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欧米のマスク争奪戦で高利得る中国

 中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルス(covid-19)が世界で100万人以上の感染者、5万人以上の死者を出す世界的大流行(パンデミック)となったことで、新型コロナウイルスの感染事実を隠蔽してきた中国共産党政権の国際社会での評価は急落し、「中共ウイルス」と呼ばれ出した。

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自家製マスク(2020年4月4日、撮影)

 しかし、世界の覇権を目論む習近平国家主席の中国共産党政権はここにきて“マスク外交”を推進し、国内の感染者の急増で品不足となった医療用マスクの確保に奔走する欧米諸国を相手に安価なマスクを大量生産し、高価で売りつけることでその存在感を強めてきた。

 中国共産党政権は100グラムの重さにもならないマスクを資本主義社会の「需要」と「供給」の原則を巧みに利用して高く売りつけることに成功している。価格だけではない、コロナ危機でマスクの政治的価値も付加され、マスク欲しさで欧米指導者は日頃拘ってきたメンツも捨て、中国企業から購入してきているのだ。

 ワイルドな資本主義社会で育ったトランプ大統領は、フランスやカナダが中国企業に注文したマスクまで高値で買い取っているとして、カナダのトルドー首相やフランス政府を激怒させている有様だ。欧米間の中国製マスク争奪戦だ。

 中国側としては笑いが止まらないだろう。自国がコロナ危機を発生させ、その対応で欧米諸国はカオスに陥り、感染防止用マスクを中国企業から大量に購入するために欧米諸国が喧嘩し出したからだ。世界のマスクの50%以上は中国で製造されている。

 イタリアでコロナウイルスの感染が拡大し、医薬品、人工呼吸器と共に医療用マスクが不足。そこでフランスやドイツへマスクの支援を緊急要請したが、難民問題では難民ウエルカム政策を実施したメルケル独政権やマクロン仏政権もマスクらの医療品の輸出は禁止したことはまだ記憶に新しい。

 スペイン、フランス、ドイツで新型肺炎感染が拡大し、欧州連合(EU)内でもコロナ危機に対する一致した対策が不可欠という声が高まり、独仏政府はマスクの輸出解禁を出したばかりだ。

 医療崩壊寸前のイタリアは独仏政権のマスク輸出禁止に失望し、最終的には中国から輸入している。コロナ危機が欧州の指導者の「自国ファースト」政策を生み出し、日ごろから叫んできた欧州の結束、連帯は困窮時には絵に書いた餅に過ぎないことが改めて浮き彫りになってしまった。

 ちなみに、中国はコロナ危機にあるイタリアに対して「大量のマスクを贈呈した」と報じたが、イタリア側は「わが国は中国が危機の時、医療支援をしてきた」と説明、中国側の一方的なマスク贈呈ではないと反論し、「贈呈ではなく、購入した」と述べている。

 ロイター通信によると、カナダ政府は3日、トランプ米政府が同日、米複合企業スリーエム(3M)の医療用マスク輸出を阻止していると批判している。トランプ大統領は「国防生産法」に基づき、コロナ危機の対策で必要な医療用マスク(N95)や防御服などの輸出を禁止する大統領令に署名している。

 コロナ危機が終息し、マスク争奪戦に加わった国の指導者が首脳会談などの機会で再会した時、彼らはどんな顔をして握手するのだろうか、と心配になってくる。

 世界最大の感染国となった米国は元々医療体制が脆弱で、貧富の格差だけではなく、医療の格差も大きいこともあって、「中共ウイルス」は短期間で全土に拡大し、多くの死者を出している。国民がマスクを購入しようとしても手に入らない。

 数百万枚のマスクが日に必要となるから、大量のマスクを確保することは大変だ。安価な医療品を中国企業に作らせてきた欧米諸国はコロナ危機では中国依存の代価を払わさせられているわけだ。

 日本では、安倍晋三政権が1日、国民に2枚の布マスクを与え、自家製マスクの製造を奨励しているというニュースが流れてきた。欧州では市場でマスクが購入できない国民は自宅でマスクを造りを始めているし、街の仕立て屋は洋服の代わりに布製マスクを製造し、オンラインを通じて売り出している。必要は発明の母だ。

 たかがマスク、されどマスクだ。これまで誰も見向きもしなかったマスクが欧米諸国で脚光を浴びだし、オーストリアのクルツ首相は先月30日の記者会見で、「マスクの着用は欧州社会の伝統ではないが、アジアではマスクを着用して、新型肺炎対策で一定の成果を挙げている」として、「アジアから学ぼう」と国民に呼びかけ、マスクで代表されるアジア文化への関心を呼び起こしているほどだ。

(ウィーン在住)

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