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    蒲生健二
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    丹羽 文生
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    太田 正利
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    渡瀬 裕哉
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    山田 寛
    山田 寛
    元読売新聞アメリカ総局長

    嫌な予感つきまとう「トランプ訪韓」、その目的は北朝鮮牽制?

     どうも嫌な予感がしてなりません。ホワイトハウスはドナルド・J・トランプ米大統領が、6月下旬に大阪で開催されるG20首脳会合後に、韓国を訪問すると発表しました。トランプ氏のこれまでの言動からすれば、どうも彼の究極的な目的は、中国を牽制するために北朝鮮を自陣営に取り込むことにあるように思えてなりませんが、今回の唐突な訪韓発表も、米中貿易戦争や米朝合意などの文脈に照らせば、「コウモリ国家・韓国」を叩いてなだめて自国陣営に留める、という目的があるのではないか、との疑いを抱かざるを得ません。そして、その懸念がもし当たっていたら、割を食うのはいつも日本なのです。

    米国大統領の訪韓

    ●ホワイトハウス声明文

     ホワイトハウスは現地時間の15日、ドナルド・J・トランプ米大統領が6月の大阪G20サミット後に韓国を訪問し、文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領と首脳会談を行うと発表しました。

    Statement from the Press Secretary Regarding President Donald J. Trump’s Upcoming Travel to the Republic of Korea(2019/05/15付 ホワイトハウスHPより)
     報道発表内容の原文と意訳を紹介しておきましょう。



    President Donald J. Trump will visit the Republic of Korea to meet with President Moon Jae-in, in conjunction with his travel to the region to attend the G20 Summit in late June. President Trump and President Moon will continue their close coordination on efforts to achieve the final, fully verified denuclearization of the Democratic People’s Republic of Korea. The two leaders will also discuss ways to strengthen the United States Republic of Korea alliance and the friendship between our two peoples.

    (仮訳)ドナルド・J・トランプ大統領は6月下旬のG20サミットでこの地域を訪れる機会を利用し、モオン・ジャエ・イン大統領と会うために韓国を訪問する。トランプ大統領とモオン大統領は朝鮮民主主義人民共和国の最終的、完全かつ検証された非核化を実現させるために緊密に協力することを継続する。2人の首脳はまた、米国・韓国間の同盟と両国民の友好を深めるための方策を議論する。


     なんだか唐突なプレス・リリースですね。

     先月、文在寅氏が訪米した際、「2分大統領」というあだ名まで付いたほどの冷遇ぶりと一転し、ホワイトハウスは公式声明として、わざわざ大統領自身が訪韓すると述べたうえで、両国の同盟と友好を強化することを検討する、とまで言い切っているのです。

     一方、韓国メディア『中央日報』(日本語版)などによると、トランプ氏の訪韓は韓国大統領府も発表しています。

    トランプ氏、来月末訪韓…G20を機に韓米首脳会談(2019年05月16日06時22分付 中央日報日本語版より)


     韓国メディアの報道によれば、韓国大統領府の報道官が16日の「書面ブリーフィング」を通じて明らかにしたそうであり、「トランプ大統領の訪韓は文大統領の招待により実現され、これに向けて具体的な日程は今後外交ルートを通じて協議していく」(中央日報)と述べています。

    ●FFVDからスタンスはぶれていないが…

     いずれにせよ、「米国大統領が訪韓する」とホワイトハウスが断言したことは、4月の「2分首脳会談」の冷遇ぶりからすると、一見すると極めて大きな変化です。

    表に見えてくる事実だけを追いかけていくと、米国は日本とともに、依然として「日米韓3ヵ国連携」などと言い続けていますが、その反面、日米両国は最近、あからさまに韓国を外して協議することもあります(『北朝鮮の挑発と「日米の韓国外し」 静観と経済制裁強化が正解』参照)。

     つまり、日米両国は口先では「日米韓3ヵ国連携」などと言いながら、明らかに韓国のことを信頼していないように見受けられますし、実際、韓国はみずから日米の信頼を裏切る行動・疑念を持たれる行動(たとえばレーダー照射に加え、瀬取りに韓国の関与が疑われることなど)を続けています。

     実際、日本は米国を通じて韓国とは事実上の「三角同盟」という関係にありますが、とくに日韓関係はさまざまな要因で極度に悪化しており、少なくとも大阪G20会合で日韓首脳会談は行われない可能性が極めて高いようです(『東亜日報記者は「必要条件」と「十分条件」を混同したのか?』参照)。

     では、こうした「韓国外し」という流れの中で、なぜトランプ大統領が訪韓を決断したのでしょうか?

     ここでヒントになるのが、今回の声明文のなかで触れられている、米国が従来から繰り返している「FFVD」、つまり「最終的で完全かつ検証可能な非核化」(Final, Fully Verified Denuclearization)という表現です。

     米国は最近、北朝鮮との間では「CVID」、つまり「完全な、検証可能な、かつ不可逆な方法での廃棄」(Complete, Verifiable and Irreversible Dismantlement)ではなく、この「FFVD」という表現を好んで使う傾向があります。

     ただし、私の理解では、どちらの表現であったとしても、「北朝鮮から核兵器を除去する」という究極的な目標については、何ら変わるものではありません。そして、わざわざ「FFVD」という言葉を利用したのは、そのメッセージが北朝鮮を念頭に置いたものであると見るのが自然です。

    トランプ流の交渉術?

    ●短距離ミサイルを「脅威と思わない」

     これについて考える前に、『トランプ氏「ミサイルに反応せず」 瀬戸際外交には無視も有効』でも紹介した、重要なインタビューを思い出しておきたいと思います。

     これは、北朝鮮が今月上旬、短距離ミサイルと見られる飛翔体などを相次いで発射したことを受けて、トランプ氏はニューズサイト『ポリティコ』(POLITICO)に、「北朝鮮との信頼関係が損なわれたとは見ない」(つまり、今回の短距離ミサイルなどの発射を基本的には相手にしない)、と述べたものです。

    該当する記事は、次のリンクに掲載されています。

    Transcript: POLITICO interviews President Donald Trump on Joe Biden, impeachment, Bill Barr, North Korea(米国夏時間2019/05/10(金) 20:22付=日本時間2019/05/11(土) 09:22付 POLITICOより)


     インタビュアーはトランプ氏に対し、北朝鮮関連で2つの質問を投げているのですが、それを意訳すると、次のとおりです。


    ・問①:北朝鮮が発射した飛翔体が短距離ミサイルであったことを、昨日、国防総省(ペンタゴン)が明らかにしました。大統領はこれによって金正恩(きん・しょうおん)とあなたとの信頼関係が破棄されたとみますか?この件について怒っていらっしゃいますか?本件にどう対応されますか?

    ・問②:大統領はかねてより、北朝鮮がミサイル発射を停止したことがあなたの功績だと自信を示されて来ましたが、今回の北のミサイル発射が合意の後退だとみますか?


     これらの質問に対するトランプ氏の答えは、「北朝鮮が発射したのはあくまでも短距離ミサイルであり、現時点においては米朝間の信頼を損ねる行為ではない」、というものです。トランプ氏の発言を、原文でそのまま紹介しておきましょう。


    ・答①: No. No. I’m not at all. They’re short-range. They’re short-range and I don’t consider that a breach of trust at all. And you know, at some point I may. But at this at this point, no. These were short-range missiles and very standard stuff. Very standard.

    ・答②: Well, this is  actually, some of them weren’t even missiles. Some of the things that they fired, they weren’t even missiles. But this is short-range, and I don’t consider it a breach of trust. I’ll let you know when I do. I mean, it’s possible that at some point I will. But right now, not at all.

     トランプ氏のこの発言については、「トランプ氏は昨年6月12日のシンガポールにおける米朝首脳会談で合意した『朝鮮半島の非核化』という枠組みが今でも生きていると考えている」、と想定すれば、すっきりと説明がつきます。

     この想定が正しければ、トランプ氏は北朝鮮に対して「対話と圧力」で非核化を勧奨し、もし北朝鮮が非核化に応じれば、米国としては北朝鮮に「すばらしい未来」を保証してやろう、もし非核化に応じなければさらに制裁を厳しくするぞ、と畳みかけているのです。

     そして、こうした交渉における鉄則は、相手国を孤立させて脅すことです。

    ●叩いて躾ける

     そのうえで、視点を韓国に戻してみましょう。

     韓国という国は、米国の同盟国でありながら、中国に擦り寄ったり、北朝鮮に擦り寄ったり、と、まことにコウモリ的な動きをする国です。米国がそんな韓国にかなりのフラストレーションを感じていることは間違いありません。

     さらに、現在の文在寅政権は北朝鮮の「首席報道官」と揶揄されるほどに親北的であり、韓国のさまざまな行動は、結果的に事実上、北朝鮮の核武装を幇助しているようなものです(ちなみに私自身は、韓国政府が北朝鮮の「瀬取り」に関与していることについては、ほぼ間違いないと考えています)。

     トランプ氏はビジネスマン出身者ですから、「言うことを聞かない相手」を脅し、いったんは徹底的に冷遇して心を折り、その後は懐柔して言うことを聞かせる、という交渉術(いわば「叩いて躾ける」)を身に着けていても不思議ではありません。

     現時点で判断する限り、今回のホワイトハウスの発表も、こうした「叩いて躾ける」を実践するものではないかと思うのです。

     さらに、米国独自の事情として、現在、米国が中国に対し、「貿易戦争」を仕掛けている、という点は見逃せません。先週、米中貿易戦争の一環として、米国は多くの中国製品に対して関税を25%に引き上げると決断し、10日からそれが実施に移されました。

     これにより米中の対立構造は深刻化していきますが、いかに米国であっても、中国を正面から敵に回した状態で、北朝鮮問題に割ける余力が減少することは当然のことといえるでしょう。

     そうなってくれば、韓国という「コウモリ国家」をそのまま好きにさせるというわけにもいきませんし、韓国をあまりにも冷遇し過ぎ、韓国が中国と結託することで北朝鮮を利する、ということになっても困ります。

     おそらく、今回のトランプ訪韓決定には、こうした「コウモリ・リスク」を減らしておこうとするトランプ大統領なりの判断もあるのでしょう。

    <H4>「関わるのはおよしなさい」

     ただし、私自身、やはりトランプ氏の朝鮮半島との関わり方を見ていると、不安に思わざるを得ません。

     韓国や北朝鮮は、基本的にきわめて戦争に弱い民族です。そして、戦争に弱い民族ほど、瀬戸際外交をはじめとする奸智(かんち)に長けているものです。

     これまでのトランプ氏の言動から考えて、北朝鮮を自陣営に引きずり込み、「日本+南北朝鮮」で中国を封じ込める、という構想を捨て切れていないように思えてなりません。

     しかし、そのような構想を実現すると、米国と並んで、日本も割を食うことになりかねません。

     たとえば米国は、将来、「米朝国交正常化」が達成された場合、北朝鮮の復興資金というツケを日本に回してくる、ということをやりかねません。1965年の日韓国交正常化など、まさにその「前科」ともいえると思います。

     そして、現在の韓国を見ている限り、日本と北朝鮮との国交正常化が実現した場合、北朝鮮もありもしない歴史問題を捏造しまくり、日本から無限に経済的利益を吸い取ろうとするでしょう。

    ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

     もちろん、トランプ氏の訪韓目的を巡っては、さまざまな仮説が成り立つでしょう。

     論者によっては、「トランプ氏は言うことを聞かない韓国に最後通牒を突きつけに行くに違いない」、と考えているかもしれませんし、逆に、「トランプ氏は本心では韓国との友好を望んでいるに違いない」、と考えるかもしれません。

     ただ、「韓国に最後通牒を突きつける」のであれば、わざわざトランプ氏が直接、韓国に出向く必要などありませんし、「トランプ氏が本心で韓国との友好を望んでいる」のであれば、4月の「2分間首脳会談」というのも不自然です。

     私自身は、現段階で考える限り、トランプ氏の朝鮮半島戦略は、「北朝鮮を非核化したうえで自陣営に引きずり込むこと」を念頭に置いているように思えてならず、もしその懸念が正しければ、そのこと自体、日本にとっては「悪夢のシナリオ」であると考えています。

     ただし、相手は「外交の天才(災)」こと文在寅氏です。

     心のどこかで、予想を遥かに超える「ナナメウエ」な展開で、トランプ氏を激怒させ、一気に米韓同盟が消滅する、といった「ウルトラC」的な展開を期待してしまうのは私だけではないでしょう。


    「新宿会計士の政治経済評論」
    https://shinjukuacc.com/20190516-02/

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