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ドイツ連邦議会選 首相候補の不祥事で泥沼化

ポスト・メルケル“手負い”の3氏に

 ドイツで26日、連邦議会(下院)選挙が実施される。複数の世論調査によると、社会民主党(SPD)がメルケル首相率いる第1党「キリスト教民主・社会同盟」(CDU/CSU)を抜いてトップを走り、第1党に復帰する可能性が高まっている。今年に入ってトップを走ってきた「緑の党」は第3党につけている。メルケル首相は選挙後、16年間の政権を終え、政界から引退する予定だ。ポスト・メルケルを占う連邦議会選の行方に欧州諸国が熱い視線を投げ掛けている。
(ウィーン小川 敏)

SPDのショルツ首相候補(AFP時事)

SPDのショルツ首相候補(AFP時事)

 「ドイツの政治は面白くない」とよく言われた。メルケル首相が長期政権を維持してきたことも理由だが、CDU/CSUの牙城を脅かすべきSPDが党内のゴタゴタもあって久しく停滞してきたからだ。そのドイツで「今回の連邦議会選は面白い」と言われだした。SPDが第1党になる可能性が出てきたのだ。

 今月に入り、メディアの関心はSPDが連邦議会選挙(下院)後、どの政党と連立を組むか、ないしは組むことができるかに集中してきた。

 先ず、「ビルト日曜版」(9月12日)の依頼で実施された世論調査機関「インサ」によると、SPD支持率は25%で前週比で1ポイント増でトップ、CDU/CSUは1ポイントを失い20%だ。SPDとCDU/CSUの差が5ポイントと大差がついている。一方、「緑の党」は1ポイント減で16%、右派政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が1ポイント増で12%、「自由民主党」(FDP)が13%のままで、「左翼党」は7%だ。

 明らかな点は、SPD一党では過半数からは程遠く、「どの政党」との連立が可能となるかがテーマとなる。メディアによると、SPDは「緑の党」と連立する可能性が高いという。SPDにとって、「緑の党」との連立で過半数を獲得できれば理想的だが、両党だけで過半数に達するのは容易ではない。そこでSPD、「緑の党」、そしてFDPの3党連立政権が考えられるわけだ。もちろん、立場は逆転するが、SPDとCDU/CSUの現連立政権の再現もあり得る。なお、SPDとCDU/CSU両党は「AfD」との連立は完全に排除している。

CDUのラシェット首

CDUのラシェット首相候補(AFP時事

 SPDのオーラフ・ショルツ党首相候補者(副首相兼財務相)は、「SPDは州レベルでも『緑の党』との連立は経験済みだ」と「緑の党」を未来の連立パートナーと見なしている。その一方、「SPDは左翼党とは連立しない」と明言している。ショルツ氏がわざわざ「左翼党との連立」を排除したのは、CDU/CSU側が「SPDは『緑の党』、そして左翼党の赤・赤・緑の連立を考えている」と指摘し、「ドイツで左翼連立政権が発足する可能性が出てきた」といった批判キャンペーンを展開してきたからだ。

 ドイツで過去16年余り、メルケル首相のCDU/CSU主導の連立政権が続いてきたこともあって、国民には新しい顔を願う声が強い。CDUの党首に就任したアルミン・ラシェット氏では新鮮味がないことは事実だ。

 それでも、CDU/CSUは次第に支持率を回復してきた。その流れが激変したのは、“あの出来事”を指摘する以外にないだろう。ラシェット氏は7月17日、シュタインマイヤー大統領と大洪水の被害に遭った被災地を訪ねたが、大統領が話している時、その後ろで現地視察の付き添い関係者と話しながら面白おかしく笑っている姿がカメラに撮られたのだ。他政党から「不謹慎だ」と糾弾され、謝罪に追い込まれる事態となった。

 同じことが「緑の党」のアナレーナ・ベーアボック共同党首にも言える。同氏は今年に入り世論調査ではトップを走り、ドイツで「緑の党」主導の政権が初めて生まれるのではないか、とメディアは騒いだ。しかし、同党首が公表してきた自身の学歴で問題があったとしてメディアで大きく叩(たた)かれ、支持率を急速に落とした。

緑の党のベーアボック

緑の党のベーアボック首相候補(AFP時事)

 一方、SPDのショルツ氏は選挙戦でウルトラ戦略を展開したわけではないが相手の失点という追い風を受け支持率をジリジリと上げてきて、ついに第1党に上り詰めようとしている。

 ただし、ショルツ氏にも暗雲が漂ってきている。CDU側は選挙戦終盤に入り、「ショルツ氏は罪のない羊ではない」として攻撃を始めてきた。独オスナブリュック検察当局は9日、首都ベルリンにある連邦財務省と連邦法務省で立ち入り捜査を実施したばかりだ。同時に、ショルツ財務相はマネーロンダリング関与の容疑とその責任問題を追及され、連邦議会財政委員会で説明を求められている。

 今回の選挙戦では、最初から最後まで党筆頭首相候補者の不祥事、スキャンダルが有権者の支持率に大きな影響を及ぼしてきた。ベーアボック党首、ラシェット党首、そして今ショルツ財務相だ。明確な点は、ポスト・メルケルは泥沼の選挙戦に参戦した3人の“手負いの候補者”の中から生まれてくることだ。

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