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パンデミック時代に不信育てる政治

韓国紙セゲイルボ

極端な保革対立、投票で審判を

 連日の新型コロナウイルス感染拡大と経済不振のニュースはこの世紀的な危機がいつ終わるか分からないという不安を煽(あお)っている。全世界の政治・経済の情勢がコロナ以前と以後に分かれるという言葉が現実味を増している。

文在寅大統領(左)と黄教安代表

2月28日、ソウルで、新型コロナウイルスの感染拡大防止について話し合う韓国の文在寅大統領(左)と最大野党「未来統合党」の黄教安代表(EPA時事)

 あるエコノミストは国ごとに状況は違うが、結局政治のリーダーシップがコロナ政局の勝敗を左右すると書いている。危機克服ビジョンを見せて国民のエネルギーを集約させるのが政治の役割だからである。

 スペイン風邪を扱う「ザ・グレート・インフルエンザ」の著者ジョン・バリーは米紙への寄稿で、信頼に基づいた政治が新型コロナを克服する時間を稼ぐだろうと述べた。問題はそのような政治がまともに作動せず、被害をそっくり国民が抱え込んでいる現実だ。

 韓国で今回のコロナ事態の最大の受益者は与党の政治家だ。総選挙用の衛星政党をつくった歴史的な小細工がコロナ報道の中に埋もれている。「良心も廉恥もない」と批判した比例衛星政党をつくり、次々に気に入らない勢力を捨てて、親曺国勢力と手を結んだ。

 不動産投機問題で与党公認漏れの金宜謙元大統領府報道官と、曺国氏子弟の入試不正関連疑惑で起訴された崔康旭元大統領府秘書官は“民主党と兄弟”という「開かれた民主党」の比例代表候補になった。未曾有の危機というコロナ旋風の中で、自党の利益のために名分、価値、信頼を捨て去った共に民主党の覇権政治に失望を禁じない。

 「自分の利益を捨てて、公共の利益を求めるのが政治ではないか」。昨年末の国会本会議場でこのように叫んだ民主党の金鍾民議員は与党首脳部の会合で、「(比例政党の)名分はつくればいい」と言い放ったというが、恥ずかしいとも思っていない。選挙法改正の際に、アルバニア、レソト、ベネズエラの例を挙げて、連動型比例代表制の失敗を警告した韓国党の庚敏鳳議員は「国民の不信だけを育てるだろう」と言ったが、まさにそうなった。

 「国民は知らなくてもかまわない」(沈相ジョン・左派の正義党代表)という連動型比例制は21代国会で消えるだろうが、小細工政治の結果は極端な保革両陣営の対決として残るだろう。“曺国党”議員誕生の可能性がこれを予告する。統制不能のファンダム政治(情熱的なファンによる政治)がはびこるに違いない。

 心配なのは極端な政治のバランスを取らなければならない中道層の退潮だ。有権者の約30%を占める中道層が政治に嫌気がさして背を向ければ、保革対立の政治はさらに猛威を振るい、政治不信は深刻になるという悪循環が繰り返される。

 それでも韓国の民主主義がここまできたのは共同体の利益を優先した有権者のおかげだ。怒りと冷笑を向ける代わりに、投票で傲慢な政治を審判するしかない。たとえ最善でなく次悪を選択してでも。

(黄政美編集人、3月25日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

ポイント解説

「投票」で鉄槌が下されるか

 韓国では4月に行われる総選挙後に与党が単独で多数を構成するのが難しい場合、“兄弟”政党と連合を組んで、多数派を確保しようという動きが出ている。いまの与党が「共に民主党」であり、兄弟党が紛らわしいが「開かれた民主党」である。

 だが、この「開かれた-」の候補者は与党の公認を得られなかったり、与党を離れたりしたものの、もともとの主義主張は変わらない。別途戦わせて、勝ちあがってくれば、数合わせのために引き入れる、とは、なんとも都合のいい話である。

 政治家に都合のいい話とは有権者を愚弄するもの、というのは古今東西、共通しており、その欺瞞(ぎまん)を有権者が見抜き、投票で鉄槌を下すべきだと、ベテラン政治記者・黄政美編集人は訴えるのだ。

 与党には「岩盤支持層」があると以前に紹介したが、彼らが自らのリソースを有効に使い、選挙戦術を駆使して、自身に都合のいい連動型比例代表制で多数を確保しようとしている。

 その岩盤支持層にひびが入ってはいるものの、与党を敗北に追い込むには野党の奮起が不可欠だ。ところが、保守野党が取り込むべき「中道層」がこの政治劇に嫌気がさして、政治不信を深めており、野党が票を取れるとは限らない。

 こんな党利党略で新型コロナウイルスや経済不振を乗り越えられるのか、嵐の渦中にあっても「党争」に奔走する体質はそうそう変わるものではない。

(岩崎 哲)

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