 これに加え、韓国では感染者の私生活を「丸裸」にするなどの「情報公開が徹底」していて、ときとして「風評被害」や「人権侵害」を訴える声がないではないものの、感染経路については徹底的に洗い出されるのだそうです。

 この点、そもそも韓国が「コロナの抑え込みに健闘している」のかどうかはともかくとして、「参考にできる部分は参考にする」という姿勢は重要ですし、相手国が誰であっても、成功事例、失敗事例についてきちんと整理・分類・分析し、自国の防疫の役に立てるのは当然の行動です。

 しかし、日本の場合は韓国と異なり徴兵制度はありませんし、欧米などと異なり、罰則を伴った行動規制を課すことも難しいという事情があるため、諸外国の事例を単純に参考にするというのには無理があります(公正のために付言しておきますと、この点については牧野氏も論考中で指摘しています)。

 ただし、牧野氏の論考では末尾にこんな記載がありますが、この点については同意できません。

「しかし、新型コロナウイルス対策で、日韓が競争しても本質的な解決にはならない。国際社会のさまざまな知見を参考にしながら、日韓ともども協力していくべき局面と言えはしないか。」

 さらにいえば、べつに今回の武漢ウィルスが蔓延する局面において、日韓は「争う」という状態にはありません。韓国側が一方的に日本を敵視しているという事情があることは間違いありませんが、少なくとも日本政府は、武漢ウイルス問題で韓国を敵視しているという事実はありません。

 個人的には、「一対一」で韓国を相手にするのではなく、あくまでもG7やG20という国際社会の場と協議すべきだと考えていますし、韓国を特別扱いすべきでも敵視すべきでもありません。多国間の協議の場で、「偶然、韓国が含まれている」というくらいの状態でちょうど良いのではないでしょうか。

 その意味では、先月に掲載した『駐韓公使、「韓国から日韓スワップ要請なし」と明かす』でも報告した、在韓日本大使館の西永知史公使が述べたような、「協力はあくまでも国際社会のルールの中でやりましょう」、という考え方が、いちばんスッキリとするように思えてならないのです。


「新宿会計士の政治経済評論」より転載
https://shinjukuacc.com/20200407-02/

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