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ホワイト国除外は経済制裁本番に向けた予行演習だった?

 経産省が7月1日に発表した『韓国向け輸出管理の運用の見直し』措置は、結局、昨日までに個別輸出承認などが下りたこともあり、韓国側では「日本への対抗措置」が急速にトーンダウンしているようです。これで鎮静化すると見るのは早計ですが、とりあえず韓国政府は振り上げたこぶしを下ろす可能性が高いと思います。ただ、それと同時に今回の経産省による措置に重要な成果があったとしたら、韓国政府や韓国メディア、あるいはわが国のメディア、さらには外信や米国政府がどのように反応するか、という、非常に良いシミュレーションになった、ということではないでしょうか。その意味では「経済制裁の本番」に向けた予行演習、という側面もあるのかもしれません。

【経済制裁に非ずとも…】

 
 経産省が7月1日に発表した『韓国向け輸出管理の運用の見直し』措置は、「韓国に対するモノの流れの制限」ですので、かなり広い意味では「サイレント型の経済制裁」と呼べなくはありません。

 ただ、実際には単に韓国をいわゆる「ホワイト国(※)リスト」から除外し、3品目の輸出許可を個別許可制に切り替えるという措置に過ぎません。

(※ただし経産省は8月2日付で、輸出管理上の概念を変更し、「ホワイト国」「非ホワイト国」という呼び方を「グループA~D」という表現方法に改めています。)


グループA…輸出貿易管理令・別表第3に示された国、地域
グループB…グループA以外で、輸出管理レジームに参加し、一定要件を満たす国・地域
グループC…上記いずれにも該当しない地域
グループD…アフガニスタン、中央アフリカ、コンゴ民主共和国、イラク、レバノン、リビア、北朝鮮、ソマリア、スーダン、イラン


 ちなみに一番下の「グループD」がいわゆる「懸念国」、その次が「グループC」ですが、韓国はグループCよりさらに上の「グループB」という扱いです。

 確かにリスト規制品については、半導体関連の3品目などを除けば、今までのような「一般包括許可」を受けることはできなくなりますが、ほとんどの項目で引き続き「特定一般包括許可」を受けることができるため、いわば「準ホワイト国」のようなものだといえるでしょう。

 このため、当ウェブサイトではこれまで一貫して、「今回の措置を『経済制裁』と呼ぶには実質的には弱すぎる」と申し上げて来ましたが、結局は当ウェブサイトの見方が正解だったようです(これについては今朝の『韓国政府「経済報復だ」、世耕経産相の反論が面白い』でも触れています)。

【韓国の行動パターン】

●振り上げたこぶしを下ろす韓国
 そして、韓国側では実際、「日本の追加措置がなければ、韓国政府としても状況を悪化させる理由はない」、といった反応も出て来ました。

韓経:青瓦台政策室長「日本の追加措置なければ、我々も状況を悪化させる理由はない」(2019年08月09日09時20分付 中央日報日本語版より)


 おそらく、韓国政府はガチンコで日本政府と戦うつもりはないはずです。

 正面から戦えば木端微塵になることを、彼ら自身がよくわかっているからです。

 このため、「振り上げたこぶしの落としどころ」を探るなかで、「日本の追加措置がないのなら、これ以上ことを荒立てない」などと誤魔化して、日本を「ホワイト国」から除外する措置などをうやむやにし、8月24日の「日韓GSOMIA破棄通告期限」についてもやり過ごしてしまうつもりなのでしょう。

 本当にいつもの韓国らしいやり方です。

 もっとも、文在寅(ぶん・ざいいん)大統領のことですから、せっかく沈静化しつつある日韓の争いに、8月15日の「妄言」で再び火を付ける可能性はあります(むしろ個人的には、そちらの方の可能性が高いと見ています)。

 さらには、自称元徴用工問題をはじめとする、日韓間に刺さったトゲは、まったく抜けていません。このため、「このまま輸出管理問題が鎮静化する」と見るのは早計でしょう。

●韓国の行動パターンが余すところなく示された
 ところで、今回の措置に対する韓国の反応は、「典型的な韓国の行動パターン」だったのではないかと思います。

 経産省が7月1日にこの措置を発表した直後から、韓国政府は「禁輸措置だ」、「(自称元徴用工問題に対する)経済報復だ」、「WTOルールに反する不当な措置だ」、など、それこそハチの巣をつついたような大騒ぎとなりました。

 また、韓国政府は7月12日に産業通商資源部の担当者を東京の経済産業省に派遣しましたが、日本側が会合の性質を『事務的説明会』と説明して同意を得たにも関わらず、韓国側は後日、この会合を勝手に「第1回韓日協議」※と発表してしまいました。

(※世耕経産相をはじめとする経産省側はこれに激怒したようで、当然、第2回目以降の会合は持たれていません。)

 さらに、韓国はまったく関係のない国際会合の場に出掛けて行って、その会合と無関係に、いきなり日本の「ホワイト国除外措置」の批判を始める、ということをやらかしました。


・スイス・ジュネーブで現地時間7月24日に行われたWTO一般理事会では、韓国政府の出席者が一方的に日本の非難を始めた(『WTO理事会が日本の勝利だったという、これだけの証拠』参照)
・タイ・バンコクで8月2日に行われたASEAN地域フォーラム(ARF)外相会合では、韓国の康京和(こう・きょうわ)外交部長官が会議冒頭で日本を強く批判。河野太郎外相が反論した(『日本政府は勇気を持って「2の矢」「3の矢」を放て』参照)
・中国・北京で8月3日に行われたRCEP閣僚会合では、韓国の閣僚が会議で日本を強く批判。これに世耕弘成経産省が反論した(『知的訓練ができていないのは、むしろマスコミでは?』参照)


●後ろから撃ってくるATMや共同通信

 ハッキリ申し上げて韓国政府がやっていることは支離滅裂でメチャクチャなのですが、こうした行動については侮れません。実際、事情を何も知らない第三国の人がこれを見ると、「あぁ、日韓両国は争っているのだな」、という印象を受けるからです。

 さらに、輪を掛けて困った話が、日本国内から日本政府を撃ってくる勢力の存在です。

 当ウェブサイトでは以前から、朝日新聞、東京新聞、毎日新聞に代表される反日・極左的なメディアを「ATM」と呼んでいるのですが、このATMに共同通信やNHKなどのメディアがスクラムを組んで、日本政府を後ろから撃ってくるのです。

 たとえば、『朝日など3紙社説がWTO巡り、そろって日本政府を批判』で紹介しましたが、韓国政府が7月のWTO一般理事会で日本を批判した際、「ATM」の3紙は判で押したようにそっくりな社説で「日韓両国政府はお互いに自制すべきだ」、などと主張しました。

 また、RCEP会合の直後には、共同通信があたかも「第三国が日韓関係に懸念を示した」かのような記事を配信しました(これについては世耕氏本人もさきほど、ご自身のツイッターで「共同通信はいまだに無反応」だと批判されています)。


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こうした国内メディアの虚報は、けっして侮れません。

【欧米や国際社会の反応】

●ニュース原稿を差し替える外信の卑劣さ

 さらに問題があるとしたら、今回の件については、外信(具体的には、ロイターやロイター、さらにはロイター)が、明らかなウソを堂々と報じている、という点にあります。その典型的な記事が、次のものです。

U.S. says Japan, South Korea ‘soul searching’ needed over damaging row(2019/08/08 7:37付 ロイターより)


ロイターの記事には、次のようなくだりが含まれています。


‘Diplomatic tensions intensified after a South Korean court last year ordered Japanese companies to compensate Koreans who were forced to work for Japanese occupiers during World War Two, a matter Tokyo says was settled by a 1965 treaty normalizing bilateral ties. / On July 4, in apparent retaliation, Japan restricted exports of high-tech materials to South Korea, sparking a boycott by South Korean consumers of Japanese products and services.’


意訳・要約のうえ箇条書きにすると、次のとおりです。


・韓国が昨年、第二次世界大戦中に強制労働させられた朝鮮人労働者への賠償を命じた判決を日本企業に下したことに対し、日本政府は1965年の国交正常化条約に反するとして反発したことで、外交上の緊張が高まっている

・7月4日には日本がハイテク素材の韓国への輸出を制限する措置を発動したことで、韓国の消費者の間では日本産の製品やサービスへの不買運動が広まっている

 ロイターは「第二次世界大戦中に強制労働させられた朝鮮人労働者」という明らかな捏造をあたかも事実であるかのごとく報じているほか、日本による韓国に対する輸出管理の見直しを「日本は輸出を制限した(Japan restricted exports)」と断言しています。

 ちなみにこのロイターの配信記事をそのまま日本語訳したものが、朝日新聞デジタル日本語版に転載されているのですが、英語の原文にあったこれらの下りは削除されています。

日韓、関係悪化させた政治決定について反省を=米政府高官(2019年8月8日10時37分付 朝日新聞デジタル日本語版より)


 つまり、ロイターは外国向けと日本国内向けでニュース原稿を変えているのです。

 日本人が見ていないとでも思っているのでしょうか?

 ロイターは日本人をバカにするのも、たいがいにした方がよいでしょう。

●米国の下っ端役人の妄言

 こうした虚報、捏造報道の弊害は、さまざまな場面で出ています。

 さすがに高官クラス、政権幹部クラスは日韓関係の現状について正確に把握しているものと考えられるものの、下っ端役人クラスになると、「日韓双方はお互いに反省すべきだ」、といった妄言が飛び出してくるからです。

 昨日の『日本政府はナッパー国務副次官補の更迭を要求すべき』でも紹介したとおり、米国政府・国務省の担当官(「国務副次官補」、というのだそうです)が日韓両国に対して「双方が反省せよ」などと述べた、という事件がありましたが、これもメディアの虚報の影響ではないでしょうか。

 米国の役人ですらこういう状況なのですから、WTO一般理事会やARF、RCEP会合では日本は「防戦」に成功しましたが、そのうちASEANのなかには韓国の主張に理解を示す国が出てくる可能性もあります。

 そうなると、いつものように「日韓双方、どちらも悪い点がある」という、いつもの日韓関係になってしまいかねません。

●韓国の狙いは「イーブンに持っていくこと」

 さて、韓国の行動を眺めている人間からすれば、こうなることは当然に予測できます。

 というのも、韓国の狙いは、いつも、「イーブンに持っていくこと」にあるからです。

 韓国が100%悪い局面でも、たいていの場合、まずは相手を一方的に非難し、相手がひるんだすきに「韓日お互いに悪いところがある」と述べて「イーブン」に持っていくのです。

 つまり、国際社会における韓国との言い争いでは、勝ってゼロ、引き分けてマイナス50、負けてマイナス100、なのです。

 韓国が仕掛けてくる世論戦で勝利したとしても、日本に得るものは何もありません。しかし、敗北すればすべてを失ってしまいます。

 日本は戦後、ずっとこういう不毛な戦いを韓国と続けているのだ、ということを、そろそろ私たち日本国民はしっかりと意識すべきでしょう。

【今回の最大の成果】

 ところで、今回の日本政府の措置による最大の成果とは、「もし日本が韓国に対して本格的な経済制裁を適用したら、どのようなことが発生するか」、というシミュレーションができた、という点にあるでしょう。

 韓国はたいていの場合、次のような行動パターンを取ります。


・自分の不法行為を棚に上げ、相手が全面的に悪いと批判する
・無関係な国際社会を巻き込み世論戦を展開する
・大国(米国や中国など)に「日本を叱らせよう」とする
・水面下で交渉しようとし、秘密会合の内容を勝手に公表する


 また、外信や日本国内のメディアは、たいていの場合、事実関係を無視し、日本に対して批判的な報道を繰り広げます。

 今回、日本政府が選んだのは、「安全保障上の輸出管理の強化」という意味で、基本的には「絶対に文句が言えない措置」です。それにも関わらず、ロイターやATM、共同通信などは、あたかも日本の措置が誤っているかのような言い草で、日韓を「イーブン」に持ち込もうとしたのです。

 このことについては、よく踏まえておく必要があります。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 このように考えていくならば、日本がやるべきことが、おぼろげながら見えて来ます。

 それは、「国際社会をうまく巻き込むやり方」です。

 たとえば、リスト規制品にさまざまな品目を追加していくことで、韓国経済に大きな打撃を与えるというやり方が考えられますが、その際、日本はG7などの会合を利用し、欧米諸国と協調して、ほかの名目(タリバーンや北朝鮮制裁など)を使い、結果的に韓国に打撃を与える手段を選ぶ、ということです。

 この方法だと、「国際社会で日本を悪者にする」という、韓国の十八番を完全に封殺することができます。

 理想的には、国連安保理の場で、北朝鮮の核開発疑惑と絡め、韓国に対する制裁決議を引き出すことですが、さすがにこれはまだハードルが高いと思いますが、今の調子で南北融和が進んでいけば、韓国を経済的に「焦土化」するチャンスが勝手に転がり込んでくるかもしれません。

 今回の措置が経済制裁本番の予行演習だったのかどうかはさておき、日本政府の賢明な対処を期待したいところです。


「新宿会計士の政治経済評論」より転載
https://shinjukuacc.com/20190809-03/

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