■連載一覧
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  • 国防最前線・南西諸島はいま 第1部 与那国島・陸自駐屯地
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    坂東 忠信
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    古川 光輝
    古川 光輝
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    細川 珠生
    政治評論家
    井上 政典
    井上 政典
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    伊勢 雅臣
    伊勢 雅臣
    「国際派日本人養成講座」編集長
    河添 恵子
    河添 恵子
    ノンフィクション作家
    宮本 惇夫
    宮本 惇夫
    企業・経営
    中村 仁
    中村 仁
    元全国紙経済記者
    石平
    石平
    評論家

    政治の世界は一寸先は闇だ

     知人が12日間の旅行から帰国してウィーンに戻ってきた。彼は知らなかったのだ。「何を」というとオーストリアのクルツ連立政権が崩壊したことをだ。東京に出発した日まではクルツ政権が倒れるなどと考えた国民もウィーン在住の外国人もいなかったはずだ。クルツ首相とシュトラーヒェ副首相が記者会見で、「わが国で初めての本格的な税改革」と誇りながら発表した時の記者会見を思い出すならば、当然だろう。中道右派の国民党と極右政党自由党の連立政権は政権発足以来、小さな不祥事はあったが、先ずは合格点がとれるものだったからだ。

    800

    バン・デア・ベレン大統領と記者会見に臨むクルツ首相、オーストリア連邦大統領府で、2019年5月21日(オーストリア連邦首相府公式サイトから)

     それが17日午後6時(現地時間)を期して激変した。自由党党首のシュトラーヒェ副首相が2017年7月、イビザ島で自称ロシア新興財閥(オリガルヒ)の姪という女性と会合し、そこで党献金と引き換えに公共事業の受注を与えると約束する一方、オーストリア最大日刊紙クローネンの買収を持ち掛け、国内世論の操作を持ち掛けるなど「ウォッカの影響」もあって暴言を連発し、その現場を7台のミニカメラが撮影していたのだ。それを独週刊誌シュピーゲルと南ドイツ新聞が17日午後6時、報じたことから、オーストリア政界に激震が走ったわけだ。

     知人にイビザ島事件の経緯をかいつまんで説明すると、彼は青天の霹靂といったような表情をして当方を見つめた。知人は8日午後、羽田に向かい、20日の直行便でウイーンに戻ってきた。その不在12日間でオーストリアの政界は変わったからだ。

     簡単に「その後」の流れをまとめる。国民党と自由党のクルツ連立政権は18日に解消し、9月に前倒しの国民議会選挙が実施されることになった。クルツ政権は発足1年5カ月で終止符を打つことになった。シュトラーヒェ副首相は党首と副首相を辞任し、21日にはキックル内相が罷免されたのを皮切りに、自由党閣僚全員が辞任に追い込まれた(自由党推薦のクナイスル外相は留任意向)。バン・デア・ベレン大統領は同日、クルツ首相に9月の選挙までの選挙準備暫定政権の組閣を要請。それを受け、クルツ首相は自由党閣僚の後継者に専門家を選出し、暫定政権の閣僚リストを提出する。

     そして27日、国民議会で緊急会議が開催され、クルツ暫定政権の信任を問う。現地のメディアによれば、野党ではリベラルな政党「ネオス」が反対しているだけで、最大野党の社会民主党、イエッツトは不信任案を支持する可能性が高い。野党となった自由党が不信任案を支持すれば、議会の過半数を獲得し、クルツ暫定政権は辞任に追い込まれる。そうなれば、新たな政権を組む必要が出てくる。

     社民党はクルツ首相を辞任に追い込む方が選挙戦に有利と判断するだろうし、自由党もキックル内相が辞任すれば、連立政権を維持するという約束を反故にしたクルツ首相への反感が強いため、両党とも不信任案を支持する可能性が現時点では高い。

     上記のシナリオで不確定な要因は26日に実施される欧州議会選の結果だ。クルツ首相が率いる国民党が1党で勝利するか、社民党が巻き返すかで27日のクルツ暫定政権への不信任案の行方も変わる。イビザ島事件の引責で政権を追われた自由党がどれだけ得票率を失うかも注目される。

     クルツ首相の国民党が欧州議会選で勝利するようなことがあれば、27日の議会で不信任案が社民党と自由党の支持で採択される可能性が一層出てくる。クルツ首相は首相ポストを維持しながら選挙戦に入れば、現役ボーナスで有権者にアピールする機会が増える。換言すれば、メディアに出る機会が多くなる。それを避けるために、社民党と自由党の2大野党は不信任案支持に回ることが予想されるわけだ。

     当方は上記のようなコラムを書くとは考えてもいなかった。文字通り、政治の世界は一寸先は闇だ。30歳で政権を掌握したクルツ首相は欧州政界の人気者だ。そのクルツ首相が今、そのポストを失う危機に瀕している。20日にはオーストリア人でF1レーサーの元王者で実業家だった二キ・ラウダ―氏が(70)が亡くなったというニュースが流れた。国民はスポーツ界の英雄を失い、政界の若きホープも想像だにしなかった困難に直面している。17日以後、アルプスの小国オーストリアの国の運勢が大きく揺れ出したのだ。

    (ウィーン在住)

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