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ビオンテックCEO、質問に答える

 独週刊誌シュピーゲル最新号(9月11日号)は独バイオ医薬品企業ビオンテックの最高経営責任者(CEO)、ウグル・シャヒン博士とエズレム・テュレジ博士にインタビューしている。同誌は2021年新年号で同社創設者夫妻と会見したが、今回はその2弾目だ。ワクチン接種の有効性やブースターショット(免疫増強のための追加接種)の必要性などについて、世界で最初にコロナ・ワクチンを生産したビオンテック社の創設者であり、研究者である両博士に聞いている。

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独シュピーゲル9月11日号のビオンテック社CEO会見記事

 多くのコロナ・ワクチンが製造されているが、その中でもコロナ・ウイルスへの有効性が最も高く、世界で最も多く利用されているワクチンは米製薬大手ファイザーとビオンテックが共同開発したワクチン(BNT162b2)で、その有効性は95%前後といわれている。

 同ワクチンは具体的にはドイツのビオンテック社が開発し、世界的製薬大手ファイザー社がその大規模な生産工程を生かし、大量、安価に生産しているもの。ビオンテック社は製薬企業としては中堅クラスだったが、コロナ・ワクチン開発で一挙に世界大手製薬企業入りした。ビオンテック社の評価額は現在、700憶ユーロと推定されている。

 シャヒン博士とテュレジ博士は名前からも分かるように、トルコ系移民家庭出身だ。両博士は2002年に結婚。シャヒン博士は、「われわれは会社経営者というより、研究者だ」という。2人は本来、免疫療法を利用したガン治療研究の専門家だ。その夢は今も変わらず、「いつかはがんを免疫療法で治癒できるようにしたい」という。シャヒン博士は、「人間の体には病が侵入した場合、それを防御し体を守る成分を生み出すシステムが備わっている。それが免疫システムだ。コロナ・ワクチンもその免疫システムを利用している」という。

 ビオンテック社が開発したコロナ・ワクチンは「mRNAワクチン」(メッセンジャーRNA)と呼ばれ、遺伝子治療の最新技術を駆使し、筋肉注射を通じて細胞内で免疫のあるタンパク質を効率的に作り出す。ウイルスを利用せずにワクチンを作ることができることから、短期間で大量生産が出来るメリットがある。ビオンテック社のワクチンは最新医薬技術を切り拓いたといわれている。

 シャヒン博士はマインツ大学で実験腫瘍学を教え、夫人のテュレジ博士は欧州免疫療法学会(CIMT)の理事の1人として活躍するなど、会社、研究所、大学の間を飛び歩いている(「『ドイツの夢』実現した研究者夫妻」2021年1月10日参考)。以下は、シュピーゲル誌の両博士との会見の概要だ。

 ドイツではこれまでワクチン接種率は約60%だ。コロナ感染はもう終息したという声を聞く。

 テュレジ博士「終息の定義が問題だが、少なくともCovid-19はその怖さを失ったことは事実だ」

 シャヒン博士「ウイルスは今日、逃避メカニズムを発揮し、迅速に変異し、人間に容易に感染するようになってきている。だから世界はしばらくは何回かの感染の波に直面するかもしれないが、ワクチン接種者や回復者にとっては、もはや脅威とはならないはずだ」

 ワクチン接種が広がれば、今秋までに集団免疫が実現できるという希望があったが、実際はそうではない。われわれはコロナ・ウイルスを過小評価してきたのではないか。

 シャヒン博士「そうではない。ウイルスは今、ワクチンを接種していない人々の間で広がってきているのだ。これからは未接種者のパンデミックに直面するだろう」

 ビオンテック社は記録的な短時間で有効性のあるワクチンを製造した。そのワクチンを接種しない人々に怒りを感じるか。

 テュレジ博士「とんでもない。人は自分で決定すべきだ。科学者はワクチンを製造するだけで、それを接種するかは個々が決めることだ。ただしワクチンを接種しないことがどのような意味かを考えるべきだろう」

 ワクチン接種キャンペーンがあまり進んでいない。

 シャヒン博士「厳しい冬を迎えるまで60日間余りしかない。これからの2カ月間で可能な限り人々をワクチン接種に動員しなければならない」

 テュレジ博士「ワクチン接種者もそのために支援すべきだ」

 デルタ株のコロナ・ウイルスは予想以上に感染力がある。ビオンテックのワクチンもデルタ株の感染ではこれまで以上に多くの問題に直面している。

 テュレジ博士「幸い、デルタ株は感染力はあるが、免疫力を無効にするようなスーパー変異株ではない。デルタ株は効率的に感染してきているが、ワクチンはデルタ株から防御できる」

 どのように防御できるのか。様々な矛盾する報告や研究が明らかになっている。例えば、イスラエルからだ。

 テュレジ博士「感染から予防する力は時間の経過と共に減退するが、感染で重症化する危険性は少なく、免疫力は長く続く。T細胞と呼ばれるキラー細胞は、ウイルスに感染した細胞をウイルスごと排除する(T細胞は免疫細胞の中でも感染症の遷延や重篤化を防ぐ上で主要な役割を果たしている)」

 シャヒン博士「デルタ株は迅速にビリオンと呼ばれるウイルス粒子を生産するため、他のウイルス株より高い抗体レベルが必要となる。同時に、6カ月あまりでワクチン接種で生まれた抗体は減少していく。2回目の接種が3週間後行われた場合にはそれより早く有効性を失う。これはイスラエルからのデータが教えていることだ」

 「英国の研究によると、デルタ株でのワクチンの有効性は74%だという、だから予想より早い段階で第3回目(ブースターショット)の接種が必要となる。デルタ株前では2回のワクチン接種で12カ月から18カ月はその有効性が続くと考えてきた」

 ブースターショットは不可欠か。

 シャヒン博士「デルタ株ではブースターショットなくしては十分に予防できない。イスラエル保健省が公表したデータによれば、3回目の接種でデルタ株に対し95%以上の保護が出来ることが分かっている」

 テュレジ博士によると、5歳から11歳へのワクチン接種は間もなく認可されるという。そして今年末までには6カ月からの幼児へのデータが出てくる予定だという。

 10月中旬から5歳以上の子供への接種が行われるという。先進諸国で子供への接種を開始する前に、そのワクチンをこれまで接種できなかった開発途上国アフリカに支援すべきではないかという声がある。

 シャヒン博士「ワクチンの生産量はもはや問題ではない。2022年までには十分なワクチンが生産でき、世界中の人々が接種できるようになる。我々も生産量を急速に拡大してきた。今年中に30億回分が生産できる。来年は40憶から50億回分のワクチンができる。欧州だけでも来年、毎月5億回分のワクチンが生産できる予定だ」

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