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米朝決裂、「バッドディールよりノーディール」これに尽きる

 『【速報】米メディア「米朝首脳、合意に達せず」』で紹介したとおり、昨日、ベトナムの首都・ハノイで行われた米朝首脳会談は、結局は「ノーディール」で終わりました。日本政府関係者はきっと、胸をなでおろしていることだと思います。ただ、そもそも論として、米国と北朝鮮の思惑には最初からボタンのかけ違いがありました。それは、「段階的核放棄論」か「CVID」か、という違いです。国際社会は「段階的核放棄論」を絶対に許してはなりませんし、トランプ氏が「段階的核放棄論」を前提に金正恩との会談に応じたこと自体、「軽率すぎる」との誹りを受けるべきです。



北朝鮮は犯罪者集団

 当ウェブサイトでは昨日、「速報」として米朝首脳会談の決裂という話題を紹介しました(『【速報】米メディア「米朝首脳、合意に達せず」』参照)。

 これについては内外メディアがすでに多数の関連報道を出しているとおり、米側は「北朝鮮が核放棄の実質的な措置を取ろうとしないのに制裁緩和を求めて来た」、北朝鮮側は「寧辺(ねいへん)にある核施設の破棄に応じた部分的な制裁緩和を求めただけだ」、と、両者の言い分は対立しているのだとか。

 事前の予定では、米朝両国は共同声明を発表し、その後、昼食会を実施するという段取りでしたが、現実には昼食会は開かれず、憮然とした表情で会場を後にする金正恩(きん・しょうおん)の映像なども報じられています。

 ただ、先日も『「国交正常化」?正気ですか、北朝鮮は犯罪者集団ですよ?』などでも議論したとおり、そもそも論として、北朝鮮が核放棄に応じるはずなどないことは、自然に考えればわかる話です。

 北朝鮮(というか金正恩)が国民生活を犠牲にしてまで核開発にいそしむ理由は、「核兵器さえあれば米国と対等に交渉できる」という歪んだ自信であり、また、大量破壊兵器はほかのテロ支援国家やテロリストらに高値で売ることもできるという「そろばん勘定」にあります。

 逆に言えば、北朝鮮に好きに核開発させていれば、やがて北朝鮮製の核がテロリストの手に渡り、全世界の主要都市で炸裂するという悪夢も絵空事ではありません。それなのに、中国やロシアは北朝鮮から核を取り上げるための実効的な努力を行っていません。

 さらに、日本、米国とともに「自由民主主義同盟」の一角を担っていたはずの韓国は、いまや、北朝鮮の手先のような文在寅(ぶん・ざいいん)氏が、大統領として北朝鮮の核武装をむしろ積極的に幇助している始末です。

 全世界が全力で北朝鮮を止めねばならないのに、北朝鮮に隣接する中国、ロシア、韓国の各国は、世界平和に対してあまりにも無責任です(※もっとも、中露韓3ヵ国の無責任さについては、北朝鮮問題に限った話ではありませんが…)。

行動対行動、あるいは段階的核放棄

 もう1つ、北朝鮮核放棄交渉を巡って逃せないポイントが、「段階的核放棄論」です。

 これは、「いきなり北朝鮮が核兵器を全廃するのではなく、まずは核放棄までの道筋を立て、相互に信頼を醸成したうえで、北朝鮮が核放棄のプロセスを歩むのに応じて、段階的に制裁を解除すべきだ」、とする議論です。

 過去何回、日本は、米国は、国際社会は、この北朝鮮による「段階的核放棄論」に騙されてきたことでしょうか。

 この「段階的核放棄」というアプローチを取る限り、北朝鮮は一部の核関連施設を爆破して見せて「これで核開発はできなくなった」とうそぶき、国際社会が制裁を部分解除したのを見届けて、しっかりと核・ミサイル開発を継続する、ということを繰り返すのは目に見えています。

ちなみに、日本国内でこの「段階的核放棄」論を強く唱えている政党が、日本共産党です。

「行動対行動」が原則/朝鮮半島非核化 井上氏が指摘(2018年6月20日付 しんぶん赤旗より)


日本共産党の井上哲士参議院議員は昨年6月19日の参院外交防衛委員会で河野外相らに対し、


「『行動対行動』を通じて信頼醸成を図り、朝鮮半島の非核化と平和体制構築のプロセスを前に進める」


ことを要求したのだとか。

 「行動対行動」とは、早い話が段階的核放棄論であり、こんなことを政府に要求している時点で、日本共産党が日本の国益を破壊しようとしている政党であることは明らかです。

李容浩の段階的核放棄論

 こうしたなか、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の日本時間本日早朝の記事に、興味深い下りがあります。

U.S., North Korea Trade Blame for Failed Summit(米国時間2019/02/28(木) 13:41付=日本時間2019/03/01(金) 03:41付 WSJより)


 これによれば、北朝鮮の外相の李容浩(り・ようこう)は記者団に対し、北朝鮮としては米国に対し、「市民を対象にした制裁を解除するならば、寧辺の核施設を完全に破棄すると提案した」などと述べているのですが、この発言が事実なら、李容浩ら北朝鮮幹部の認識は甘すぎます。

 国際社会が求めているのはCVID(※)ないしはFFVD(※)方式による核放棄です。

 (※「CVID」とは「完全な、検証可能な、かつ不可逆な方法での廃棄」(Complete, Verifiable and Irreversible Dismantlement)、「FFVD」とは「最終的で完全かつ検証可能な非核化」(Final、Fully Verified Denuclearization)のこと。)

 そして、北朝鮮がCVID方式を受け入れない場合であれば、国際社会は北朝鮮に対する制裁を解除しない、というのが、日本や米国からの一貫したメッセージだったはずです。

ノーディール自体は歓迎すべきだが…

 昨日、当ウェブサイトでは『米朝首脳会談と「今、北朝鮮制裁を解除すべきではない理由」』のなかの『やっぱり経済制裁の維持と強化が正解』で、


「北朝鮮に対する経済制裁については、維持するか、あるいはむしろ強化するのが適切」


だと申し上げました。

 その意味で、今回の「ノーディール」自体には歓迎したいと思います。

 ただ、そもそも論として、北朝鮮が核放棄に応じるわけなどないということは、北朝鮮のこれまでの行動からも明らかです。トランプ大統領は北朝鮮との首脳会談に応じたこと自体、「軽率」とのそしりを免れません。

 また、事前の報道だと、トランプ氏が北朝鮮に対して何らかの譲歩に踏み切るのではないか、との懸念も出ていました(いわゆる「バッド・ディール」論)。米国はアジアにおける最重要同盟国である日本を不安にさせるような行動を取るべきではありません。

 いずれにせよ、今回、米朝首脳会談が事実上決裂したことについては、私個人としては歓迎したいと思いますが、だからといって、トランプ氏の行動のすべてを支持するつもりもないのです。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 さて、金正恩と並び、今回の「ノーディール」により窮地に立たされたのは、韓国でしょう。

 文在寅氏は開城(かいじょう)工業団地や金剛山(こんごうさん)観光事業の再開、南北鉄道連結事業など、北朝鮮を支援するパッケージを次々と打ち出しています。まるで彼の政策目標は「大韓民国を金正恩に献上すること」にあるかのようです。

 もっとも、文在寅氏は北朝鮮関連政策以外に関心がなさすぎるためでしょうか、国内経済政策も外交(対米外交、対日外交)もムチャクチャであり、北朝鮮との赤化統一が実現する前に、政権が倒れてしまうかもしれません。

 ただし、この点については本日の「三・一節」とも絡み、韓国メディア・ウォッチを行い、何か興味深い話題を見つければ、随時、当ウェブサイトで紹介していきたいと思います。


「新宿会計士の政治経済評論」より転載
https://shinjukuacc.com/20190301-02/

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