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コロナウイルスと“開かれた社会の敵”

韓国紙セゲイルボ

歓迎できぬ排斥する心の偏狭さ

 新型コロナウイルスで韓国社会が脂汗を流している。20歳のころから30年以上大学に関わってきた筆者だが、同ウイルスによる開講延期は一言で衝撃的だ。2月末には数千人の中国人留学生が戻ってくる新村(ソウル市内の大学街)地域は、大いに緊張している。

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10日、新型コロナウイルスによる肺炎が発生した中国湖北省武漢市で、マスクの着用に加えポリ袋をかぶる買い物客(EPA時事)

 数千年の歴史の中で、韓国と中国は生活共同体を形成してきた。政治・安保的には互いに難しいところがあるものの、経済・社会的な相互依存性はとても切り離せない状況だ。

 今は常識になったが、既に経験したMERS(中東呼吸器症候群)とSARS(重症急性呼吸器症候群)もやはりコロナウイルスの一種で、今後も新型コロナウイルスはいくらでも現れると展望される。

 哲学者のカール・ポパーは『開かれた社会とその敵』で全体主義と革命的変化を辛辣(しんらつ)に批判した。二度の大戦を経験した欧州知識人のポパーにとって、ナチズムと共産主義のような画一的な政治文化は軽蔑の対象になったはずだ。

 逆説的ではあるが、いま私たちが向き合う開かれた社会の敵は、全く新しい姿をしている。中国の事例で分かるように、閉鎖的な社会文化が“武漢肺炎”の悲劇を生んだので、開放的で透明な社会的な伝統を妨げる21世紀の全体主義は開かれた社会の一つの敵だ。

 だが同時に、中国の人々に対する根拠なき非難と恐れもまた、私たちが警戒しなければならないもう一つの開かれた社会の敵に他ならない。

 全世界の工業製品の生産工場になった中国は、まだグローバルスタンダードに馴染(なじ)まず、荒っぽい中国方式を押し通しているが、国際社会との共同運命体を諦めるという考えではないものと見える。どんな形態であれ連帯のメッセージは発していると見なければならない。

 私たちが今の姿で暮らし始めたのは大略17世紀前後、西洋文明の観点の「国家」と「市場」が生まれ「市民」と総体的な概念の「主権」が生まれた。その後、多くの事件が発生し、歴史という名の教訓が蓄積された。

 国家は市場に勝てない。新型コロナウイルスを理由にして市場の流れを非常に短い瞬間は防げるだろうが、世界がつながって生きる生き方を後戻しすることはできない。

 開かれた社会の敵と堂々と向き合おう。国家次元の防疫システムの強化はいくらでも歓迎できるが、誰かを排斥する心の偏狭さは決して歓迎できない。

 いわゆる飛沫(ひまつ)(咳(せき)やくしゃみで口から出る小さな水滴)により伝染する新型コロナウイルスは結局、どんな形態であれ鎮まるだろう。私たちが生きている北東アジアという村で、不必要な“開かれた社会の敵”をつくる愚を犯さないようにしよう。科学の力を借りて解決すべき問題、外交の力を借りて解決すべき問題、生活規則で解決すべき問題、最後に心の持ち方で解決すべき問題ははっきりと区分されるべきだ。

(朴仁煇(パクインフィ)梨花女子大教授、2月10日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

ポイント解説

コロナで複雑な対中感情

 中国武漢発の新型コロナウイルスの被害を受けているのは韓国も同じだ。中国共産党政府の「閉鎖的な社会文化」が初期対応を誤り、事態を悪化させた。MERSやSARSの教訓はどうなっているのか。ここは非難すべきところだが、韓国は正面切って中国を責めたりはしない。

 中国は今や世界の生産工場だ。グローバル化の時代で、中国の停止は世界のサプライチェーンを止める。特に中国への依存度が高い韓国は深刻だ。だから日頃から中国にはぜひともグローバルスタンダードに馴染(なじ)んでほしいと韓国は願ってきた。中国を「開かれた社会の敵」呼ばわりせずに、国際規格に合わせてほしいと促してきたのだ。

 しかしこの「21世紀の全体主義」国家中国がその在り方を止める気配はない。相変わらず強大な力で国民を統制するスタイルは維持しながらも、その一方でちゃっかりと「国際社会との共同運命体」であることも放棄しない。

 今回の騒動でさすがの韓国でも中国に対して厳しい対応を取らざるを得なかった。中国人の入国制限強化である。しかし、こうした措置が韓国民の中国への嫌悪感、排除感につながっていくことも恐れてはいる。

 朴教授が「開かれた社会の敵」というのは、全体主義中国共産党政府のことであると同時に、コロナウイルスを理由に中国ボイコットに向かいそうな韓国民の中にある根深い嫌中感情でもある。

(岩崎 哲)

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