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体制維持へ米と「核取引」狙う

検証 南北首脳会談 (中)

 北朝鮮が今回の南北首脳会談とその後の米朝首脳会談に臨む決断を下した背景には国連をはじめとする対北経済制裁で北朝鮮がダメージを受け始めたことがあるといわれる。実際、韓国政府は「北のダメージ」を確認していたようだ。
 このままでは経済が破綻し、核を口実に米国の軍事攻撃を招きかねないという恐れを金正恩朝鮮労働党委員長が抱いたとしても不思議はない。

 北朝鮮内部事情に詳しいある消息筋は「金委員長はこの件で2人の側近と戦略を練った可能性がある」と指摘する。一人は金委員長に劣らぬ政治感覚を持つといわれる妹の与正・党第1副部長、もう一人は金正恩政権発足後の激しい側近粛清の嵐の中でも生き残り、昨年10月、権力を一手に握る党組織指導部のトップに抜擢(ばってき)された崔竜海氏だ。

 「まず平昌冬季五輪の開会式に与正氏を派遣して文政権が信頼できるかを確かめたはず。またこの重大局面で一緒に戦略を練ろうと思わなければ、もともと核開発路線に慎重だった崔氏が要職中の要職である組織指導部のトップに就任することはあり得ない」(同消息筋)という。

 3人が練った戦略とはどのようなものなのか。北の核問題をめぐる6カ国協議の韓国首席代表を務めた千英宇・元大統領府外交安保首席はこう指摘する。

 「完全非核化を口にしながら実際には米国との核軍縮交渉に持ち込み、制裁緩和や体制保証などを勝ち取って経済再建に集中するというのが北の大きな戦略」

 事実、北朝鮮は先月の党中央委員会総会で金委員長が「核武力の完全達成」を宣言しながら今後は「経済建設に総力を集中させる」と明言した。それには「米国との核取引が不可欠と判断した」(千氏)とみられる。

 だが、直接米国と交渉するには相互不信が深過ぎる。自分たちの立場、利害を代弁してくれる第三者が必要だ。それが南北首脳会談で融和ムードを演出した韓国・文在寅政権だったわけだ。

 11月の中間選挙などをにらみ成果が欲しいトランプ米大統領は米朝首脳会談の開催に前のめり気味だ。北が持ち掛けた博打(ばくち)のような「取引」に乗ってくるのはきめ細かな合理主義で理論武装した既存の政権ではなく、果敢な投資・投機で大成功を収め「不動産王」と呼ばれたトランプ氏くらいかもしれない。

 北朝鮮は核・ミサイル実験を中止し、実験場も立ち合いのもと廃棄。米本土に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の実戦配備を保留にし、既存の核も数発廃棄するかもしれない。これに対し米国が一部制裁を解除し、終戦宣言をした上で休戦協定を平和協定に転換させるための会談に応じれば「取引」完了だ。

 しかし、「核取引」は非核化の初期段階で行われ、トランプ氏が「取引」自体に満足してしまえば「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」への道のりは遠ざかる。

 「北朝鮮は米朝会談を経て休戦65年に当たる7月27日を目安に終戦宣言にこぎつけようとするかもしれない」

 韓国メディア関係者たちの間ではこんな臆測が飛び交っている。

(ソウル・上田勇実)

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