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    伊勢 雅臣
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    河添 恵子
    河添 恵子
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    宮本 惇夫
    企業・経営
    中村 仁
    中村 仁
    元全国紙経済記者
    石平
    石平
    評論家

    文在寅大統領の「2つの夢」の行方

     実現できるかどうかは別にして、夢をもつことができる人は幸いだ。独週刊誌シュピーゲル最新号(12月1日号)の中で、若者の間で今人気のあるカナダのトロント大学心理学教授ジョーダン・ペーターソン氏は、「目標がなければ価値も生まれてこない」と述べている。その意味から、韓国の文在寅大統領は幸福な政治家であり、価値を感じる日々を送っていることになる。なぜならば、文大統領には「2つの夢」の実現という目標を持っているからだ。一つは北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の年内訪韓であり、もう一つは世界に13億人の信者を抱え、自身も信者であるローマ・カトリック教会の最高指導者ローマ法王フランシスコの訪朝だ。

    800

    「金正恩氏の訪韓」について、ニュージランド訪問途上の機内で記者団に語る韓国の文在寅大統領(韓国大統領府公式サイトから、2018年12月1日)

     この「2つの夢」の実現性と現実性を数年前に聞かれたら、「限りなくゼロ」と答えざるを得なかったが、親北派で人権弁護士だった文在寅大統領が現れてからは、限りなくゼロだった2件の訪問は次第に現実味を帯び、ひょっとしたら実現できるかもしれない、という微かな期待すら生まれてきたのだ。

     そのように考えていた時、文大統領の「2つの夢」に関連したニュースが韓国から流れてきた。韓国中央日報(日本語電子版)8日は「ローマ法王フランシスコの来年度の海外訪問日程に北朝鮮は含まれなかった」という 米政府系ラジオのボイス・オブ・アメリカ(VOA)の情報を報じた。ある意味で、というより、当然だろう。信者がいないばかりか、「信仰の自由」が世界で最も悪い独裁国・北朝鮮を訪問し、金正恩氏と会見してもフランシスコ法王は何を語ることが出来るだろうか。せいぜい、「健康に留意し、国民のために良き統治をして下さい」というが精一杯だろう。金正恩氏からサウロがパウロに回心したようなドラマは期待できないからだ。

     もう一つの夢、金正恩氏の訪韓だが、韓国の世界日報(セゲイルボ)が8日報じたところによると、「金正恩委員長のソウル答礼訪問が来週後半に決まった。13日と14日のうち13日が有力視される」という。この情報は政府筋からというが、はっきりいって当方は疑っている。金正恩氏の安全問題だけではない。韓国内で文政権の経済失政に対し抗議の声が高まっている時期だ。抗議のターゲットが文政権から金正恩氏に向かう危険性も十分考えられるのだ。駐韓のマーク・リッパート米大使がソウルで暴漢に襲撃された事件(2015年3月15日)を思い出すまでなく、狂人は至るところにいるからだ。

     もちろん、実現できれば、韓国の親北派の間で金正恩フィーバーが起きるかもしれないし、低迷していた文政権の支持率が少し上がるかもしれない。問題はそれだけだということだ。国民が現在直面している経済困窮は変わらない。一方、文大統領は自分が推進してきた南北融和政策に自信をもち、国民経済の活性という国民が最も願っている課題に対して益々関心が薄れていくだけだ。最初のローマ法王の訪朝と同じだ。たとえ実現したとしても劇的な変化は期待できないのだ。むしろ“祭りの後”が怖い。

     文大統領の「2つの夢」はその実現性、現実性は別として、実現したとしても北の人権問題が改善され、「宗教の自由」が認められることはないだろうし、北の非核化が促進されるということも考えられない。実質的成果が期待できない価値の少ない夢と言わざるを得ないわけだ。

     ただ文在寅大統領だけが青瓦台(大統領府)で自然にこぼれてくる笑いを必死に抑えながら“一人飯”を享受するだろう。朝鮮半島に、そして国際社会にとって、文大統領の「2つの夢」はメディアの一時的なフィーバー以外に実質的な成果は期待できない「夢」なのだ。文大統領の夢には最初から問題があった、という思いすら沸いてくるのだ。

     米公民権運動の黒人指導者マーチン・ルーサー・キング牧師は「私には夢がある」(I Have a Dream)と語り、米国内の黒人への迫害がなくなり、白人と黒人が分け隔てなく過ごせる米国社会を夢見た。文大統領の「2つの夢」がキング牧師のような歴史的な夢となるだろうか。自国の国民が願っている国民経済の回復には熱意を注がず、夢の実現の褒賞(国際社会からの認知からノーベル平和賞受賞まで)に関心が行っているのだ。

     夢を持ち、それを実現するために日々、規律ある生活を送り、努力する姿は本来、美しい。文大統領の「2つの夢」からなぜその美しさを感じないのか考えざるを得ないのだ。

    (ウィーン在住)

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