■連載一覧
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  • 香港憤激 一国二制度の危機
  • 香港・中国返還20年 「一国二制度」の前途
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  • 二極化する香港 識者インタビュー
  • 香港誌「前哨」編集長 劉達文氏に聞く
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  • 揺れる香港 各派リーダーに聞く
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  • 憲法改正 ここが焦点
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    古川 光輝
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    細川 珠生
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    井上 政典
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    伊勢 雅臣
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    河添 恵子
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    宮本 惇夫
    企業・経営
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    中村 仁
    元全国紙経済記者
    石平
    石平
    評論家

    クルツ「国民党」の政権カムバック

     オーストリアで29日、国民議会(定数183)の早期総選挙の投開票が行われた。暫定投票結果(有権者約640万人)によると、クルツ前首相が率いる中道保守派「国民党」が約37・2%の得票率を獲得し、前回選挙(2017年)比で約5・1%増で第一党を堅持し、政権カムバックを確実とした。一方、国民党と連立政権を組んできた極右政党「自由党」は前党首のスキャンダルなどの影響もあって、約16%(前回比10%減)と大幅に得票率を落とした。

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    勝利宣言をするクルツ国民党党首(2019年9月29日、オーストリア国営放送の中継から)

     「社会民主党」は約21・7%で前回比で5・1減と党の低迷にストップをかけることができなかった。一方、地球温暖化問題など世界的な環境保護運動の風を受け、「緑の党」は約14%で前回選挙で失った議席を勝ち取った。リベラル派政党「ネオス」は7・8%、「緑の党」から分裂して結成された「イエッツ」は約1・8%と議席獲得に必要な得票率4%の壁をクリアできなかった。投票率は約75・4%。

     国民党と自由党の2党から成る連立政権は2017年12月、発足したが、自由党のシュトラーヒェ前党首がスペインの避暑地イビザ島でロシアの富豪と会見、党献金を要求、その引き換えに公共事業の受注を斡旋し、オーストリア最大日刊紙の買収などを持ち掛け、その会談内容が今年5月、ドイツのメディアでリークされ、引責を取ってシュトラーヒェ党首は副首相と党首のポストを辞任。その直後、国民党と自由党の右派連立政権は3年以上の任期を残して解消され、早期総選挙の実施となった経緯がある。

     「国民党」はクルツ党首の国民的人気を背景に余裕ある戦いを展開させてきたが、選挙戦に入って富豪からの党献金の実態がメディアに暴露され、党本部へのサイバー攻撃を受けるなど、クルツ政権の再現を阻止する勢力からの激しい攻撃にさらされてきた。国民党の支持率低下を報じるメディアも聞かれたが、クルツ前首相の国民的人気は依然、パワーを発揮したわけだ(「政権交代時の機密情報の処理問題」2019年8月2日参考)。

     自由党の場合、事態は深刻だった。シュトラーヒェ前党首はイビザ島スキャンダルばかりか、党資金の不正使用など背任容疑で検察当局から起訴されるなど、自由党は投票日前までゴタゴタの状況が続いた。「反難民、外国人排斥」をアピールし、選挙の度に飛躍してきた自由党は前党首の“オウンゴール”で支持者を失ったわけだ。自由党は10月1日、党幹部会を開催し、選挙結果の分析と共に、シュトラーヒェ前党首の党籍はく奪問題も協議するものとみられている。

     一方、社民党は、不法難民の流入は治まり、有権者の関心も年金・高齢者対策、家賃問題など社会関連問題と環境問題に集まってきたことを受け、医者出身のパメラ・レンディ=ワーグナー党首は党員を動員して打倒クルツで総力戦を展開させてきたが、社民党の低迷を止めることはできなかった。

     クルツ前首相は、「国民の信任を受けたことを感謝する」と勝利宣言し、「安定政権の樹立を目指して連立交渉を早急に開始したい」と述べた。選挙結果を受けクルツ前首相を中心とした連立政権工作が開始される。議会の過半数を占める安定政権を発足させる道は3通り、考えられる。①国民党と自由党の連立政権のやり直し、②国民党と社民党の2大連立政権の再現、③国民党と「緑の党」の連立。

     国民党は自由党に対して、①キッケル前内相を拒否、②極右団体「イデンティテーレ運動」の解体の2点を連立政権の条件として提示。自由党は拒否しているため連立のやり直しは現時点では難しい。クルツ前首相は政策の相違が大きい社民党との連立には消極的だ。数的に安定政権は国民党と「緑の党」、そして「ネオス」(ベアテ・マインル=ライジンガ―党首)の3党の連立政権も可能だ。国民党には連立が難しい場合、少数政権を発足させるべきだという声も聞かれる。いずれにしても、クルツ前首相の連立交渉は難航が予想されるわけだ。

    (ウィーン在住)

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