■連載一覧
  • 米大統領選まで1年 トランプ政権の攻防
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  • 2016 世界はどう動く-識者に聞く
  • 戦後70年 識者は語る
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  • 2014/1/06
  • 香港憤激 一国二制度の危機
  • 香港・中国返還20年 「一国二制度」の前途
  • 台湾に吹いた蔡英文旋風
  • ルポ・政権交代の攻防 台湾総統選
  • 二極化する香港 識者インタビュー
  • 香港誌「前哨」編集長 劉達文氏に聞く
  • 「雨傘革命」下の香港 揺れる一国二制度の行方
  • 揺れる香港 各派リーダーに聞く
  • 香港の普選運動 親中派民間団体代表の見方
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  • 中国「一帯一路」最前線 バルカンに吹く風
  • 危機のアジア 識者に聞く
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  • 香港「自治」の行方 識者に聞く
  • 中華圏に浸透する同性婚
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  • 蔡英文時代の台湾 本土派路線のビジョンと課題
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  • 新閣僚に聞く
  • 懸案にどう挑む 第4次安倍改造内閣
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  • 憲法改正 私はこう考える
  • 衆院選大勝 安倍政権への提言
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  • 新閣僚に聞く
  • 第3次改造内閣 信頼回復へ始動
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  • 施行から70年 憲法改正を問う
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  • 新閣僚に聞く
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  • 安倍政権 新たな挑戦
  • 16参院選 注目区を行く
  • 伊勢志摩サミット
  • 憲法改正 ここが焦点
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  • 第3次安倍改造内閣スタート
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  • 第2次安倍改造内閣スタート
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  • 歪められた沖縄戦史 慶良間諸島「集団自決」の真実
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  • 国防最前線・南西諸島はいま 第1部 与那国島・陸自駐屯地
  • 激震・翁長県政 「オール沖縄」の凋落
  • 普天間基地移設 経緯の検証と提言
  • 「援護法」に隠された沖縄戦の真実
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  • どう見る金正恩体制 日韓専門家対談
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  • 米中新冷戦 第1部「幻想」から覚めた米国
  • 検証’18米中間選挙
  • 米国の分断 第3部 「自虐主義」の源流
  • 米国の分断 第2部 反米・容共の風潮
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  • トランプ大統領の衝撃 米国と世界はどこに向かう
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    安東 幹
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    坂東 忠信
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    古川 光輝
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    細川 珠生
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    井上 政典
    井上 政典
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    伊勢 雅臣
    「国際派日本人養成講座」編集長
    河添 恵子
    河添 恵子
    ノンフィクション作家
    宮本 惇夫
    宮本 惇夫
    企業・経営
    中村 仁
    中村 仁
    元全国紙経済記者
    石平
    石平
    評論家

    極右過激派に漂う焦燥と「終末感」

     旧東独ザクセン=アンハルト州のハレ(Halle)で9日正午ごろ、27歳のドイツ人、シュテファン・Bが機関銃や爆弾で武装し、ユダヤ教のシナゴーク(会堂)を襲撃したが、シナゴークの戸を壊すことが出来ず、会堂内に侵入できなかったために、シナゴーク内の銃乱射事件は未然に防げた。ただし、犯行計画を遂行できなかったBは怒りから路上を歩いていた女性とインビス店で食事中の男性を殺害した。

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    ハレのシナゴークを訪ねたゼーホーファー独内相(2019年10月10日、独連邦内務省公式サイトから)

     ハレのシナゴーク襲撃事件は、今年3月15日、ニュージランド(NZ)のクライストチャーチで発生したイスラム教寺院襲撃事件を想起させる。NZの事件では犯人ブレントン・タラントは半自動小銃などで金曜礼拝中のイスラム教徒に向かって乱射し、50人のイスラム教徒を殺害し、多数に重軽傷を負わせた。

     NZ事件とハレの事件には酷似している点が多い。①NZ事件ではイスラム教徒にとって1週間で最も大切な「金曜礼拝」中だった。ハレのシナゴークではユダヤ人の最も重要な祝日「贖罪の日」が行われ、70人以上のユダヤ人が集まっていた(両者とも宗教的行事が行われていた時)、②前者の犯人は28歳で白人主義者。ハレの容疑者は27歳で反ユダヤ主義者、③両者とも自身の犯行をビデオで録音し、マニフェストを表明、④合法的に武器を入手している。

     もう一点、看過できない共通点がある。両者とも「今、何かしなければ大変だ」といった焦燥感と強迫感にとらわれていたことだ。ハレの事件を中継していたドイツ民間放送で1人の犯罪専門家が「彼らは一種の終末感に動かされている」と指摘していた。

     ハレのB容疑者は「最も悪いのはユダヤ人だ」と口走り、ユダヤ人の抹殺を画策。NZの犯人は「このままではイスラム教徒に世界を牛耳られる」といった強迫感があった。NZのタラントはフランスの作家ルノー・カミュの著書「大置換」の影響を受け、オスマン・トルコの北上に抵抗したキリスト教圏の英雄たちに強い関心をもち、2、3の騎士たちの名前をクライストチャーチの銃乱射事件で使用した半自動小銃に書き込んでいたほどだ(「NZ銃乱射容疑者が欧州極右に寄付」2019年3月28日参考)。

     米国テキサスで起きた銃乱射事件の犯人も同様だった。米南部テキサス州エルパソのショッピングモールで今年8月4日未明、21歳の白人、パトリック・クルシウス容疑者が半自動小銃を乱射し、20人が死亡、26人が負傷した。クルシウス容疑者は、犯行直前にヒスパニック系移民への憎悪を記した声明をインターネットに出し、「1人でも多くのヒスパニックを殺したい」と叫んでいた。

     彼らは「このままでは我々は追放されてしまう」という思いが深まり、自宅にあった武器を取り出し、自国に侵入してきた異邦人の殺害に乗り出したというわけだ。他の仲間やグループと緩やかなつながりはあったが、3者とも犯行は基本的には単独犯だった(「文在寅、米独の憎悪犯罪から学べ」2019年8月6日参考)。

     NZとテキサス、ハレの銃乱射事件の前には、アンネシュ・ブレイビクが2011年7月22日、ノルウェーの首都オスロの政府庁舎前の爆弾テロと郊外のウトヤ島の銃乱射事件で計77人を殺害した。当時32歳の容疑者の大量殺人事件はノルウェーばかりか、欧州の政界に大きな波紋を投じた。ブレイビクは犯行前、1516頁に及ぶ「欧州の独立宣言」マニフェストを公表し、欧州のキリスト教社会をイスラム教の北上から守る十字軍の騎士を気取っていた(「オスロの容疑者の『思考世界』」2011年7月26日参考)。http://blog.livedoor.jp/wien2006/archives/51878219.html

     ブレイビク、タラント、クルシウス、そしてシュテファン・Bはいずれも焦燥感に悩まされ、「今何かしなければならない」という強迫感から犯行に及んだが、「焦燥感」と「犯行」を結び付けたのが彼らが感じていた「終末感」だったのではないか。

     それでは、彼らを動かした「終末」とは本来何を意味するのか。「終末」といえば、新約聖書「ヨハネの黙示論」を読むと、人類を審判する日の到来、天地異変が起き、人類が滅ぶといったイメージ(アポカリプス)が直ぐに浮かんでくるが、「終末」は、悪が支配する世界が終わり、神が統治する時の到来を意味する。善と悪の交差する時だ。その意味で、「終末」は人類の終わりではなく、再出発の時を迎える、という“善き知らせ”を意味する。

     旧約聖書「創世記」で神はノアの時代、悪魔に支配された人類を大洪水で滅ぼして、ノアの家庭を中心に再創造する話が記述されている。その後、神は「私は2度と人類を滅ぼさない」と約束され、その印として虹を見せている。

     オスロ、NZ、米テキサス、そしてハレの犯行には外的には「拡大する異教徒の侵入からキリスト教徒を守る」といった宗教的な思いが込められ、本人たちもそれに言及しているが、彼らの「終末」には神も悪も大きな役割を演じず、現状を打開できない閉塞感を外的な暴力で破壊行為を繰り返すだけに終わった。彼らは自身の内から突き上げてくる閉塞感に抗することができなかっただけだ。

     彼らは結局、“似非終末”に操られただけではなかったか。ハレのシナゴークを襲撃したシュテファン・Bは会堂の戸を破壊できずに、当初の計画を遂行できないと分かると、「自分は敗北者だ」(Ich bin ein Loser)と叫んだという。

    (ウィーン在住)

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