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    安東 幹
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    坂東 忠信
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    古川 光輝
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    細川 珠生
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    井上 政典
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    伊勢 雅臣
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    河添 恵子
    河添 恵子
    ノンフィクション作家
    宮本 惇夫
    宮本 惇夫
    企業・経営
    中村 仁
    中村 仁
    元全国紙経済記者
    石平
    石平
    評論家

    朝鮮半島の「非核化」は既に「死語」?

     首脳会談など重要な会議では開催前には議題設定が行われる。何をテーマとして話し合うかだ。そして朝鮮半島に関連する一連の首脳会談には絶対欠かせられない主要議題(アジェンダ)があった。朝鮮半島の「非核化」問題だ。具体的には、北朝鮮の非核化だ。

    800

    板門店でトランプ大統領、金正恩委員長、文在寅大統領の米朝韓3国首脳が結集(2019年6月30日、韓国大統領府公式サイトから)

     米朝、日米、日米韓首脳会談から先進主要国会談(G7)まで、朝鮮半島問題では北朝鮮の非核化問題は最大の議題の一つと見なされてきた。そして多くの首脳たちが北の非核化促進を訴えてきたが、ここにきて「北の非核化」を叫ぶ声が聞かれなくなってきた感じがする。

     理由はある。北がこれまでの最後の核実験(2017年9月)後、2年余り核実験を控えてきたからだ。北が米朝首脳会談推進中は一種のモラトリアムとして、核実験を控えているからだ。しかし、北が非核化を実行している兆候はみられない。

     米国の衛星写真などによると、寧辺周辺核関連施設で活動がみられる。一部報道では、5MW黒鉛減速炉の再操業を報じる記事があった。ウラン濃縮活動をカムフラージュするための恣意的な攪乱工作だろう。少なくとも5MW黒鉛減速炉はもはや博物館入り寸前だ。正常な活動を再開するためには膨大な資金と労力が必要となるから、北は古い原子炉から核燃棒を回収し、それを再処理してプルトニウムを入手するこれまでのやり方を放棄し、ウラン濃縮活動に専念しだしている。後者は大きな施設は要らず、隠ぺい工作も容易という利点がある。

     要するに、「北の非核化」はもはや遅すぎるのだ。6回の核実験を実行し、20基以上の核兵器を保有している北が非核化に応じるはずがないからだ。その点、イランの核問題とは次元が違う。ここで指摘しなくても関係国は既に知っていることだ。「非核化」、「非核化」と叫ぶが、誰もがそれが実現できるとは考えていない。それが北の非核化問題の現状だ。

     思い出してほしい。北が核兵器を既に保有しているという事実は国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長時代に明らかだった。エルバラダイ氏は2006年8月31日、ウィーンのホーフブルク宮殿で開催された包括的核実験禁止条約(CTBT)の署名開始10周年記念シンポジウムの基調演説の中で、「世界には現在、9カ国の核保有国が存在する」と述べた。9カ国とは、米英仏露中の国連安保常任理国5カ国にインド、パキスタン、イスラエル、そして北朝鮮というのだ。すなわち、エルバラダイ氏は13年前に北朝鮮を既に核保有国と見なしていたのだ。同氏に先見の明があったからというより、不都合な事実をバカ正直に言ってしまっただけだ(「北が『核保有国』と認知されない理由」2017年9月11日参考)。

     「北の非核化」が国際社会の主要議題となって久しいが、それを真摯に可能と考えている国や外交官は誰もいないだろう。トランプ米大統領は再選問題もあるから国際社会の注目度の高い「北の非核化」にのめり込んでいるが、実際は米本土まで届く核弾頭搭載可能の長距離弾頭ミサイルを北が保有しない限り、北が製造済みの初歩的な核兵器を黙認する考えだ。

     世界で唯一、核兵器を製造した後、それを破棄したのはアパルトヘイト政権時代の南アフリカ1国だけだ。白人支配が終わり、黒人支配に移行する直前、核兵器が黒人主導政権に渡るのを阻止するために核を完全に放棄、破壊している。リビアのカダフィ大佐は核開発計画を断念し、全ての関連機材を米国側に引き渡したが、リビアは当時まだ核兵器を製造していなかった。

     それでは、核兵器を20基以上保有し、6回の核実験をした北が完全な非核化に応じると考える“お人よし”の政治家がいるだろうか。中国とロシアが北を政治的、経済的支援する限り、北が非核化を実行しなければならない理由は見当たらない。中露2国は北の核兵器を最小限度に抑える一方、北東アジア支配への窓口として北を彼らの勢力圏に入れておくほうが戦略的にメリットが多い。民主選出された政権ではなく、独裁者が支配する国の場合、その政権が何らの理由で崩壊しない限り、非核化は考えられないわけだ。

     朝鮮半島の「非核化」はこれからも主要首脳会談でアジェンダとして取り上げられたとしても既に「死語」となっているのだ。朝鮮半島を取り巻く政治情勢は「北の非核化」から北主導の南北再統一、駐韓米軍の撤退問題、そして日本の再軍備といった流れに移動してきているのだ。

     中国の王毅国務委員兼外相は今月2日、平壌で李容浩外相と会談した。両氏は10月の中朝国交樹立70年祝賀行事に向けて協力することで一致するとともに、「朝鮮半島の非核化」についても話し合ったという。報道向けの内容だろう。実際は、中国外相の訪朝では「北の非核化」は主要テーマではなかったはずだ。

     中国が今関心を払っているのは、韓国が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄した後の朝鮮半島情勢であり、その後続くだろう在韓米軍撤退問題だ。そのうえで「韓国の文在寅政権をいかに中国と北側に引き入れるか」で突っ込んだ話し合いがもたれたはずだ。中国・北朝鮮両国外相会談後、新たな対韓政策が実行されるかもしれない。文在寅大統領を突き放すのではなく、引き入れるための工作外交だ。

     繰返すが、「北の非核化」というテーマは既に死語となったが、ここ当分は誰もそういわないだろう。誰が最初に「北の非核化はもうテーマではない」と本音を漏らすだろうか。やはり、口の軽いトランプ米大統領だろうか。

    (ウィーン在住)

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