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イギリス総選挙へ、これ以上混迷を長引かせるな

 英下院は、前倒し総選挙の実施に向けて政府が提出した法案を賛成多数で可決した。これで総選挙が12月12日に行われる見通しとなった。

EUと新離脱案で合意

 選挙戦でジョンソン首相は、欧州連合(EU)と新たな離脱案で合意した実績をアピールし、信任を求める構え。選挙で勝利を収めて行き詰まりを打開し、来年1月末の期限までに必ず離脱を果たすと訴える見込みだ。

 新離脱案は、英国全体がEUの「関税同盟」に残留する従来の解決策を撤廃。北アイルランドのみが英国の関税体系下にありながら、実質的にEUのルールに従うというものだ。だが、下院は承認を見合わせる動議を賛成多数で可決した。

 EU離脱期限は10月末に迫っていた。ジョンソン氏は「合意なき離脱」も辞さない強硬派だが、野党発議で9月に成立したEU離脱延期法は10月19日までに離脱案が議会で可決されなかった場合、首相は離脱期限の延長をEUに求めると規定。このため、首相は法律に従って延期を要請せざるを得なかった。

 EUは英国の要請を受け、離脱期限を最長で来年1月31日まで延期することを決めた。経済、社会の混乱が危惧される合意なき離脱は回避されたが、延期は3度目だ。英国はこれ以上、離脱をめぐる混迷を長引かせるべきではない。

 選挙戦に向け、野党・労働党は離脱の是非を問う国民投票の実施をマニフェスト(政権公約)に掲げる方針。野党第3党の自由民主党もEU残留を主張しており、「離脱か残留か」が問われた2016年の国民投票時に似た対立の構図が予想される。

 もっとも労働党内には、EU残留派や新離脱案を支持するグループも存在するなど一枚岩ではない。コービン党首の指導力を疑問視する見方も出ており、世論調査ではジョンソン氏率いる与党・保守党が野党をリードしている。

 少数与党のジョンソン氏は政権基盤を強固にするため、9月以降に総選挙を3度提案したが、合意なき離脱の阻止を最優先に掲げる野党の反対でいずれも否決された。今回、総選挙が実現することになったのは、ジョンソン氏が新離脱案でEUと合意したことで野党の結束にほころびが生じたためだ。

 一方、残留派にとっては、有権者のEUに対する不満をどのように解消するかが大きな課題だと言えよう。16年の国民投票で離脱支持が小差ながら半数を上回った背景には、これ以上EUにとどまっても移民増加などのデメリットが大きいという有権者の判断があった。

 EUの東方拡大で新たに加わった東欧からは、英国への移住が急増した。このため、金融危機で景気が冷え込むと「加盟国市民は域内のどの国でも自由に働ける」というEUの原則は、英国民にとって欧州の不況を英国に「輸出」する仕組みに感じられるようになった。

有権者は冷静な見極めを

 ただ、EU残留によって英国が受ける経済的恩恵も大きいはずだ。

 有権者には、EU離脱の是非を冷静に見極めることが求められる。

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