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    太田 正利
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    渡瀬 裕哉
    渡瀬 裕哉
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    山田 寛
    山田 寛
    元読売新聞アメリカ総局長

    トランプ氏「ミサイルに反応せず」 瀬戸際外交には無視も有効

     不肖ながら昨日、当ウェブサイトでは『北朝鮮の挑発と「日米の韓国外し」 静観と経済制裁強化が正解』で申し上げた内容が、どうも正解だったようです。北朝鮮が今月4日と9日、短距離ミサイルと見られるものを含めた複数の飛翔体を発射したことを受けて、ドナルド・J・トランプ米大統領は米ニューズサイト『ポリティコ』(POLITICO)のインタビューで、「北朝鮮との信頼関係が損なわれたとは見ない」(つまり、今回の短距離ミサイルなどの発射を基本的には相手にしない)、という方針を示しています。「瀬戸際外交」に対しては、「無視」は最善ではないにせよ、有効な戦略の1つといえるでしょう。


    ●北朝鮮のミサイル発射をどう見るか

     北朝鮮は今月4日と9日、何らかの飛翔体を打ち上げましたが、これについては次のブルームバーグの記事によれば、米国防総省が日本時間の10日、「短距離ミサイルだ」と認めています。

    North Korea Pushes Trump’s Boundaries With Latest Missile Tests(2019年5月10日 14:57 JST付 Bloombergより)


     ただ、これについては「北朝鮮が米国との核交渉から離脱することを決めた」と見るのは尚早です。

     当ウェブサイトとしては『北朝鮮の挑発と「日米の韓国外し」 静観と経済制裁強化が正解』で述べたとおり、これは米朝核交渉が停滞するなかで、「ギリギリのところ」を狙って米国に揺さぶりを掛けるという、単なるいつもの「瀬戸際外交」と見るべきでしょう。

     いや、もう少し正確にいえば、水曜日の『「売却するぞ、売却するぞ、今度こそ本当に売却するぞ」』でも報告したとおり、韓国が日本に対して行ってきている「自称元徴用工裁判」を巡る資産売却戦略と同じで、しょせんは南北揃って「ギリギリのところを狙う瀬戸際外交」が大好きな民族なのだと思います。

     なぜ北朝鮮は、瀬戸際外交を行うのでしょうか?

     その理由は簡単で、彼らが「弱い」からです。

     おそらく、まともに戦えば、米国には絶対に勝てません(というか、歴史上、米国に勝った国や、負けたとはいえ米国を精神的に消耗に追い込んだ国といえば、全世界でもベトナムと日本くらいでしょう)。

     韓国が国際法と正義に照らして絶対に日本に勝てないから、「道徳的優位性」というわけのわからないものを持ち出して日本を揺さぶるのと同様、北朝鮮は軍事力で絶対に米国で勝てないからこそ、短距離ミサイルで米国を揺さぶるのです。

    ●トランプ氏「北朝鮮の挑発を相手にせず」

     これについて私は昨日、「ミサイル発射という挑発には乗らずに、粛々と現在の経済制裁を維持・強化するだけでよい」と申し上げましたが、トランプ氏は実際にどう考えているのでしょうか?

     これについては米国のニューズメディア『ポリティコ』(POLITICO)に日本時間本日午前付けで、北朝鮮のミサイル発射に関するドナルド・J・トランプ米大統領のインタビューが掲載されています。

    Transcript: POLITICO interviews President Donald Trump on Joe Biden, impeachment, Bill Barr, North Korea(米国夏時間2019/05/10(金) 20:22付=日本時間2019/05/11(土) 09:22付 POLITICOより)


    インタビュアーはトランプ氏に対し、北朝鮮関連で2つの質問を投げているのですが、それを意訳すると、次のとおりです。


    問①:北朝鮮が発射した飛翔体が短距離ミサイルであったことを、昨日、国防総省(ペンタゴン)が明らかにしました。大統領はこれによって金正恩(きん・しょうおん)とあなたとの信頼関係が破棄されたとみますか?この件について怒っていらっしゃいますか?本件にどう対応されますか?


    問②:大統領はかねてより、北朝鮮がミサイル発射を停止したことがあなたの功績だと自信を示されて来ましたが、今回の北のミサイル発射が合意の後退だとみますか?


     最初の質問に対する答えは、「(ICBMなどではなく)短距離ミサイルだから、少なくとも現時点では、ミサイル発射によって信頼関係を破壊された、というものではない」、というものであり、次の質問に対する答えは「北朝鮮が発射したもののなかにはミサイルでないものも混じっている」、といったものです。

     ただし、トランプ氏の回答はシンプルすぎる英語を使っていて、却って意訳し辛いので、この2つの問いかけに対するトランプ氏の回答を、英語でそのまま掲載しておきましょう。


    答①: No. No. I’m not at all. They’re short-range. They’re short-range and I don’t consider that a breach of trust at all. And you know, at some point I may. But at this at this point, no. These were short-range missiles and very standard stuff. Very standard.


    答②: Well, this is — actually, some of them weren’t even missiles. Some of the things that they fired, they weren’t even missiles. But this is short-range, and I don’t consider it a breach of trust. I’ll let you know when I do. I mean, it’s possible that at some point I will. But right now, not at all.


     これを読んでいただければわかるとおり、トランプ氏は、現時点で北朝鮮のミサイル発射を「国連安保理制裁決議違反」と咎めるつもりはないものの、たとえ短距離ミサイルであったとしても発射が続くようであれば、どこかのタイミングで何らかの対抗措置を講じる、という意思を明確に示したといえます。

     要は、「(現段階では)北朝鮮の挑発を相手にしない」という宣言と見て良いでしょう。

    ●「とりあえず追い込む」のは1つの見識

     もちろん、北朝鮮のような小さな国であれば、米国がその気になれば、軍事力で圧倒することは簡単でしょう。ただ、なぜ米国がいつまでたっても北朝鮮に対する軍事的オプション(軍事侵攻、または局所爆撃)を適用しないのかについては、一見するとよくわかりません。

     しかし、これについては「過去の歴史」を学べば、何となく見えて来ます。

     それは、米国も「過去の失敗」に学んでいるからではないでしょうか。

     米国が北朝鮮に軍事侵攻をためらう理由はいくつかあるのですが(たとえば中国、ロシアと陸で国境を接していること、両国からの介入が懸念されること、など)、おそらく、米国が最も恐れているのは、「北朝鮮のイラク化」ではないかと思います。

     2003年、米国はイラクに軍事侵攻し、サダム・フセイン政権を打倒することに成功しました。しかし、「フセイン政権を打倒し、すぐに民主的な選挙を実施すれば、イラクに平和な親米国家が出来上がる」という目論見は、すぐに打ち砕かれることになります。

     米ワシントン・ポスト(WP)によると、イラク戦開戦後、昨年3月までの時点で米軍に5,000人近くの犠牲者が出ているそうですが、フセイン政権を打倒したことにともなう治安の極度の悪化、国土の荒廃は目も当てられない状況です。

    15 years after the Iraq War began, the death toll is still murky(2018/03/20付 WPより)https://www.washingtonpost.com/news/politics/wp/2018/03/20/15-years-after-it-began-the-death-toll-from-the-iraq-war-is-still-murky/?noredirect=on&utm_term=.92cf5514a965


     このように考えていくならば、米国はイラク式の「軍事侵攻」ではなく、「厳格な経済制裁によってとりあえず北朝鮮を干上がらせて、白旗を上げる」のを待っているのかもしれません。

     もちろん、来年改選を迎えるトランプ政権にとっては、時間が無限にあるわけではありませんが、それでも米国の側にとっては、今日、明日中に北朝鮮との交渉を妥結しなければならない、という時間的な制約があるわけでもありません。

     その意味で、瀬戸際外交に対しては、「無視」は最善の選択肢ではないにせよ、現時点では非常に有益な選択肢であることは間違いないでしょう。

    ●北朝鮮は日本を挑発して来るはず…?

     こうしたなか、トランプ氏が北朝鮮の短距離ミサイル問題に静観を決め込んでいる(ようにみえる)ことを受け、北朝鮮としては米国を振り向かせるために、さまざまな手段を駆使してくることは目に見えています。

     この点、いままでだと韓国を「走狗」にして米国との調整役をやらせていました。

     しかし、「2分大統領」こと文在寅(ぶん・ざいいん)氏を筆頭に、韓国はいまや米国からの信頼を失っており、北朝鮮から見ると、そんな韓国は「走狗」にすらなりません。そうなってくれば、当然、「韓国に代わる対米窓口」を探る動きが出てくるはずです。

     その「韓国に代わる対米窓口」とは、どこでしょうか?

     「米中貿易戦争」で米国から苛められている真っ最中の中国でしょうか?それとも、「ロシア疑惑問題」やエドワード・スノーデンの「ウィキリークス問題」、ウクライナ問題やシリア問題などで米国とギクシャクしているロシアでしょうか?

     おそらくその答えは、中国でも、ロシアでもありません。

     「日本」です。

     考えてみればわかりますが、日本は安倍晋三総理大臣がトランプ米大統領と3ヵ月連続で首脳会談を行うほど関係が密接ですし、外相・防衛相の「2+2」会談に加え、菅義偉(すが・よしひで)官房長官の訪米が行われるなど、あきらかに安倍政権下で関係が強化されています。

     そうなると、米国を振り向かせたい北朝鮮にとっては、日本こそが交渉窓口として最適なはずです。

    安倍総理は北朝鮮に対し「条件を付けずに(金正恩と)会う」と述べていますが、ここは思い切り強気で、

    ・拉致されたすべての日本人の即時返還
    ・拉致事件の首謀者、実行犯すべての日本への引き渡し


    を要求すべきです。何なら、国際原子力機関(IAEA)の核査察費用を分担する、と申し出ても良いでしょう(ただし、北朝鮮が核開発と日本人拉致事件の完全解決を図らない限り、人道支援などは1銭も行ってはなりません)。

     日本はこの機会を、「CVID」あるいは「FFVD」方式での核放棄と、日本人拉致事件の完全解決のために最大限活用すべきでしょう。

    (※「CVID」とは「完全な、検証可能な、かつ不可逆な方法での廃棄」(Complete, Verifiable and Irreversible Dismantlement)、「FFVD」とは「最終的で完全かつ検証可能な非核化」(Final、Fully Verified Denuclearization)のこと。)


    「新宿会計士の政治経済評論」より転載
    https://shinjukuacc.com/20190511-02/

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