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    古川 光輝
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    細川 珠生
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    井上 政典
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    伊勢 雅臣
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    河添 恵子
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    宮本 惇夫
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    中村 仁
    中村 仁
    元全国紙経済記者
    石平
    石平
    評論家

    危険な韓国の「甘えの構造」

     かなり昔の話だが、日本人の精神性など解明した精神分析学者・土居健郎の「甘えの構造」(1971年)がベストセラーとなったことがあった。当方も読んで「なるほど」と感動したことを思い出すが、どうやら「甘えの構造」は日本人だけではなく、海を越えた隣国韓国にも別の「甘えの構造」があることが明らかになってきた。以下、説明する。

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    閣僚会議でスピーチする文在寅大統領(2019年1月22日、韓国大統領府公式サイトから)

     日韓の両国関係は目下、緊迫している。旧日本軍の「慰安婦」問題の見直しに始まり、日本の植民統治時代の「徴用工」への賠償金問題、そして韓国海軍艦艇が日本の哨戒機に火器管制レーダーを照射した問題まで、次から次へと難題が浮上してきた。「歴史の正しい認識」問題は「過去」がテーマだ。だから21世紀に生きる日本側も反論に窮することがあったが、日本の哨戒機への韓国海軍の火器管制レーダ照射問題は「現代」生じた問題である。もちろん、両国間の海上でのいがみ合いも「現代」という書割を呈しているが、実際は「過去」が「現代」という舞台を借りて、暴れ出したとでもいうべきかもしれない。

     しかし、日韓間で生じた海上でのいがみ合いは「現代」生じた事件だけに、日本側はチャンスが出てくる。韓国の主張を検証し、その間違いを主張できるチャンスだ。例えば、日中間で対立する「南京事件」は「過去」の問題だ、日本側は中国の主張があり得ない暴論だと指摘したとしても限界がある。「過去」の問題だからだ。しかし、繰り返すが、韓国海軍艦艇の日本哨戒機への火器管制レーダ照射は「現代」生じたのだ。韓国側の主張に対して、日本側は説得力のある反論を提示できるわけだ。これが当方がいう「チャンス」の意味だ。この機会を利用すれば、韓国の他の「過去」問題の主張に対してもその信頼性を揺るがすことができるわけだ。チャンスを掴むべきだ。

     当方は軍事問題の専門家ではないから、詳細な両軍のやり取りはその分野の専門家に委ねるとして、両軍のやり取りを見て感じた2点について当方の考えを述べる。

     火器管制レーダー照射問題が出た時、「問題」は韓国艦艇が日本の哨戒機に照射したか否かだった。その「答え」は本来、「照射した」か「照射していない」の2つの返答しかない。ところがこの「問題」がいつの間にか消え、「日本の哨戒機が韓国海軍艦艇に近接飛行していたか否か」にすり替わってしまった。テーマが変わったのだ。最初の「問題」の答えが出ない段階で、別の「問題」が飛び出してきたのだ。その主要責任はやはり韓国側にあると言わざるを得ない。

     「火器管制レーダー照射」の真偽に決着つける前に別のテーマが介入し、本来の問いがぼけていったわけだが、これは明らかに韓国側の恣意的なテーマのすり替えだ。しかし、「問題すり替え工作」をするということは、韓国艦艇が日本の哨戒機に火器管制レーダーで照射したことを間接的に認めることにもなる。韓国側が照射していないのであれば、「わが国は照射していない」と宣言し、「照射した」という日本側の主張を論破することに全力を投入すればいいだけだ。テーマ替えなどは不必要だ。

     日本側が当時の状況を撮影した画像を公開するなど、異例の攻勢に出てきたため、韓国側は戸惑い、「照射の真偽」から「日本の哨戒機が韓国艦艇に余りにも接近したことが大きな問題だ」という別のテーマにすり替えていったわけだ。後ろめたさがなければ、テーマを変えるなどの小細工をする必要はない。以上から、韓国海軍が日本の哨戒機に火器管制レーダを照射した可能性が限りなく濃厚という結論が出てくる。

     2点目は、韓国が急きょ出してきた2番目のテーマだ。韓国側は「日本の哨戒機は韓国海軍の艦艇に危険を感じるほど低空接近してきた」と批判する。それに対し、日本側は海上での国際法を挙げ、「わが哨戒機は十分距離を取って飛行していた」とデータを公表して反論した。問題は韓国側の言い分だ。韓国海軍艦隊は「日本の哨戒機が低空接近したので危険を感じた。暴発の恐れすら出てくるから、今後は急接近しないように」と警告を発したのだ。

     当方は日本側が挙げた国際法の根拠を信じる。多分、韓国側も日本側が挙げた国際法を知っているはずだ。すなわち、日本側の反論は極めて官僚的だが、説得力がある。それに対し、韓国側は「危険を感じる距離」と受け取り、日本側に警告を発したわけだ。

     韓国側にとって国際法上の規約、過去に締結した外交協定にどのように明記されているかという以上に、「われわれは……感じる」という主観的な判断が国際法より重要となる。今回の韓国海軍の説明もその例外ではないのだ。韓国側の説明をもう少し説明すれば、「国際上の規約はそうだが、問題はわが海軍艦艇が日本の哨戒機の接近に危険を感じたという事実だ」ということになる。国際上規約より、主観的な受け取り方を重視する。ルールの破壊だ。

     最近では慰安婦問題の日韓合意(2015年12月)を破棄、そして日韓基本条約、請求権協定(1965年)を無視した最高裁の判決、そして今年3月には「日韓併合条約」(1910年)を無視して韓国臨時政府発足100年記念式典の挙行など、韓国が国際法、外交協定に対し如何にルーズであり、違反しているかは一目瞭然だ。

     韓国側は「協定は当時の関係者が締結したもので、自分には関係ない」といった態度だ。文大統領は慰安婦問題での日韓合意破棄の理由として「犠牲者の声が十分に反映されていない」と弁明した。大統領が外交合意をそのような説明だけで破棄できるのが現在の韓国なのだ。

     これではどの国が真剣に韓国と外交交渉をし、外交合意を模索するだろうか、ひょっとしたら明日には無効となる協定作成のために膨大なエネルギーを投入したいと考える国や外交官がいるだろうか。

     韓国は歴史的にも大国の支配を受けてきた。その結果、前日のコラムでも指摘したが、強者へのルサンチマン(怨恨)が生まれてきた。同時に、そのルサンチマンは「道徳的優位性」という感情を生んできたが、時間の経過と共に「道徳的優位性」は変質し、「われわれは被害者だ」という「甘えの構造」が生まれてきた。だから、「強国と締結した協定などは意味がない。被害者のわが国が十分ではないと判断すれば、いつでも破棄できる」という思考が強まっていったわけだ。これを韓国の「甘えの構造」と呼ぶことにした。

     韓国の「甘えの構造」は日本とは異質だろう。日本人は過去の問題を水に流す傾向が強い。いい意味で諦観思想が強い。過去を絶対に忘れないユダヤ人とはその点は好対照かもしれない。韓国の「甘えの構造」は過去の支配者、すなわち、日本に対して最大限に発揮される。日本に対しては何をしても許される、といった病的な思考となってくる。

     韓国がその「甘えの構造」を米国に対し発揮すればどのような結果をもたらすか考えれば分ける。米国を含む欧米社会は言葉を重視する。だから、2か国間で締結した外交文書を突然破棄すれば、激怒し、必要ならば即制裁を科すだろう。米軍の哨戒機に対し韓国海軍艦艇が火器管制レーダーを照射した場合、米軍は躊躇することなく韓国艦艇にミサイル攻撃を加えるだろう。

     韓国側も米国と日本の違いを理解しているから、米哨戒機に向かって火器管制レーダーを照射するという愚行はしないだろう。ただし、日本の哨戒機に対しては何でもOKという「甘えの構造」が海軍関係者にも見られるとすれば、恐ろしいことだ。

    (ウィーン在住)

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