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    古川 光輝
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    井上 政典
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    伊勢 雅臣
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    河添 恵子
    河添 恵子
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    宮本 惇夫
    企業・経営
    中村 仁
    中村 仁
    元全国紙経済記者
    石平
    石平
    評論家

    フォンデアライエン候補は大丈夫か

     どの国、組織、機関でもトップ人事は容易ではない。欧州議会選(5月23日~26日)の結果を受け、欧州連合(EU)の28カ国の首脳会談がブリュッセルで開催され、EU機関のトップ人事で一応、合意が達成されたが、かなりの難産だった。48時間に及ぶマラソン協議の末、ユンケル欧州委員会委員長の後任にドイツのメルケル首相の愛弟子、フォンデアライエン独国防相(60)を選んだ。

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    次期欧州委員長に担ぎ出されたフォンデアライエン氏(フォンデアライエン氏の公式サイト)

     それでハッピーエンドではない。今月16日、欧州議会の承認が求められる。欧州議会(定数751、現在748)で過半数の支持が得られない場合、首脳会談の人事決定は振出しに戻る。フォンデアライエン氏は欧州議会の第一会派「欧州人民党」(EPP)の182議員の支持は間違いないが、それでは過半数の375票まで程遠い。第2会派の「社会民主進歩同盟」(S&D)の154票は期待できない。例えば、ドイツの社会民主党(SPD)所属の欧州議員は既に反対を表明している。第3勢力のリベラル会派(108票)からは支持が期待できるが、「緑の党」会派74票、41票の左翼会派は反対、といった具合だ。それらの支持票を合計して193票を得られない場合、首脳会談で合意したフォンデアライン国防相の欧州委員就任は夢に終わってしまう。

     欧州委員長の有力候補者として独「キリスト教社会同盟」(CSU)出身のヴェーバー氏の名前が早々と飛び出していたが、フランスのマクロン大統領が「行政経験がない」という理由で強く反対。中道左派のティメルマン欧州委員会第1副委員長(オランダ)の名前も挙がっていたが、ハンガリーやポーランドが強く反対。最終的にはドイツのメルケル首相が擁立したフォンデアライエン国防相が急浮上したわけだ。

     マクロン大統領はフォンデアライエン独国防相の委員長候補案を受け入れる代わりに、欧州連邦大統領にベルギーのミシェル首相を、欧州中央銀行(ECB)総裁に国際通貨基金(IMF)のクリスティ―ネ・レガルデ専務理事を推薦し、受理させている。そして外交安全保障上級代表にはスペインのボレル外相が選ばれた。なお、欧州議会は2日、「社会民主進歩同盟」会派に所属するイタリアのサッソリ議員を新議長に選出した。

     加盟国28カ国の首脳会談はEUのトップ・ポジションに2人の女性を選出し、欧州の刷新を内外にアピールしたが、EUの結束を誇示したというより、英国のブレグジッド後のEUの未来を彷彿させる混乱ぶりも見せた。

     欧州議会選の28カ国の平均投票率は51%と前回比で8ポイント上昇し、EU国民の欧州議会選への関心が高かった。それ自体は朗報だが、EU議会をこれまで牛耳ってきた2大会派「欧州人民党」と「社会民主進歩同盟」は議会の過半数を失った。同時に、反EU、反難民政策を標榜する民族主義的、極右派政党が議席を伸ばしたことで、欧州議会の運営が今後、益々複雑となっていくことが予想される。

     ちなみに、ブリュッセルの政治にEU国民の関心が高まったことはプラスだが、同時に、加盟国内の路線対立が先鋭化し、EUでの主要政策に対するプロ・コントラがこれまで以上に強まってきた結果、欧州議会選の投票場に足を運ぶ国民が増え、投票率を引き上げたと分析できるわけだ。

     EUは英国の離脱(ブレグジット)が控えている。EU離脱は英国経済に大きな影響を与えることは必至だが、それ以上に、英国を失ったEUの未来に大きな影を投じている。

     マクロン仏大統領は1日、EUが意思決定のスピードを高め、信頼性を回復するまで、EUの新規拡大を認めない意向を明らかにしている。換言すれば、現在のEUには新規加盟を迎え入れる余裕がないというわけだ。EU加盟を目指してきた西バルカン諸国にとって、マクロン大統領の発言は大きな衝撃だ。近い将来のEU加盟が難しくなることで、政情が不安定となり、バルカンに再び民族紛争を勃発させる危険性も排除できなくなってきた。(「EU『離脱』と『加盟』どちらも大変」2019年6月26日参考)。

     移民・難民対策から経済政策までEUの共同政策、路線を支持するというより、自国の国内政治を優先する傾向が加盟国内で高まってきた。例えば、今回の首脳会談の人事問題でも明らかになったように、東欧のEU加盟国でヴィシェグラード・グループ(地域協力機構)と呼ばれるポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリーの4カ国ではその傾向が強まってきている。

     それだけではない。トランプ米政権との関係も難問だ。EUと米国の間には貿易問題から安全保障政策まで利害の対立が表面化してきた。連携と結束が当然だった時代は過ぎ去った。外交面でも対中国、対ロシアで加盟国間に相違が出てきている。その懸念は対中国政策で現実化している。ハンガリーやギリシャなど親中国派の加盟国は中国のEU市場進出を歓迎している。EUの共通外交安保政策は現時点では“絵に描いた餅”に過ぎない。

    (ウィーン在住)

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