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日韓関係「3点セット」巡る韓国外相の絶望的な発言

 韓国の康京和外交部長官は昨日、自称元徴用工問題、輸出管理適正化措置、日韓GSOMIAの「3点セット」を巡り、「日本は輸出規制を撤回せよ、さもなくばわが国は再び韓日GSOMIAをいつでも破棄することができる」、「強制徴用問題は三権分立の問題であり、韓国政府としては介入できない」などとする従来の韓国政府の主張を繰り返したそうです。正直、こうした韓国側の主張は、絶望的に頭が悪いですし、コロナウィルス騒動が収束すれば、再び日韓関係の破綻がテーマとして頭をもたげてくるような気がしてなりません。


●自称元徴用工問題は韓国の国内問題

 当ウェブサイトで「自称元徴用工問題」と呼称している問題を巡っては、先月の『「日韓Xデー」が到来しても、それは韓国の責任だ』などでも紹介したとおり、最近になってまたしても「日韓どっちもどっち」論が出て来ています。
簡単にストーリーを振り返っておきましょう。

 韓国国内で「戦時徴用工だった」と自称する者たち(つまり自称元徴用工)やその遺族らは、近年、相次いで「日本企業には損害賠償の責任がある」などとして日本企業を訴えており、日本国内では訴えが認められなかったため、訴訟の場を韓国国内に移しました。

 ところが、一昨年10月30日と11月29日、韓国の最高裁にあたる「大法院」が、相次いで日本企業敗訴の最終判決を下したことで、この問題は「一線」を越えてしまいました。韓国が「国として、国際法を公然と破った」状態が出現したからです。

 さて、日韓請求権協定の原文は外務省ウェブサイトに設けられた次のページに掲載されています。

大韓民国による日韓請求権協定に基づく仲裁に応じる義務の不履行について(外務大臣談話)(2019/07/19付 外務省HPより)

●韓国の2つの国際法違反

 まず、請求権協定では、韓国の個人などは日本企業などに対し、1945年8月15日以前に発生した請求権について「いかなる主張もなしえない」と明確に定めています(同第2条3)。平たく言えば、「請求したければ韓国政府に請求してね」、ということです。

 それなのに、韓国の大法院は、請求権協定に違反して日本企業に直接、損害賠償を命じる判決を下したわけであり、これをもって韓国が日本に対して国際条約に違反した判決を下したという国際法違反状態が出現しました(第1の国際法違反)。

 これを受けて日本政府が判決直後、韓国政府に対し「国際法違反の状態を是正してほしい」と要請したところ、韓国政府は「三権分立の原則があるから無理」などと述べてこれを無視しましたのですが、考えてみればこれもおかしな話です。

 改めて指摘するまでもありませんが、国際的な条約というものは、その国の裁判所をも拘束するからです。そして、「三権分立」というものは、あくまでも韓国の国内事情であって、外国である私たち日本にとっては「日韓請求権協定が守られていない」という状況が出現したという事実は変わりません。

 ただ、日本政府はこれに対し、ただちに韓国に対して対抗措置を講じることをせず、まずは友好的、紳士的、平和的に問題を解決しようと努力して来ました。しかし、これに対する韓国政府側の態度は極めて非友好的、非合理的、不誠実なものでした。

 たとえば、日本政府は請求権協定第3条1に従い、昨年1月9日に外交的協議を申し入れましたが、これについては約4ヵ月、韓国政府によって無視されたあげく、5月中旬には当時の李洛淵(り・らくえん)首相が「韓国政府の対応には限界がある」と述べて匙を投げてしまったのです。

 次に、日本政府が5月20日、請求権協定第3条2に従って仲裁手続への付託を通告しましたが、仲裁委員の任命期限(6月18日)になっても韓国政府はこれを無視し、また、第三国仲裁手続についても期限の7月18日までに対応しようとしませんでした。

 これをもって、「韓国自身が作り出した国際法違反の状態を是正するための日本政府による友好的、紳士的、平和的な問題解決努力を、韓国が非友好的、非合理的、不誠実な態度で踏みにじった」という実績が出来上がりました(第2の国際法違反)。

 つまり、現在の韓国は日本に対し、「二重の意味」で国際法違反状態を作り出しているのです。

●日本政府、対抗措置すら講じず

 では、日本政府は何らかの対抗措置を講じたのでしょうか。

 私たちの感覚だと、通常、相手の非合理、非友好的な行為によってトラブルに巻き込まれ、誠意を尽くして相手と話し合おうとしても相手が話し合いに応じてくれないのだとしたら、もう諦めて「次のステップ」に行くような気がします。

 しかし、残念ながら現時点において、日本政府が韓国に対し、何らかの経済制裁、対抗措置を講じたという事実はありません。

 いちおう、日本政府としては「日本企業に不当な不利益が発生したら対抗措置を講じる」と述べおり、その「不当な不利益」については「自称元徴用工らの側が差し押さえている日本企業の資産を売却した場合」を意味しているようです。

 しかしながら、これもあくまでも個人的な印象ですが、韓国側で日本企業の資産を売却すると日本に対して脅しているのは、いわゆる「売却するする詐欺」のようなものであり、韓国や北朝鮮が国を挙げて得意とする瀬戸際外交の一種と見るべきでしょう。

 実際に、自称元徴用工側が日本企業の資産差押えに踏み切ったのは昨年のことですが、「売却するぞ」、「売却するぞ」、「今度こそ本当に売却するぞ」などと述べているわりに、待てど暮らせど資産売却は実現していませんし、おそらく資産売却が実現する可能性は半々、とったところではないでしょうか。

 (※余談ですが、『時間もカネもかかる 非上場株式の競売が困難である理由』などで議論したとおり、韓国側で差し押さえられている資産は、非上場株式や知的財産権など、換金・売却がとても難しい資産ばかりなのですが、不思議なことにこの点を指摘したメディアはほとんどないようです。)

●輸出管理適正化とGSOMIA破棄が絡まる

 ただし、この自称元徴用工問題とはまったく別次元で、日本政府が昨年7月1日に発表したのが、韓国に対する輸出管理の適正化措置です(経済産業省『大韓民国向け輸出管理の運用の見直しについて』参照)。

 当ウェブサイトなりの分析ですが、これは戦略物資の軍事転用などを予防するための国際的な輸出管理体制において、韓国が「輸出管理に関する著しく不適切な事例」を発生させるなどしていたことを受け、日本政府が講じた措置です。

 具体的には、日本は(なぜか)2004年に韓国を輸出管理上の「(旧)ホワイト国」(※現「グループA」)に指定したのですが、韓国の態度はこの「(旧)ホワイト国」に相応しいものではなく、現実にはおそらく「不適切な事例」が頻発していたのだと思います。

(この「不適切な事例」とは、おそらくは第三国への戦略物資の横流しではないかと思うのですが、これについては『韓国が欲しがったのはフッ酸よりも「容器」だった?』『対韓輸出が急減しているのは「低価格フッ化水素」か?』などをご参照ください。)

 それなのに、韓国政府はこの輸出管理適正化措置を「自称元徴用工問題への報復措置だ」と勝手に勘違いし、あろうことか、この措置の撤回を求め、『秘密軍事情報の保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定』(いわゆる「日韓GSOMIA」)の破棄などを通告しました。

 この日韓GSOMIA破棄は米国の逆鱗に触れたため、結局、その効力が発揮する昨年11月23日午前0時の数時間前になって韓国政府が事実上の撤回を余儀なくされました(『韓国の「GSOMIA瀬戸際外交」は日本の勝利だが…』参照)。

 しかし、韓国政府は「この日韓GSOMIAについてはいつでも破棄できる」と言い張っていて、「日本の態度次第では3月末で終わらせる」https://shinjukuacc.com/20200109-04/、などと述べているようです(※日米両国政府からはまったく相手にされていませんが…)。

 なお、韓国政府が「日韓GSOMIAをいつでも終わらせることができる」と述べている点の間違いについては、『【読者投稿】GSOMIA「事実上の延長」の真否』で詳しく触れていますので、適宜ご参照ください。

●韓国からの見え方

 さて、自称元徴用工問題(韓国側でいう「強制徴用問題」)、輸出管理適正化措置(韓国側でいう「輸出規制」)、日韓GSOMIAの「3点セット」を巡る韓国政府の主張は、だいたい次のようなものでしょう。

「強制徴用問題に対して日本が逆ギレして発動して来たのが輸出規制であり、これに対してわが国が対抗措置として持ち出したのが韓日GSOMIAの破棄である。しかし、日本が態度を改めたので、韓日GSOMIAの破棄についてはいったん保留にした。」

 このうち、そもそも「強制徴用問題」は三権分立の問題であり、裁判所が下した判決を尊重しなければならないのは当然のことであって、日本がこれにギャーギャー噛み付くのは理解できない、ということです(※彼らの頭の中から「国際法」という論点はすっぽり抜けています)。

 次に、「輸出規制問題」は、この「強制徴用問題」に対して日本が仕掛けてきた不当な報復であり、自由貿易の趣旨に反する不当な措置だ、ということでしょう(※当然、彼らの頭の中から「輸出管理」という論点はすっぽり抜けています)。

 そのうえで、「韓日GSOMIA破棄」は、「日本が強制徴用問題で輸出規制強化という報復をしてきた以上、自分たちとしても何らかの報復をしなければならない」という考え方だと思います(※ここで、彼らの頭の中から「米韓同盟」という視点はすっぽり抜けています)。

(※余談ですが、本来ならばあまり外国の政府のことをとやかく言いたくはないのですが、あえて言葉を選ばずに申し上げるならば、とにかく文在寅(ぶん・ざいいん)政権の思考パターンは、あまりにも頭が悪すぎると思います。)

 いずれにせよ、上記のような思考パターンを念頭に置けば、日韓の主張が「平行線」だったとしても、違和感を抱かないかもしれません。

■韓日局長協議 強制徴用訴訟・輸出規制問題は平行線(2020.02.06 20:56付 聯合ニュース日本語版より)⇒すでにリンク切れ
韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)によると、昨日はソウルで自称元徴用工問題や輸出管理適正化措置を巡る話し合いが持たれたそうですが、「立場の隔たりを埋めることができないまま終了した」のだそうです。

 まぁ、そうなるでしょうね。わざわざソウルくんだりに出掛けて決定的に話が通じない人たちを相手にする外務省の滝崎成樹アジア大洋州局長の立場には少しばかり同情したいと思います(※記事自体はやたら長文ですが読む価値はありません)。

●日韓関係は破綻に向かう?

 さて、この「3点セット」を巡って、さらに不可解なのが、康京和(こう・きょうわ)韓国外交部長官(※外相に相当)の発言です。

徴用問題 日本企業資産の現金化に介入できず=韓国外相(2020.02.06 14:06付 聯合ニュース日本語版より)


昨年は韓日が了解したとしていたが…韓国外交部長官「輸出規制、我々の望み通りに進まなかった」(2020.02.07 06:53付 中央日報日本語版より)


 聯合ニュースに加え、韓国メディア『中央日報』(日本語版)の記事によれば、康京和氏は昨日の記者会見で、だいたい次のようなことを述べたそうです。

・自称元徴用工問題…日本企業の資産の売却手続は司法手続の問題であり、三権分立のため、韓国政府としては介入できない
・輸出管理適正化措置…韓国が望むのは「7月1日以前の状態に戻すこと」だが、昨年11月以来、日本の動きは韓国が望む方向に向かっていない
・日韓GSOMIA…いつでも終了する権利がある

 まったく話にならないとはこのことを言うのでしょう。

 ついでにいえば、中央日報などは昨年12月に安倍晋三総理大臣が韓国の文在寅(ぶん・ざいいん)大統領と13ヵ月ぶりに日韓首脳会談を開催したことで「ひとまず最悪の状況は切り抜けた」と述べているのですが、日韓関係が「最悪の状況を切り抜けた」とはじつに奇妙な認識だと思います。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 現在はコロナウィルス騒動で日韓両政府ともに「3点セット」について対応する暇がない、という印象がありますが、騒動が落ち着けば、再びこれらの日韓問題が頭をもたげて来るのではないでしょうか。

 いずれにせよ、康京和氏の絶望的に頭の悪い発言を眺めている限りにおいては、いずれ日韓の破綻は避けられない気がしてならないのです。


「新宿会計士の政治経済評論」より転載
https://shinjukuacc.com//20200207-03

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