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対中政策の見直し進むEU、G7で明らかに

独で強まる中国への不信感
米国と距離を置くフランス

 先進7カ国首脳会議(G7サミット)で対中包囲網構築を目指すバイデン米政権に対して、フランスやドイツは慎重な構えを見せた。欧州連合(EU)が推進する中国との投資協定、ドイツが理解を示す中国の経済圏構想「一帯一路」、インド太平洋地域での米中対立を警戒し、多国間主義を重視する仏独は、コロナ禍後の対中関係のこれ以上の悪化に警戒感を強めている。
(パリ・安倍雅信)

12日、英南西部コーンウォール地方セントアイブズで、談笑するバイデン米大統領(左から2人目)とメルケル独首相(右)(AFP時事)

12日、英南西部コーンウォール地方セントアイブズで、談笑するバイデン米大統領(左から2人目)とメルケル独首相(右)(AFP時事)

 フランスのマクロン大統領は英コーンウォールでのG7サミットの開催前日の10日、パリでの記者会見でインド太平洋戦略について「われわれは誰とも提携しない。米国と提携せず、中国の下僕にもならない」と述べ、EUは対中強硬姿勢を強める米国とは距離を置くことを強調した。

 一方、マクロン氏はバイデン米大統領との会談で、気候変動対策に関し、英北部グラスゴーで11月に開かれる国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で意欲的に成果を目指すことを確認した。

 マクロン氏は、米国離脱後もEUが協定を守り、中国も協力してきたことを指摘し、「中国はパートナーでもある。多国間主義の枠組みに取り込むことが大事だ」と訴えた。両者によるG7会期中の記者会見で、マクロン氏は「時代は変わり、私たちに必要なのは協力だ。米大統領はクラブの一員であり、われわれと協力する準備ができていることは素晴らしいことだ」と歓迎する考えを示した。

 バイデン氏は、マクロン氏の発言を受けて「私もそう信じる。米国は戻ってきた。われわれは北大西洋条約機構(NATO)内の結束を求めており、EUは非常に強力でダイナミックであり、それは可能だと思う」と述べ、トランプ前政権で冷え込んだNATOとの関係の強化を強調した。

 EUは3月、ウイグル族への人権侵害をめぐり、対中制裁で米国と歩調を合わせる明確なシグナルを示した。同時にEUの欧州委員会としては昨年12月に大枠合意した中国との投資協定の施行を急いでいる。ミシェルEU大統領は今月7日、EUと中国の投資協定は「よい方向に向けた一歩だ」と記者団に述べた。だが、欧州議会は中国への疑念の払拭が十分でないとして棚上げ状態だ。

 バイデン政権はトランプ前政権に続き、EUの中国への投資を推進する投資協定に懸念を表明している。前米政権が延期を要請した同協定を、無理やり大枠合意に持ち込むことを主導したのはEU議長国だったドイツのメルケル首相だった。中国との投資協定は首相在任16年間の対外経済政策の総仕上げでもあった。

 今回のG7サミットの巨額インフラ投資の背景には、経済発展の資金不足に苦しむアフリカなど途上国に対して、中国が高利の巨額融資を行い、返済不能な場合に相手国の資源やインフラを押さえる、「債務の罠」問題に対抗する意味がある。さらに中露が積極的に行う途上国へのワクチン外交にもG7は対抗して数億回分のワクチンの無償提供で合意した。

 メルケル首相は、途上国支援は「援助を必要としている国に資金を効率的に行き渡らせるという前向きな目的がある」と説明し、中国への対抗策と捉えていないという認識を示した。だが、長期にわたり対中外交を経済の柱としてきたメルケル首相の考えがドイツを代表しているともいえない。今年末の退任を視野にドイツの対中外交には変化もみられる。

 新疆ウイグルの宗教弾圧、香港への国家安全維持法導入による人権弾圧、途上国支援の債務の罠、そしてドイツ企業の高度な技術の盗用、さらには新型コロナウイルスの武漢起源説などでドイツ国内の中国への不信感は高まっている。ドイツ政府は世論の圧力にさらされており、独中関係が岐路に立っていると指摘する専門家は少なくない。

 今回対面で2年ぶりに開催されたG7サミットを控え、EU主要国首脳は米国が再び主導権を握り、米中戦争に巻き込まれることを強く警戒していた。だが、議長国、英国のジョンソン首相のリーダーシップで、コロナ禍からの復興で弱い国や弱者への救済重視を掲げた「より良い世界再建」のビジョンが、欧州首脳の警戒感を和らげた感がある。

 ただ、合意した内容の資金調達のプロセスで、今回表面化した米国とEUの温度差が、どのように影響するのか、その隙を狙って中国が分断を仕掛けてくる可能性も否定できない。

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