«
»

なぜ韓国は突然「G20スワップ」と言い出したのか?

 日韓スワップ, 時事, 韓国崩壊
ここ数日、韓国ウォンの下落傾向が続くなか、韓国国内では危機感を持つ人が増えてきたためでしょうか。先ほどの『韓経も日韓スワップ待望論の一方、副首相が軽率な発言』の「続報」でしょうか、またしても通貨スワップ論が出て来たようです。ただ、メインは「米韓為替スワップ」と「日韓通貨スワップ」ですが、その一方、最近突然出てきた主張のひとつが、「G20との通貨スワップ」という構想です。こんなもの、締結してもまともに機能しないことは明らかですが、重要なポイントは、「なぜ韓国が急にG20スワップと言い出したのか」、ではないでしょうか。


●韓国の学者が「外準8000億ドル」「日韓・米韓スワップ」
 昨日の『KRW売られる一方で朝鮮日報は「米日とスワップを」』『韓国メディアがまた「G20と通貨スワップ締結を」』などでも取り上げたとおり、ここ数日、韓国メディアからはやたらと「通貨スワップ必要論」が出てきます。

 本日も「通貨危機の再発防止に向けて米韓通貨スワップや外貨準備高拡大が必要だ」とする記事が、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に掲載されています。

韓国、新型肺炎で通貨危機の懸念拡大…「韓米・韓日通貨スワップ締結が最も重要」(2020.03.18 10:43付 中央日報日本語版より)


 中央日報によると、「論文」を発表したのは世宗(せそう)大学校経営学部の「キム・デジョン」教授(※漢字がわからないので、表記は記事原文どおりです)という人物で、例の「新型肺炎」(COVID-19、あるいは武漢肺炎)の問題を受け、次のように述べたのだそうです。

・新型肺炎問題でヒトの移動が禁じられて貿易が減り、韓国で第二の通貨危機の懸念が増している

・外貨準備高を8300億ドルに拡大するとともに米韓通貨スワップ締結が必要だ

 この主張のうち前半部分については、「ヒト、モノの流れが滞ればカネの流れも滞る」、という点に関して、確かにそのとおりでしょう。実際、中央日報は

「韓国の主力産業である半導体、自動車、石油化学そして電子などすべての業種の輸出が大幅に減った。貿易依存度が75%である韓国の経常収支も3月には赤字に転落する可能性もある。」

と危機感をあらわにします。

 しかし、主張の後半部分については何やら意味がよくわかりません。

 BIS統計によれば、韓国が外国の金融機関から借りているカネは、(外貨、自国通貨を含めて)ざっくり3200億ドル程度であり(※2019年9月末基準)、このうち外貨建ての短期債務は1100億ドル少々です(『「株安」と「資本逃避」は必ずしもイコールと限らない』https://shinjukuacc.com/20200318-01/等参照)。

 したがって、極端な話、韓国の外貨準備高はこの短期債務(とくにドル建ての債務)をカバーすれば十分であり、「8300億ドル」という金額の算出根拠についてはよくわかりません。

●米ドルが必要

 ちなみに、中央日報の記事ではさりげなく、

「1997年の通貨危機当時も短期対外債務の割合が上がり、日系資金の流出から始まった。その後多くの外国人投資家が一気に資金を回収し通貨危機が発生した。」

と、まるで日本の金融機関が韓国の通貨危機の引き金を引いたかのような議論をしているのですが、これは悪質な捏造というほかありません。

いずれにせよ、この「キム・デジョン」氏は

「新型肺炎で世界的なドル不足、韓日と韓米の通貨スワップ拒否、韓国の短期対外債務比率上昇、75%と韓国の高い貿易依存度、そして新興国のデフォルトなど国際金融市場の不確実性が増加している。最も重要なのは韓米・韓日通貨スワップ締結だ。速やかに外貨準備高を2倍に拡大して備えなければならない」

と述べたのだそうです。

 韓国が必要とする米ドルの流動性を得るためには、米FRBとの為替スワップか、日本の財務省との米ドル建て通貨スワップのいずれかが必要だ、ということでしょうが、あまりにも厚かましい議論と言わざるを得ません。

 少なくとも自称元慰安婦の醜悪な銅像が日本大使館前に設置されている問題を筆頭に、自称元徴用工問題、火器管制レーダー照射事件、上皇陛下侮辱事件などについて、しかるべき謝罪と日本の損害の回復措置がなされない限り、日韓通貨スワップは1ドルたりとも結ぶべきではないでしょう。

●G20とのスワップについて

 さて、こうしたスワップ待望論は、学者、経済人などだけでなく、現役政治家の間でも広まっている模様です。実際、中央日報によれば、韓国の与党「ともに民主党」の李海レt(り・かいさん)代表も「通貨スワップ」と言い出したようです。

韓国与党代表「通貨危機に広がる前に通貨スワップ締結を」(2020.03.18 11:29付 中央日報日本語版より)


 中央日報によると、李海レt氏は18日、国会で開かれた会議で次のように述べたそうです。

「幸い、補正予算案が昨日通過したが、2008年の金融危機と比較するとまだ危機状況への対応が十分とは言えない。金融市場の懸念が通貨危機に広がる前に通貨スワップ締結などで先制対応しなければいけない」

 ただ、この李海レt氏氏の発言を読んでも、「日韓通貨スワップ」、「米韓為替スワップ」という具体的な相手国に言及されていません。やはり、与党の代表という立場からすれば、現在の日本が間違っても韓国とスワップを結んでくれないであろうということを、よく理解しているのでしょう。

 そのかわり、ここ数日、韓国メディアでときどき出てくるようになったのが、「G20諸国とのスワップ」論です。

 先日の『G7緊急会議とドル為替スワップを韓国が強く意識か?』でも韓国政府が米国に対し、緊急G20テレビ会議を提案したとする話題に関連し、李洛淵(り・らくえん)前首相が「G20との通貨スワップを積極的に締結すべき」と述べた、とする件についても紹介しました。

 ただ、このG20といっても、さまざまであり、国際的なハード・カレンシーの発行主体である日米欧英加などの諸国もあれば、むしろ国際的な通貨危機の際、資金不足に陥るような国もあります。

■G7諸国とG20諸国


・G7諸国…カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国の7ヵ国

・G20諸国…G7諸国に次の13ヵ国・地域を加えたもの
アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、欧州連合(EU)・欧州中央銀行(ECB)

(【出所】日銀『G20とは何ですか? G7とは何ですか?』

■参考:G20

法人税率の国際比較

法人税率の国際比較


(【出所】米議会予算局

 実際、韓国はG20のうち、

・オーストラリア、インドネシアとの通貨スワップ
・カナダとの為替スワップ

を締結しているのですが、このうちインドネシアとの通貨スワップは、いわばソフトカレンシー国同士のスワップであり、危機の際に役立たないどころか有害ですらあります(『弱小通貨同士の通貨スワップの「融通手形」説』等参照)。

また、カナダとの為替スワップは加ドルを国内銀行に対して供給するための流動性供給手段であり、危機の際に米ドル不足に陥るであろう韓国の金融機関の救済手段としては役に立ちません。

●韓国のホンネ

 では、「G20とのスワップ」などと言い出した韓国の「ホンネ」は、どこにあるのでしょうか。

 おそらく、その実際のところは、韓国だけが国際社会から支援を受けたいと申し出るのがはばかられて、「G20」にかこつけてどさくさに紛れて自国を支援するための協調スワップの締結を狙っている、といったところでしょう。

 もっといえば、「G20」ではなく「G7」との通貨スワップ・為替スワップ(とくに米国、日本、英国の3ヵ国に加えて欧州中央銀行(ECB)とのスワップ)が欲しいのでしょうね。

 かつてであれば、国際社会にスワップを懇願しなくても、水面下で日本に懇願すれば、日本の財務省が適当な理由を作ってくれて、韓国と通貨スワップを結んでくれたのですが、さすがに現在の局面では日本が韓国と通貨スワップを締結するということはあり得ません。

 だからこそ、G20を巻き込んで、強引に日本や米国とのスワップ締結を狙っているのだと思います。

 ただ、日本にとっては、G20スワップなんてものを結んでしまえば、アルゼンチンだの、ブラジルだの、ロシアだの、メキシコだの、トルコだのといった具合に、非常に通貨ポジションが脆弱な国に外貨をタカられる可能性がありますし、まともに機能するとも思えません。

 いずれにせよ、G20スワップというものは「あり得ない協定」だと考えて良いでしょう。

 もっとも、日本を除くG20諸国が通貨スワップを結んでくれるなら、日本にとっては韓国の世話をECBや英国などに押し付けるという意味では、チャンスといえるかもしれませんが…(笑)。


「新宿会計士の政治経済評論」より転載
https://shinjukuacc.com/20200318-04/

4

コメント

コメントの書き込み・表示するにはログインが必要です(承認制)。