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女性テロリスト「ルガーノ襲撃テロ」

 スイス南部ティチーノ州の都市ルガーノで24日午後2時頃(現地時間)、市内の大手百貨店マノール(Manor)で買物をしていた2人の女性がナイフで刺され、1人は重傷を負い、もう一人は軽傷という事件が起きた。ティチーノ州警察 Matteo Cocchi 長官によれば、「現場で逮捕された女性容疑者(28)はティチーノ州に住むスイス人で、イスラム教に改宗した後、イスラム過激派テロ組織『イスラム国』(IS)のシンパとなった。容疑者は2017年以来、治安関係者には知られていた」という。

ISのイスラム過激主義者たち(スイスのkatholisches.infoから)

ISのイスラム過激主義者たち(スイスのkatholisches.infoから

 容疑者が現場で「アラーは偉大なり」と叫んだという目撃者の証言がある。同国連邦検察当局は「事件はテロ」と断定し、連邦警察庁 (Fedpol)は 捜査を開始した。

 容疑者はマノールの5階ピザ店「ダンテ」近くにいた女性を手で首を抑え、2人目の女性をナイフで首を刺して負傷させた。容疑者は百貨店内にいた人に止められ、駆け付けた警察官に取り押さえられた。容疑者は同百貨店の家庭用品売場にあった調理用ナイフを奪って使用している。

 捜査当局によると、容疑者はSNS(ソーシャル・メディア)を通じてイスラム過激派戦士の男性と知り合い、彼に会うためにシリアに行く考えだったが、トルコで拘束され、スイスに強制送還されている。容疑者は精神的問題を抱えているとして治療を受けた。それ以降、特別な動きはなかった。それに対し、「容疑者はその後、急速に過激化していった。状況は非常に深刻だ 」という声が聞かれる(「デア・ターゲスシュピーゲル」電子版11月25日)。

 Fedpolのニコレッタ・デラ・ヴァレ長官(Nicoletta della Valle)は「ルガーノのテロ事件は驚かない。海外で一連のテロ攻撃が起きている。スイスもその意味で例外ではないだけだ」と述べている。

 スイスの連邦情報機関(NDB)は10月末に治安年次報告書を発表したが、「欧州ではISに扇動されたイスラム過激派によるテロが頻繁に起きる。スイスもイスラム過激派のターゲットになっても不思議ではないが、彼らの第一目標ではない」と記述している。スイス治安関係者は11月2日の「ウィーン銃撃テロ事件」以来、警戒態勢を強めてきた。

 音楽の都ウィ―ン市中心部で2日午後8時(現地時間)、北マケドニアとオーストリアの2重国籍を有する20歳のテロリストが通行人を4人射殺し、23人に重軽傷を負わせた銃撃テロ事件が発生した。ウィーンのテロリストはISのシンパであり、シリアに入国してISに合流しようとしたところトルコ当局に拘束され、オーストリアに強制送還。昨年4月、禁固1年10カ月の有罪判決を受けた(彼は刑務所内の非過激化更生措置を受け、イスラム過激主義から決別したと受け取られ、同年12月に早期釈放されている)(「ウィーン銃撃テロ事件は避けられた」2020年11月6日参考)。

 ロイター通信によると、オーストリアのクルツ首相はツイッターで、「ルガーノで起きたイスラムのテロリストの攻撃を強く非難する。われわれは欧州でのイスラムのテロに対して連帯で対応する」と表明している。

 中立国スイスは過去、イスラム過激派テロ事件とは余り関係がないように受け取られてきたが、国内には数百人がイスラム過激主義を信奉し、イラク、シリアなどの紛争地に行った者がいる。例えば、チューリッヒ市近郊ヴィンタートゥールの2人の男性は11月2日ウィーン市で起きた銃殺テロ事件の容疑者と今年7月に会っていた容疑で逮捕されている。

 スイス連邦検察当局は今年9月、スイス、ヴォー州のレマン湖畔のモルジュのケバブ店でポルトガル人(29)をナイフで殺害したテロ事件の容疑者として1人のスイス国籍を有するトルコ人を逮捕している。

 ちなみに、スイスで2009年11月29日、イスラム寺院のミナレット(塔)建設を禁止すべきかを問う国民投票が実施され、禁止に賛成57%、反対43%で可決された。その後、スイス南部のティチーノ州で2013年9月22日、ブルカや二カブなど体全体を隠す服の着用禁止の是非を問う住民投票が行われ、州国民の約65%が「公共の道路、広場で顔を隠してはならない。また、性別に基づいて他者に顔を隠すように強制してはならない」というブルカ着用禁止を支持するなど、スイスでは急速に外国人(他宗教)への排斥傾向が強まってきている。スイスの外国人率は約25%だ(「ミナレット建設禁止可決の影響」2009年12月1日参考)。

 IS専門家ヨハネス・ザール氏は、「シリアのカリファト(イスラム帝国)の夢はつぶれたが、ISシンパは欧州で戦いを続けている。彼らの主要目的は社会を分裂させることだ」と警告。その上で、「ISでは女性の役割が評価されてきたが、あくまでも男性を支援する立場だ。ルガーノのテロ事件のような女性テロリストは珍しい」という(スイス「katholisches.info」11月25日)。

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