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韓国・文在寅政権の狙い 「65年協定体制」の転換図る

「積弊清算」は新日韓関係の構築

 日韓間の問題を解決しようとするとき、韓国は「ゴールポストを動かし」て、さらに異なる所へ妥結点を変えて行く。いったい何を目指しているのか。最近の厳しい衝突の中で、韓国側の狙いが少しずつ分かってきた。文在寅政権が進める「積弊清算」とは、つまり“戦後日韓関係の清算”であり“新日韓関係の構築”なのだと。

 中央日報社が出す総合月刊誌月刊中央(9月号)が「韓日関係特集」を組んでいる。「変化要求に直面する“65年協定体制”」の記事がそのことを詳しく分析している。

 8月15日の文大統領演説では「慰安婦」も「強制徴用」も出てこなかった。代わりに「今日の私たちは過去の私たちではない」「南北の平和定着が経済強国の道という“平和経済論”を克日の青写真」だと示した。

 同誌は、これは「歴史認識の転換」だと指摘する。そして「認識の転換はすなわち関係の再設定を意味する」とし、「1965年国交正常化以後、54年間、聖域と見なされた既存の韓日関係が時代変化の挑戦を受けているのだ。65年体制はもはや聖域ではない」と断じた。

 一方、日本側は現在、この挑戦に対して、戦後日韓関係の出発点である「65年日韓基本条約・請求権協定体制」の維持を基本とする考えを変えていない。これをもって日韓の過去は“完全に”清算され、戦後の「漢江の奇跡」を可能にした経済協力と安保体制が確立され、今日に至っている。その日韓関係を再設定することなど、とうてい認められるものではない、というのが官民の共通認識だ。

 しかし、相手が関係を変えようと迫っている以上、ただ突っぱねているだけでは問題の解決にならない。相手側が何を考え何を目指しているのかを正確に知ることが必要だが、実は、既に安倍政権は韓国への認識を変えていた。

 韓国がもはや「自由民主主義と市場経済の基本的価値を共有」(2016年版国防白書)する隣国ではなく、「地理的、文化的に近い隣国」(18年版国防白書)にすぎないことを喝破していたのだ。「反日離米」を進め、中国の「日米韓同盟」化への牽制(けんせい)を受け、北朝鮮との経済交流再開に邁進(まいしん)する韓国の本音を正確に見抜いていたわけである。

 話を戻すと、韓国は環境と情勢の変化を強く意識している。かつては圧倒的にあった日韓の経済格差が縮まり、中国が共産体制のまま経済大国となり、米国の西太平洋への関心が変化してきたことだ。「私たちは過去の私たちではない」という文大統領の言葉はこのことを指している。つまり力強くなった韓国は対日関係を清算した上で新しい関係を構築しようというのである。

 前述したように日本はそれに応じるつもりはない。そこで、同誌は文政権の目論見(もくろみ)が現実化するのは、日本が北朝鮮と国交回復を進める時がチャンスだと分析する。北朝鮮とは「過去の清算」が残されている。この機に南北合わせて清算を日本に迫ろうというわけだ。

 だからというか、そのために文政権は歴史認識の変更を進めている、とみれば、納得だ。韓国は憲法の前文で1919年の上海「臨時政府の法統」を受け継ぐとしている。これは北朝鮮の歴史と合わせようとするものだ。韓国の建国は48年だが、北は臨時政府を起点にしているから釣り合いが取れない。南北ともに一つの国として日本に対する時、歴史を合わせておく必要があるのだ。

 だから、文政権は日韓併合条約の見直しまで断行しようとする。65年基本条約で“玉虫色”で妥協したのが「併合条約は“もはや”無効である」の表現だった。日本は65年時点で無効と解釈し、韓国側は1910年併合条約締結時から無効だったと解釈した。これは先人たちの知恵ではあったが、案の定、封印が剥がされてしまった。

 併合が無効なら、植民統治期間のことは全て「不法」になる。「徴用工」判決はそれを根拠にしているから、基本条約を盾にする日本の反論は通らないことになる。

 併合条約、基本条約、全てを見直して、新日韓関係をつくろうとしている韓国の挑戦に対し、わが国は対応する体制が整っているのか、甚だ不安である。

 編集委員 岩崎 哲

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