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    坂東 忠信
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    遠藤 哲也
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    蒲生健二
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    服部 則夫
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    石井 貫太郎
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    河添 恵子
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    宮塚 利雄
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    中澤 孝之
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    丹羽 文生
    丹羽 文生
    拓殖大学海外事情研究所准教授
    太田 正利
    太田 正利
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    ペマ・ギャル...
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    佐藤 唯行
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    渡瀬 裕哉
    渡瀬 裕哉
    早稲田大学招聘研究員
    山田 寛
    山田 寛
    元読売新聞アメリカ総局長

    新日鐵住金巡る徴用工訴訟で原告側が資産売却へ?

    すでに複数のメディアが報じていますが、昨年10月30日の「徴用工判決」で敗訴した新日鐵住金に対し、原告側の代理人は差し押さえているPNR社の株式を売却する手続に入ると宣言したようです。ただ、私などはこの報道を見て、頭の中に真っ先に浮かんだ疑問符が、「いったいどうやって換金するつもりだろう?」というものです。一般に譲渡制限が付されているケースも多い非上場株式を売却するためには、かなりの時間とコストが掛かりますし、下手をすればせっかく勝ち取った損害賠償金が吹き飛ぶくらいの費用を取られるかもしれないからです。

    遂に原告側が株式売却へ?

     韓国の大法院は昨年10月30日、自称元徴用工らの訴えを認め、新日鐵住金に対して原告らへの損害賠償の支払いを命じる判決を下しました。これが、いわゆる「徴用工判決」問題であり、この判決は、1965年の日韓国交正常化の際に締結された「日韓請求権協定」にも違反するものでもあります。

     こうした事情から、日本政府は韓国に対して強く反発しており、今年1月9日には韓国側に対して日韓請求権協定第3条第1項に基づく「協議」を申し入れましたが、韓国側からはこれに対する回答がない状況です(『徴用工判決問題に対する仲裁手続移行の遅れ、なぜ?』参照)。

     一方、韓国側では原告らの代理人が新日鐵住金と韓国・ポスコの合弁会社である「ポスコ・ニッポン・スティールRHFジョイントベンチャー」(PNR)の株式の一部を差し押さえました(『株式差押えは「日本企業に実損出ていない」の屁理屈のため?』参照)。

     原告側は新日鐵住金が協議に応じない場合、株式の強制売却処分に踏み切ると警告していたのですが、これを巡って金曜日、「ついに原告側が株式売却に踏み切ると宣言した」と、複数のメディアが報道しています。


    「元徴用工」側 日本企業に“乗り込み” 日韓関係 泥沼化(2019年2月15日 18:38付 FNNプライムより)

    新日鉄住金の資産売却へ=徴用工訴訟で韓国原告側(2019年02月15日20時11分付 時事通信より)

    徴用工差し押さえ、河野氏が韓国側に懸念伝える(2019/02/15 21:10付 読売新聞オンラインより)


     これらのメディアの報道によれば、原告側の代理人らは東京都区にある新日鐵住金の本社を訪れ、協議を申し入れたものの、昨年11月12日に訪問した時と同様、門前払いを喰らったそうです。もしかして、アポなしで訪問したのでしょうか?

     (※どうでも良い話かもしれませんが、ふとした疑問があります。彼らは前回といい、今回といい、「企業を訪問する時にはアポイントが必要だ」という、先進国ではごくあたりまえのルールを理解していないのでしょうか?まるで立憲民主党議員のような振る舞いですね。)

     これについて時事通信は、


    「新日鉄住金を相手取った訴訟の原告側弁護士は15日、東京都内で記者団に対し、既に差し押さえた同社の韓国国内の資産の売却命令を裁判所に申請すると表明/実力行使に踏み切る形となった」


    などと報じています。

    どうやって換金するのか?

     ただ、ここでシンプルな疑問があります。

     年初にも考察したとおり、一般に非上場株式の換金・売却処分は著しく困難です。

    徴用工「差押え」の不思議 非上場株の換金処分は著しく困難(2019/01/03 05:00付 当ウェブサイトより)

     その理由はいくつかあるのですが、まず、最初に考えられるハードルは、「強制売却する」にしても、その株式を買ってくれる人を見つけてくることが難しい、という点にあります。これが、「上場株式」の場合との一番大きな違いです。

     もし原告側が差し押さえている株式が上場株式であれば、「換金処分して良い」という裁判所の許可が出れば、ただちに市場で時価により売却すれば、現金が手に入ります。その際の手数料は、証券会社などに支払う手数料くらいなものでしょう。

     しかし、非上場株式の場合、そもそも「市場」が存在していません。このため、換金処分しようと思えば、まずはその会社の株式を買ってくれる人を見つけることが必要ですが、強制競売手続に掛けたとしても、落札者が出てくる可能性は非常に低いでしょう。

     なぜなら、不動産や上場株式などと違って、非上場株式の場合、それを買っても、どうせ少数株主の地位に留まりますし、得られる権利といえば、わずかばかりの議決権と、せいぜい配当金の請求権が生じるくらいで、とうてい、コストには見合わないからです。

    譲渡制限が付されていることが多い

     問題は、それだけではありません。それが、「株式の譲渡制限」条項です。

     一般に、合弁会社の場合、合弁の親会社(この場合は新日鐵住金とポスコの2社)が、2社以外の第三者が株主として入ってくることを嫌います。このため、常識的には「株式の譲渡制限」条項を付しているはずです(譲渡制限が付されていない、という可能性も皆無ではありませんが…)。

     この「譲渡制限条項」が付いていた場合、仮に売却先の第三者が見つかったとしても、株式をその第三者に売却して良いかどうかについて、いちいち、会社(PNR社)の取締役会の承認を求める必要があります。

     当然、PNRは新日鐵住金がポスコと並ぶ大株主ですから、取締役会は新日鐵住金の意を受けて動きます。常識的に考えると、裁判所の競売手続で差し押さえられた株式の買主が見つかったとしても、PNRの取締役会がその譲渡を承認するとも思えません。

     この場合、実務的には、原告側は「PNRが指定する第三者への売却」か「PNR自身による自己株式の買い取り」を請求することになると思いますが、その場合は、一般的に、1株いくらで買い取れば良いのか、その公正な価格を計算する必要があります(いわゆるバリュエーション)。

     著者の知り合いの説明によれば、わが国の場合、バリュエーションを行う会社に買い取り価格の計算を依頼すれば、最低でも数百万円のコストと数週間の時間がかかるそうです。

     今回、株式を差し押さえているのは、原告4人のうち2人であり、差し押さえた株式については「日本円に換算して4000万円弱」との報道がありましたが、現実に自己株式の買い取りを行う場合には、その正確な価格を計算するために、数百万円という金額が吹き飛んでしまうかもしれません。

     私が新日鐵住金の意向を受けたPNR社の取締役だったとすれば、間違いなく、嫌がらせ目的でわざと高い会社のバリュエーションを行い、数百万円以上のコストを原告側に負担させようとするでしょう。

     (※もっとも、法治主義が機能していない韓国のことですから、裁判所がバリュエーション手続を無視してPNRに対して株式を強制的に買い取らせようとする可能性は否定できませんが…。)

    これを待っていたのか?

     ところで、『徴用工判決問題に対する仲裁手続移行の遅れ、なぜ?』を執筆した際、「日本政府は日韓請求権協定第3条第2項措置(仲裁手続)にさっさと移行すると思っていたのに、なぜこの手続に移行しないのか?」という点が謎である、と申し上げました。

     これについてはあえて私の仮説として、


    ・(A)首相官邸と外務省の間で綱引きをしている
    ・(B)日本政府としてはわざと時間稼ぎをしている


    の2つを提示しました。

     冒頭で紹介した外部リンクのうち、時事通信の記事には、


    「日本政府は「賠償問題は1965年の日韓請求権協定で解決済み」との立場で、協定に基づく2国間協議を韓国政府に求めているが、韓国側は回答していない。原告側が差し押さえ資産の現金化に向けた手続きに着手すれば、日本政府はさらに反発を強め、仲裁委員会の設置要請や対抗措置の本格検討に入るとみられる。」(※下線部は引用者による加工)


     という下りが出てくるのですが、これが事実であれば、(A)(B)のうち、(B)が正しかった、という可能性が出てきます。

     つまり、日本政府としては1月9日の段階で、どうせ韓国は日韓請求権協定に基づく協議にも仲裁にも応じないだろうと考え、できるだけ時間がかかる手続を踏もうとしている、という可能性です。

     では、この可能性が正解だったとして、なぜ日本政府はそんなことをしようとしているのでしょうか?

     あくまでも私の推論ですが、これには少なくとも3つの狙いがあります。

     1つ目は、日本企業や日本国民に対し、韓国が無法国家であるという事実を周知徹底することです。というのも、とくに日本企業は意思決定が遅く、また、企業によってはカントリー・リスク管理に関する意識が低いケースもあるため、わざと手続きに時間を掛け、アナウンスメント効果を狙っている、というものです。

     2つ目は、時間稼ぎをしている間に、韓国がどんどん、日韓関係を破壊するような「自爆」を繰り返すことを狙っている、というものです。実際、徴用工判決後も昨年12月20日のレーダー照射事件、今年2月の国会議長による天皇陛下侮辱事件などが発生しています。

     そして3つ目は、わざと手続に時間を掛けることによって、日本が遵法国家であり、韓国が無法国家である、という事実を、全世界に向けて発信する、という狙いです(※そのわりに外務省などによる対外宣伝がなされているという印象はありませんが…)。

     つまり、2つ目の「時間稼ぎしていれば韓国側が勝手に自爆する」という点に照らせば、時事通信の記事どおり、世界(とくにアメリカ)に対して「日本は韓国の不法行為に怒りを持っている」という点を見せつける、という効果が得られることは確かです。

    (※なお、誤解して欲しくないのは、あくまでもこの1~3は、私が「賛同して」書いているものではなく、私が日本政府(あるいは安倍政権)の気持ちを「忖度(そんたく)」して申し上げているだけの話である、という点です。)

    手の内を明かさない日本政府

     正直、私自身にとっては日本政府の狙いはよくわかりません。

     ただ、菅義偉(すが・よしひで)内閣官房長官などは、常々、「わが方の手の内を明かさない」と述べているため、おそらく、日本政府としては、すでに何らかの対抗策は考えているのだと思います。

     ところで、この手の話をしていると、すぐに「日本は対韓制裁に踏み切るべきだ」という議論が出て来ますが、以前も『「伝家の宝刀」の欠陥 韓国に対する経済制裁を整理する』https://shinjukuacc.com/20190124-01/などでも議論したとおり、日本の対韓制裁は有効に使えばかなり強いものではあるものの、「刀の抜きどころ」は非常に難しいものです。

     しかも、日韓間の懸案は、慰安婦財団の一方的解散問題、レーダー照射問題、韓国国会議長による陛下侮辱事件など、ほかにも山積している状況にあります。

     このように考えると、日本政府が現時点で手の内を明かさず、かつ、手続についてもタイミングを計っているように見えるのは、日本政府なりに何らかの思慮があってのことだと考えて良いでしょう。

     いや、少なくとも私はそのように考えたいと思うのです。


    「新宿会計士の政治経済評論」より転載
    https://shinjukuacc.com/

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