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フランス、過去4年間で7人の神父が自殺

 バチカン・ニュース(独語版)で27日、衝撃的なニュースが報じられていた。カトリック国のフランスで過去4年間で7人の神父が自殺したというのだ。同国司教会議が実施した「聖職者の健康調査」の結果だ。

104歳の最高齢司教が11月24日、亡くなった(バチカン・ニュースのHPから)

104歳の最高齢司教が11月24日、亡くなった(バチカン・ニュースのHPから)

 バーンアウト(燃え尽き症候群)、デプレッション(憂鬱)、肥満、孤独などがフランスの聖職者が頻繁に直面する課題となっているという。調査では93%の神父は肉体的、精神的に健康だと答えているが、聖職の過労とデプレッションが問題となると述べている。具体的には、2%の神父は自身がバーンアウトと感じ、約40%はアルコール中毒であることを認めている。神父の多くは孤立し、孤独に悩んでいる。インタビューを受けた神父の半分以上は一人暮らしだ。

 神父の肉体的、精神的健康度の調査は同国司教会議常設委員会が要請したもの。その目標は神父の心の状態を掌握し、神父の「生活の質」向上に役立つために予防措置を取ることにあるという。調査対象となった神父は105教区から75歳以下の約6300人。約42%はフランス人神父だ。

 フランス教会では神父の1日平均労働時間は9・4時間、約20%の神父は「仕事時間が長い」と感じている。神父の45%が自分は慢性疾患を抱えていると思っている。喫煙者は少ないが、43%は体重過多であり、20%は慢性疾患の危険が高い肥満という。約20%はデプレッションの兆候があり、7%は仕事で酷使に悩み、2%はバーンアウト状況だ。

 司教会議は神父の「生活の質」向上のために様々なアドバイスをしている。最も重要な点は孤独対策だ。一人住まいではなく、神父たちの共同生活などだ。また、悩む神父のために社会的健康と交流場所を提供するセンターの設置だ。

 いずれにしても、同国教会で過去4年間、7人の神父が自殺したという事実は重い。どのような経路から神父が自殺に追い込まれたか等の説明はない。聖職者にとって神が与えた生命を自ら断つことは罪と分かっていたはずだが、それを防ぐことができなかった。それだけ苦しみが深刻だったわけだ。

 神父だけではない。高位聖職者に入る司教にも精神的に悩む聖職者が増えてきている。米ローマ・カトリック教会リンカーン教区のジェームズ・コンリィ司教(64)がうつ病のため休職を申し出たというニュースが報じられていた。司教はうつ病になり、不安恐怖症の症状を呈し、数カ月前から不眠と耳鳴りが続く症状だという。同司教は教区関係者宛てに書簡を送り、「相談した結果、自分はうつ病の精神疾患に罹っていると判断し、治療を受けるべきだと考えた」と説明している(「米教会司教がうつ病で休職申し出」2019年12月16日参考)。

 フランス教会だけではない。世界の教会で悩んでいる聖職者が多数いる。小手先の対応ではなく、抜本的な改革が必要な時だろう。以下、当方の考えを少し書いてみたい。

 このコラム欄で何度も書いたが、最大の問題は「聖職者の独身制」だ。人は生来、一人で生きていくようにはなっていない。カトリック教会の独身制は「ドグマ」ではなく、「伝統」に過ぎないことはベネディクト16世も認めている。「聖職者の独身制」廃止が急務だ。

 バチカンで昨年10月、3週間、開催されたアマゾン公会議で既婚男性の聖職の道について話し合われた。公表された最終文書(30頁)では、「遠隔地やアマゾン地域のように聖職者不足で教会の儀式が実施できない教会では、司教たちが(相応しい)既婚男性の聖職叙階を認めることを提言する」と明記されている。ただし、同提言は聖職者の独身制廃止を目指すまでは踏み込んでいない。聖職者不足を解消するための現実的な対策の域を超えていない。

 キリスト教史を振り返ると、1651年のオスナブリュクの公会議の報告の中で、当時の多くの聖職者たちは特定の女性と内縁関係を結んでいたことが明らかになっている。カトリック教会の現行の独身制は1139年の第2ラテラン公会議に遡る。聖職者に子供が生まれれば、遺産相続問題が生じる。それを回避し、教会の財産を保護する経済的理由があったという。

 問題は、教会の独身制は聖職者の未成年者への性的虐待問題にもかかわると読み取れることだ。バチカン・ニュースは昨年12月、「バチカンは2001年以来、6000件の聖職者の性犯罪を調査してきた」と報じた。この数字は実際起きた聖職者の未成年者への性的虐待総数の氷山の一角に過ぎない。実数はその数倍と受け取られている。

 当方は、結婚と家庭を捨てて教会や修道院で神を求める信仰生活は本来の神の願いと一致しないと考えている。これからは家庭で神を迎えなければならない。出家して仏の道を模索したり、教会や修道院に入って神を探す時代は過ぎ去った。実際、若い修道僧・修道女の離脱が増えている。データは少し古いが、2001年から11年の過去10年間で79万2100人だった修道女数は71万3000人と約10%急減した。世界で毎年3000人の修道僧、修道女が離脱している(「修道院・出家時代は終わった」2013年11月5日参考)。

 もちろん、聖職者が家庭をもてば全てが解決するとは考えていない。家庭を築けばまた新しい問題が出てくるだろう。しかし、一人で悩むことはなくなるはずだ。フランスの司教会議の今回の調査結果は聖職者の独身制がもはや機能しないことをはっきりと示している。

 なお、バチカン・ニュースでは、104歳で11月24日亡くなったスペイン人の司教のニュースが報じられていた。その記事には1枚の写真が掲載されていた。当方は司教が如何なる道を歩んできたかは知らないが、写真の司教の後ろ姿から、強烈な孤独さを感じた。

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