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米朝会談直後の“経済報復” 「平和を妨害」と決めつけ

何処へゆく韓国 「親北反日」の迷路(3)

 先月末、訪韓したトランプ米大統領は南北軍事境界線上にある板門店で北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と3回目の首脳会談を行った。韓国のテレビ各局は急遽(きゅうきょ)特番体制を組み会談の様子を生中継、「歴史的」などと伝えた。

金正恩朝鮮労働党委員長(前列左)、トランプ米大統領(同中央)、文在寅大統領(同右)

6月30日、板門店で並んで歩く北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(前列左)、トランプ米大統領(同中央)、韓国の文在寅大統領(同右)(EPA時事)

 多くの専門家は、大統領選再選へ国内向けパフォーマンスを見せたかったトランプ氏と制裁解除の糸口を見いだしたい正恩氏が北朝鮮非核化を事実上棚上げにしたまま会談したにすぎないという懐疑的見方を崩していない。

 二人は通訳だけ同席させ小一時間会談した。

 「制裁は解除できないが、あなたが非核化に向け動き出す誠意を見せてくれるなら検討しよう。その代わり再選まで核・ミサイルの挑発は自制してほしい…」

 こんな秘密ディールをトランプ氏は持ち掛けたのではないか。ある元韓国政府高官は推測する。

 それでも同行した文在寅大統領は高揚した面持ちで短時間ながらトランプ氏、正恩氏と3人で立ち話をした。北朝鮮問題は当事者である韓国の主導で解決すべきという「朝鮮半島運転手論」に再び弾みがつくとの期待を膨らませているかのようだった。

 「2月のハノイでの2回目米朝会談では乗客が車から降りてどこへ行ってしまうか分からなかったが、急にその乗客がまた車に乗ろうと言い出した。文大統領としてはさぞかし気分が良かったことだろう」(南成旭・高麗大学教授)

 ところがその翌日、日本政府は大量破壊兵器に転用可能でありながら不正に転売した疑惑がある3品目の対韓半導体材料輸出について、韓国が報告も協議にも応じなかったため優遇措置を通常基準に戻すことなどを発表し、韓国は大騒ぎとなった。「経済報復をした日本」への不信と怒りが広がり、米朝会談の高揚を完全に覆いかぶせてしまった。

 文政権発足時に青瓦台国家安保室2次長を務めた金基正・延世大学教授はその時の青瓦台の様子をこう説明する。

 「タイミングが非常に悪いという反応だった。米朝韓の首脳が板門店で会い、朝鮮半島の分断が平和共助に移行しようとしている最中、安倍首相はそれを妨害する者だという悪いイメージを抱かせてしまった」

 元徴用工判決問題への無対応など明らかに関係悪化の諸原因をつくっておきながら、今度は「なぜ日本はそこまでやるのか」と戸惑う韓国。日本政府関係者からは「もはや正常な外交を期待するのは難しい」という声も聞かれる。

 金教授は文大統領には南北融和を急ぐ理由があると指摘する。2007年、自ら秘書室長として臨んだ盧武鉉大統領と金正日総書記の南北首脳会談は「盧大統領の任期がほとんど残っていなかった時点であったため、次の李明博政権で合意がすべてキャンセルされた」。そこで自分が大統領になったら「政権初期にまず緊張緩和から始め、5年の任期中に核問題解決に向けたモメンタムを維持」すれば、次の政権でも「構造的に後戻りできなくなる」と考えているのだという。

 図らずも北朝鮮の方が対話路線に転換し、その後、南北と米朝の首脳がいずれも3回ずつ会談した。しかし、正恩氏が非核化を決意したり、北朝鮮主導による南北統一を断念した形跡は全く見当たらない。

 すでに国際社会は文政権の対北融和は“片思い”であることを悟っているが、一人文大統領だけは「運転手」としてハンドルを握り続けるつもりのようだ。

(ソウル・上田勇実)

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